あの「透明ディスク式スタイラス」が筆圧対応に プリンストン「Jot Touch」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


あの「透明ディスク式スタイラス」が筆圧対応に

 今回のネタはプリンストンのJot Touch。iPhoneやAndroidスマートフォンやタブレットなど、静電容量方式のタッチパネルに対応したadonit社製のスタイラスペンですな。

 Jotシリーズは既に何種類かが販売されているが、新発売のJot Touchは筆圧対応になったというので、期待しつつ購入してみた。プリンストンダイレクトにて9999円だった。

プリンストンのJot Touch(adonit社製)。静電容量方式タッチパネルに対応したスタイラスペンで、筆圧感知センサーを搭載している。カラーはガンメタリックとレッドがある。プリンストンダイレクト価格は9999円

 Jotシリーズは、どれも静電容量方式のタッチパネルを操作するためのスタイラスペンだ。シクミは、人体の静電気をスタイラスペンを経由してタッチパネルに流すというもの。なので、筆圧とは無関係。これまでのJotシリーズも、ほかの静電容量方式パネル対応スタイラスペンも、筆圧を端末に伝えることはできなかった。

 が、Jot Touchだとデキる。シクミは、Jot Touchと端末がBluetooth接続し、Jot Touchの筆圧感知センサーが検出した筆圧をBluetooth経由で端末に伝えるというもの。タッチパネル操作は従来のJotシリーズと同じ方法で行うが、筆圧の伝達は別途無線で行うというわけですな。

 なお、Jot Touchの筆圧感知センサーを利用できるのは「Jot Ready対応アプリをインストールしたiPad(3rd generation)かiPad 2」。現在のところ10本程度の対応アプリがある。

 てなわけで、以降、Jot Touchの機能や使用感についてレポートしてみたい。が、全体的かつ大雑把な使用感から言っちゃえば、作りも使い勝手も精度もナイスなスタイラスペンであり、アプリによっては筆圧の感知も非常に良好。価格は高いが、コレ、イイと思いますっ♪ みたいな。


高級感のあるスタイラス

 まずはJot Touch(以下、JOTT)のサイズや質感から。

 JOTTはプラスチックの頑丈気味なパッケージに入っているが、このケースがユニークだ。JOTTをしっかりとセットしておけるペン置き~ケースになり、付属品は裏面に格納しておける。ただ、裏面に格納したペンキャップが取り出しにくい。いったん裏面部分を外さないと取り出しに苦労する感じ。

JOTTはこんなハードケース型パッケージで売られている。常用できる「JOTT置き」になりますな。付属品は裏面に収納されている
裏面にはカード状の説明書類が。専用充電器、金属製ペンキャップ、予備のディスクも格納されている。ただ、金属製ペンキャップは取り出しにくく、裏面部を分解しないと取り出しに四苦八苦すると思う

 おもてなし感のあるパッケージに加え、JOTT本体の作りや感触も良好。精密な作りで高級感があり、アルミの金属質感も心地良い。付属キャップもアルミ製で、本体へピッタリ隙間無くねじ込める。グリップ部はラバーで滑りにくく、この部分にはショートカット操作などを行える2つのボタンと電源ボタンがある。

 充電は付属の専用充電器で行う。PCなどのUSBポートやUSB ACアダプタに挿して使い、2時間で満充電となり、満充電から12時間使える。またこの充電器、JOTT本体を強力なマグネットで吸着保持する。ので、JOTT本体をカチッと手早く充電器にセットできる。磁力が強いので、充電時にJOTT本体が外れることもまずない。実用的なギミックですな。

非常に精密に作られた本体には、感触の良い金属質感がある。キャップも隙間無く装着できる。グリップ部にボタンが2つあり、アプリによってはカスタマイズすることも可能
充電は専用充電器で行う。充電器とJOTT本体は充電器側のマグネットで強固に吸着する。2時間で満充電となり、満充電から12時間使える

 本体の作りからパッケージまで、全体的に高級感のあるスタイラスだ。使用感以前に、モノとしてけっこーイイ感じであり、ミョーな満足を感じたりする俺であった。


Jot Ready対応のアプリを試す

 さてさて早速、JOTTとiPad(第3世代)をBluetooth接続。どんな感じで筆圧を表現してくれるのか、Jot Ready対応のアプリを9本試してみた。プリンストンの製品紹介ページにリストアップされているアプリのうち、「Scribble」アプリ以外全部ですな。

 以下、スクリーンショットともに使用雑感を書いてみた。が、筆圧関連の印象はユーザーによって大きく異なる場合があるので、「スタパはこう感じたらしい」くらいのスタンスでお読みいただければと思う。

Procreate
高機能で比較的に高速なペイント/ドローアプリ。アプリ内でJOTTの接続設定を行える。筆圧によって透明度もしくはブラシサイズが変化する。画材によって筆圧表現が現れにくかったりする。筆圧を使って描画してもわりと高速に動作しているようだ。サイドボタン操作には未対応
SketchBook Pro
これも非常に高機能なペイント/ドローアプリ。筆圧によって透明度が変化する。ただ、これも画材によって筆圧表現がわかりにくかったりする。サイドボタン操作には未対応
ArtRage
画材やキャンバスのリアルな描画感が特徴的なペイント/ドローアプリ。iOSの設定からJOTTの検出オンオフを行える。これも画材によって筆圧表現がわかりにくい傾向がある。またアプリの動作自体が遅めで、ペンへの描画追従性が低めであり、快適には描画しにくいように思う。サイドボタン操作には未対応
Sketch Club
手軽に使えるお絵描きアプリ。iOSの設定からJOTTの使用オンオフを行える。筆圧によって透明度やブラシサイズが変化する。画材にもよるが、比較的にわかりやすい筆圧検知結果になると感じられた。サイドボタン操作でブラシサイズを調節できるのも快適
Clibe
テキストと写真と描画に対応したソーシャル系日記アプリ。筆圧によりブラシサイズが変化する。変化がダイナミックなので、ブラシサイズをやや太めに設定しておくと筆書きのような強弱を伴った描画を楽しめる。サイドボタン操作でブラシサイズを調節できる
DeepSketch
アナグリフ(赤青メガネを使って立体視できる画像)を描けるペイントアプリ。筆圧によって線の距離感(線が近くに見えるか遠くに見えるか)、もしくは、ブラシサイズを変えられる。サイドボタン操作は、アンドゥ/リドゥ、もしくは、線の距離感を操作できる
ArtStudio
高機能なドローイングアプリ。筆圧により透明度やブラシサイズを変化させることができ、どの程度変化させるかなども細かく設定できる。サイドボタン操作は、アンドゥ、リドゥ、ズームアップ、ズームダウン、フルスクリーン表示への切り替えなどを、2つのボタンに対し自由に設定できる
Animation Desk
手描きアニメーション作成アプリ。筆圧による描画変化はブラシにより異なり、透明度やブラシサイズが変化する。比較的にわかりやすく筆圧が再現されるので、筆圧を使って描画しやすい。サイドボタン操作設定はiOSの設定から行えて、ページ送り戻し、アンドゥ/リドゥ、ブラシ持ち替え、ブラシサイズ変更から選べる
PDFpen
PDFファイルにテキストや手書き文字を入力できるアプリ。筆圧によりブラシサイズが変化する。より自然な線での手書き入力が行えるが、アプリのレスポンスが若干低下するためか、線が途切れることがある。アプリの使用目的から、筆圧をオフにしたほうが良いケースが多い気がする。サイドボタン操作には未対応

 てな感じで、アプリによって機能や操作感はけっこー異なる。プリンストンのサイトなどでは公表されていないが、JOTTの筆圧は200段階までとのこと。この200段階を意識して巧く描画をコントロールするのは、少なくとも俺にとってはかなり難しく、多くのアプリで「イマイチ効果を出しにくい筆圧機能」だと感じた。あるいはペイント/ドローアプリが持つ、描画スピードを検知しての線の太さなどの自動コントロール機能のほうが自然な線になるかもしれない。

 ぶっちゃけた話、確かに筆圧に対応しているものの、ワコムのタブレットなどのイメージとはかなり違う。使いこなす、というか、筆圧表現をモノにするには、ある程度の訓練が必要になる。
 とは言え、後述のように非常に高精度でポインティング~描画できるスタイラスであり、かつ、アプリによっては筆圧を使った描画も実用的。十分実用レベルの筆圧対応スタイラスだと思う。


てゅーか「Jot」ってイイですネ♪

 正直な話、これまで各種「Jot」を避けてきた。理由はペン先に付いているディスク。壊れやすそうだし、外れそうだし、携帯時にいちいちキャップしないとダメそうだし、外見的にもヘンだと感じていた。そこまでして静電容量方式タッチパネルにペン書きしたいとは思わないなぁ、みたいな。

 しかしJOTTを使ってみたら考えが変わった。実際にペン先のディスクは壊れやすそうだし、いちいちキャップするのも面倒だ。が、静電容量方式タッチパネル用スタイラスとしてはダントツに使いやすいと感じた。

 iPadやiPhoneでJOTTを使うと、ほかのどのスタイラスよりも快適に使える。iPhoneだとボタン類が小さなアプリをサクサク使えるようになるし、ソフトウェアキーボードの操作のミスも減る。

 iPadだと、お絵描きアプリがより楽しくなるのはもちろん、手書き系アプリの実用性がガガッと増す。たとえば「7notes for iPad」で手書き文字入力時、先端太めのスタイラスだと濁点がヘンなところに打たれたりするが、JOTTだとそういうことからくるストレスが少ない。

 また、多くのシチュエーションで「指での操作よりJOTTでの操作のほうが快適」だとも感じる。結局、指でタッチしていると、指先部分の表示が見えないんですな。JOTTならペン先に透明ディスクがあるだけなので、表示のほとんどを目視できる。ので、PC画面上のマウスポインタでクリックするくらい、ボタン操作時の表示の見えにくさが少ないと感じる。

 JOTTの場合、Bluetooth(筆圧センサー)機能を使おうとするとiPad 2/3rd generation専用品になっちゃうわけだが、これを使わなければ静電容量方式タッチパネル全般に対応したスタイラスとして利用できる。筆圧感知センサー使いたいなら「Jot Touch」が要るわけだが、快適なスタイラスを求めているだけならほかの「Jotシリーズ」も良さそう、てな話ですな。

 ともあれ、JOTT、iPad 2/3rd generationで筆圧対応スタイラスを使ってみたいという方にとっては非常に興味深い製品であることは確かだ。前述の「アプリによって筆圧入力の感覚がかなり異なる」ことの確認も含めて、ぜひ一度実機に触れてみてほしい。


2012/8/27 06:47