海外の高級万年筆にも引けをとらない、1万円のプラチナ万年筆「#3776 バランス」


1万円の万年筆なので華美なパッケージではないがきちんとしたメーカーだ

 鉛筆からチョークに至るまで、全ての筆記具には強い関心を持っている筆者だが、ほんの3年ほど前まで、こと万年筆に関してはほとんど興味を持てなかった。

 しばらく使わないとペン先が乾燥し、時にはインクカートリッジの内部のインキも全部固まったりする。万年筆は、筆者のように普段のメンテナンスを面倒がる人間や、浮気性でいろいろな筆記具を何本も使うユーザーには向いていないという先入観があった。

 そんな先入観や、多くの万年筆ユーザーの悩みでもあったインクの乾燥問題を解決した万年筆メーカーがプラチナ万年筆だ。キャップに特別の工夫を施すことで、万年筆を、メンテナンス必須の気難しい筆記具から、誰もが使ってみようと考える身近な筆記具に変えた。

 プラチナ万年筆株式会社は、偶然にも筆者の自宅のすぐそばにあり、地元ということもあって、短期間のうちに数本の万年筆を購入することとなった。いちばん最近、筆者が購入したプラチナ万年筆は、同社の代表作である「#3776 バランス」のボディカラーがワインレッド、ペン先が極太のモデルだ。

 日常的に、最も文章を多く書くのは原稿を書くときなのだが、すべての原稿はパソコン上で書いているので、万年筆を使うのは、自分のための商品アイディアのイメージ図や企画書、プレゼンテーションのストーリーボード、それに普段のメモ書きなどだ。基本的に図や絵、流れ図、簡単な表などがほとんどで、細かな文字を書くことは皆無に近い。

 そのため筆者の場合、画数の多い漢字との相性が良く、日本の万年筆市場の多くを占める細字のペン先である「F」を必要とすることはまずない。それゆえ、筆者の持っているほとんどの万年筆は太字の「B」だ。多くの国内外の万年筆の「B」を使った経験から、もう少しペン先が太めの万年筆が欲しくなり、過去に使ってみて筆記感覚が極めて良かったプラチナのBB「極太」を購入した。

 ペン先は極太だが、本体は比較的スリムで軽量、筆記時のバランスは良い。同時に購入したコンバーターを使用し、インクは同じプラチナ万年筆謹製のカーボンインキの超微粒子ブラックを使っている。何時、どんな時でも、キャップを外して書き出した瞬間から、真っ黒なインキがかすれることなく、また紙面にインキの水たまりをつくることもなく、本当に気持ちよくスムースに文字や図をのびのびと書ける。

 1万円前後で、このクオリティは賞賛に値すると感じた。国内市場でも多くの海外ブランド万年筆の高価な商品が販売されているが、その何分の一かの出費で、性能的には決して劣ることのない国産万年筆が存在することを知った価値は大きい。


やはりカートリッジではなく、コンバーターでボトルインクを使いたい筆者は、超微粒子ブラック(右側)を使用しました。本当に真っ黒けのけ……


10万円クラスの海外製ブランド万年筆と比べても引けを取らないプラチナ(右端)ペン先のダイナミックな太さが「極太」(手前) 右から ルイ・ヴィトン(OMASのOEM製品)のドックキュイール(M)、モンブランのマイスターシュテュック149「太字」、プラチナ#3776バランス「極太」


商品名実売価格購入場所
#3776 バランス万年筆(極太)PTB-10000B1万500円銀座 伊東屋


(ゼロ・ハリ)

2012/4/17 06:00