本日の一品
アプリやリモコンが新しくなった「Apple TV」
(2015/12/1 06:00)
Apple TVはテレビで各種コンテンツを楽しむという、いわゆるセットトップボックス(STB)のような製品だ。名前の通りアップル製で、iPhoneやMac、iTunesなど、ほかのアップル製品やサービスと相性が良いという特徴を持っている。10月末に第4世代となる新モデルが発売された。
新モデルの最大の目玉は、App Storeからアプリをダウンロードして追加できるようになったことだ。ただし、iPhone/iPad向けアプリがそのまま使えるというわけではなく、Apple TV向けアプリのみが使える。発売直後の執筆時点では、配信アプリの数はまだまだ少ない。
たとえば動画配信サービスであれば、YouTubeやNetflixなど国外の大手だけでなく、国内ではバンダイチャンネルなどがApple TVに対応したアプリを提供している。しかしHuluやdアニメストア、ニコニコ動画などのアプリはまだ登場していない。ゲームアプリでは、大手としてはゲームロフトのレースゲーム「アスファルト8」などがあり、個人製作ゲームも登場しているが、やはりまだまだ数が少ない。
ちなみにアプリによっては、iPhone/iPadで購入したものはApple TVでも「購入済み」扱いになる。筆者は「BADLAND」というゲームアプリをiPhone/iPadで購入していたため、Apple TVでは無料でダウンロードできた(本来は有料)。ただし、iPhoneとiPadでアプリを別売りしているケースもあるので、iPhoneで買ったからといってApple TVでも購入済み扱いになるとは限らないはずだ。
ブラウザやメール、カレンダー、マップなど、スマホでお馴染みのアプリは、Apple TVには搭載されておらず、FacebookやTwitterといったSNS系アプリも配信されていない。そうしたパーソナルなアプリはApple TVではなくスマホで使え、ということなのだろう。
App Storeではヤフオクなど一部ショッピング系アプリが配信されていたりするので、買い物はApple TVでできるようだ。しかしパスコードロックなどはないので、家族で共有しているときは、不用意にアカウントを登録しない使い方が良いかも知れない。
なお前モデル同様、iPhone/iPad/Macの画面をApple TVでテレビに映す「AirPlay」に対応しているので、Apple TVで配信されていないアプリもテレビで楽しめる。Macの場合、拡張デスクトップ画面としても使える。
付属の標準リモコンは「Siri Remote」という名の新型に変更されている。Siri RemoteはApple TVとBluetoothで接続し、本体上部のタッチパッドでいろいろな操作ができるようになっている。
このSiri Remoteのタッチパッド、操作感がなかなか良い。筆者は普段からMacのタッチパッドを使っていて、アップルのチューニングに慣れているせいもあるが、すぐに慣れてサクサク操作できるようになった。
Apple TVのプロセッサ「Apple A8」は、iPhone 6/6 Plusに搭載されているもの。いわば1世代前のものだが、シングルタスク中心のApple TVでは性能十分なようで、メニュー操作時に素早く指を動かしても、動作レスポンスにもたつきは感じられない。ゲームもPS2というよりPS3レベルだ。
Siri Remoteには加速度センサーとジャイロセンサーが内蔵されていて、傾きを検知することができる。たとえばゲームロフトのレースゲーム「アスファルト8」はリモコンを傾けてハンドル操作するのだが、そこそこの反応速度で快適なゲームプレイが可能だ。
ゲームコントローラーとして、Made for iPhone(MFi)認証を受けたサードパーティーの製品も利用できる。筆者が所有しているSteel Series製「STRATUS」は、とくにApple TV対応は謳われていないが、Apple TVに接続してメニュー操作やゲーム操作に利用できた。
ただし、現状配信されているゲームは、Siri Remoteでのプレイを前提としてデザインされた、比較的シンプルな内容のものがほとんどなので、ゲームコントローラーを使ってもゲーム体験は大きく変わらない。また、STRATUSは原因不明の操作ラグがあって、むしろSiri Remoteの方が快適という場面も多かった。
Siri Remoteの操作感はおおむね良好なのだが、文字入力だけはどうしようもなく使いづらく感じられた。コミュニケーション系のアプリはないので、文字入力はパスワード入力や検索時などに限られるが、パスワードを家人に見られやすいテレビ上で入力するのは良くないし、検索はいろいろなアプリで使う機会がある。このあたりはアップデートでの改善を期待したいところだ。
また、Siri Remoteはマイクを内蔵していて、その名の通り、iOSデバイスでお馴染みの音声エージェント機能「Siri」を使うことができる。といってもApple TV自体はブラウザもメッセージもカレンダーもないので、できることは非常に限られている。情報検索も天気予報や株価くらいで、「メガロドンの写真が見たいんだ!」と訴えてもiPhoneやiPadのようにWebを検索してくれない。ここも今後の強化を期待したいポイントだ。
Apple TVはほかのアップルの製品やサービスとの相性が抜群に良く、iPhoneやMac、iTunesをメインに使っている人にとっては、高い価値のあるデバイスだ。しかし逆に言うと、ほかのアップル製品やサービスと組み合わせないと、その真価を発揮できないデバイスでもある。Androidスマホのユーザーであれば、Nexus PlayerやChromecastの方が使いやすいことが多い。
また、iPhoneをすでに使っているという人は、「Lightning-Digital AVアダプタ」(税別5800円)でiPhoneをテレビに直結すれば、Apple TVと似たようなことはできてしまう。有線接続なので、頻繁な操作が必要なコンテンツには不向きだが、Apple TVよりも安上がりなので、大画面テレビでコンテンツを楽しみたい人は、こちらも選択肢に入れておくべきだろう。
正直なところ、現状ではアプリがそれほど充実していないので、「Apple TVは買いだっ!」とは言えない。しかし今後App Storeが充実し、さまざまなアプリをApple TVで楽しめるようになれば、面白いデバイスになっていくと思う。今後のアプリの盛り上がりに注目したい。
製品名 | 販売元 | 購入価格 |
---|---|---|
Apple TV(第4世代) 32GB | アップル | 1万9872円(税込) |