【Uplinq 2010 Conference】
MediaFLOの現状と今後、音楽や電子書籍の配信にも期待


「PTV」を手にした米クアルコム、Business DevelopmentのDirector、Ali Zamiri氏

 米クアルコムのプライベートイベント「Uplinq 2010 Conference」が6月30日と7月1日(米国時間)の2日間にわたって開催される。カンファレンス前日の6月29日、米クアルコム、Business DevelopmentのDirector、Ali Zamiri氏が、MediaFLOの現状と今後の見通しについて、日本の報道関係者向けに説明を行った。

 同氏は直近の話題として、「FLO TVではサッカーのワールドカップ64試合、全試合を中継しているが、実際、ワールドカップが始まってから視聴がかなり増えた。MediaFLOの1日の視聴時間は通常30分程度で、これは米国においては音声通話の時間とほぼ同等の数字。これがワールドカップの期間中は1日の視聴時間が2時間程度になっている」と紹介。「今まで我々が主張してきた通り、ライブのスポーツイベントやライブで何か重大なニュースが起きた時というのは、モバイル環境での視聴が増えるということが証明されていると思う」と述べた。

 米国でのMediaFLOは2007年にVerizonでスタート、その後AT&Tでも同様に提供され、最近では携帯電話事業者を経由せず、ユーザーに直接提供する「PTV」のような製品も登場している。同氏は「今後、さまざまなデバイスでサービスを提供していくことになる。iPhone向けには、外付けのバッテリーとMediaFLOの受信機が一体になったものが今夏登場する予定。日本で行ったiPadでのデモに対する反響も非常に大きい」と語る。さらに、「MediaFLOは、音楽や電子書籍のような大容量コンテンツを一度に多くのユーザーに配信するという仕組みとして有効」として、テレビの形にこだわらないMediaFLOの汎用性の高さを訴えた。

 とはいえ、当初よりMediaFLOの構想に入っていた「クリップキャスト」は、未だに商用化されていない。これについて同氏は、「技術的な問題ではなく、米国におけるビジネス構造上の問題で、MediaFLOは通信事業者がどんなサービスを提供するかと決めており、今まで通信事業者がその道を選ばなかったため」と事情を説明する。クリップキャストは、今年後半に米国で商用化される見通しだという。

 また、総務省が6月25日に開催した「携帯端末向けマルチメディア放送」に関する公開説明会では、ISDB-Tmm方式を採用するマルチメディア放送と、MediaFLO方式を採用するメディアフロージャパン企画の2社が火花を散らせた。

 これについて同氏は、「公開説明会の中では、両社の送信局数が大きく異なるということが明らかになった。モバイルユーザーは屋内での利用も重要と考えており、これをきちんとサポートしていくことが大切。有料のサービスである限り、どこでもきちんと視聴できることが当たり前。米国での経験上、これは非常に重要で、日本においては865局(マルチメディア放送側は125局)の送信局が必要と判断した。MediaFLOでは、屋内での視聴も想定しており、壁を2枚超える設計になっている」と語った。

 さらに同氏は、「ISDB-TとISDB-Tmmは全く異なる技術。ISDB-Tを前提にISDB-Tmmを議論することは間違っている。総務省に対しては、選定プロセスが技術中立的で、公平で透明性が確保されることを望んでいる」とコメントした。

 なお、同社では、「FLO Developer Challenge」と称し、Brew MPおよびAndroid上で動作するMediaFLOのデータキャスティング機能を活用したアプリケーションの開発コンテストを実施する。1等賞金は2万ドル。7月1日から募集を開始し、7月末に1次締切、10月には最終選考というスケジュールとなっている。



(湯野 康隆)

2010/7/1/ 00:41