みんなのケータイ

 「isaiでハイレゾ音源を楽しむ」と題した記事を本コーナーに掲載したのが2013年12月。その後、日沼氏が2014年1月2014年12月に本コーナーでAndroid端末におけるハイレゾ音源の再生の模様を書いている。ニュース記事では、2014年9月に「ドコモの2014年冬春モデルがハイレゾオーディオに対応」という内容で、ドコモが一斉に対応を開始したことを報じている。他のキャリアのラインナップでも概ねこの頃からハイレゾ対応がうたわれはじめたのではないだろうか。

 最近になって発売されるヘッドホンやイヤホンで、少しでも拘った製品なら間違いなく「ハイレゾ対応」とアピールされている。据え置きのスピーカーやアンプと比べれば絶対的な投資額は少なくて済むのと、非常に多くの製品が発売されているので、自分のペースで手軽に“こだわりの趣味”が始められるのも人気の要因だろうか。

 筆者は先日、秋葉原にあるイヤホン・ヘッドホン専門店の「eイヤホン」を休日に訪れてみたのだが、静かなビルの出入口から一転、店内はオーディオ系の店舗とは思えない若い世代の男女でごった返しており、その熱気に驚かされた。「ヘッドホン祭」などのイベントで、若い世代を中心にポータブルオーディオの世界が盛り上がりを見せいているのは実感していたが、活気のある販売店の現場を目の当たりにして、「イベントじゃないけど盛り上がってる!」と人気を改めて実感した次第だ。

 筆者はこの日訪れた「eイヤホン」で、気になっていたFURUTECHのヘッドホン変換プラグ「F63-S(R)」を購入してみた。ステレオミニを標準プラグに変換するもので、ロジウムメッキ処理と、-196度という超低温処理+特殊電磁界処理が施されている。

オーディオテクニカから発売された待望のオーディオ的USB-OTGケーブル。アダプタータイプの「AT-EUS1000hc」

 さて、今回の話の核になるのは、オーディオテクニカから発売された、USB-OTGケーブルだ。オーディオ用ケーブルとしてアプローチしているUSBケーブルのシリーズ(AV Watchのニュース記事)で、5月22日に発売されており、筆者は既存のUSBケーブルを活用できるアダプタータイプの「AT-EUS1000hc」を購入した。

 「AT-EUS1000hc」は片方がmicroUSB、片方がUSB Aタイプのメスで、長さは13cm。普通に考えると地味な見た目なのだが、筆者的には“待望の製品”なのである。

「USB Audio Player PRO」。最近になってAndroid 5.0世代のマテリアルデザインに様変わりした

 前述の、キャリアやメーカーがハイレゾ対応をうたうAndroidスマートフォン“ではない”場合でも、別途USB接続のDAC(兼アンプ)を用意することで、バッチリとハイレゾ音源を再生できる方法がある。それが、「USB Audio Player PRO」というアプリを使う方法で、その筋では定番となっているアプリだ。本コーナーでも2014年12月に日沼氏が記事にしている。アプリは975円と安くはないが、動作を確認できる試用版が用意されている。

 「USB Audio Player PRO」を使う基本的な条件は、OSがAndroid 4.0以上で、端末がUSB-OTG対応であること。USB-OTG(On-The-Go)とは、平たく言うとUSBメモリやUSBキーボード・マウスといった機器を接続して利用できる機能だ。USB-OTGケーブルは内部の結線が一部違うため、USB-OTG対応を明確にうたうケーブルが必要になる。

 「USB Audio Player PRO」を使い、外部のUSB接続のDACにデジタルでデータを主力してハイレゾ音源の再生を楽しむ、という一連の仕組みや環境において、最もネックだったのは、オーディオ的アプローチで製作されたUSB-OTGケーブルが存在していなかったことだ。自作や自作代行、個人制作による販売という意味では存在しているが、企業が全国に流通させるような製品では存在していなかったのだ。

最新モデルではないAndroidスマートフォンがハイレゾプレーヤー(トランスポート)になる接続例。DAC兼アンプ(黒い箱)はもっと小型のものがたくさんある。ステレオミニプラグの先の変換プラグは前述のFURUTECHの「F63-S(R)」だ

 その最後のピースを埋めるのが、前述のオーディオテクニカの「AT-EUS1000hc」で、音質重視をうたう高純度無酸素銅の導体やシールド、金メッキの接点が特徴だ。これまでの、「イヤホンやDAC、USBケーブルは気張って選んだのに、USB-OTGケーブルはなんでこんなのしかないの……」という“こだわりきれない悔しさ”がやっと解消されるのだ。量販店などでスマートフォンのアクセサリーコーナーに売っているごく普通のUSB-OTG対応の変換ケーブルと音を比較すると、その差はわずかだが(笑)、綺羅びやかに拡張されるのではなく、中・高音域が整理された、見通しよく落ち着いて聴ける音というのが第一印象だ。USB-OTGケーブルが最後のピースだという、こだわりをこじらせている人はチェックしてみてはいかがだろうか。