ケータイ用語の基礎知識

第624回:Android Beam とは

 「Android Beam」(アンドロイド ビーム)は、Android 4.0から搭載されている機能です。非接触通信規格「NFC」に対応したAndroidスマートフォン2台の間で、データ交換をするための仕組みです。

 Androidの設定メニューのうち「無線とネットワーク」―「その他」といった項目から、Androidビームの設定が用意されている機種であれば、この機能を使うことができます。

 「NFC」とは、近距離通信を意味する“Near Field Communication”の略で、非接触型、つまり端子を繋がなくとも、かざすだけで機器同士が通信したり、繋がったりする通信規格です。NFCに準拠した機器は、13.56MHzという周波数帯の電波を使って、ごく近い距離で106kbps~424kbpsの速度で通信できます。その距離はおおよそ約10cm以内です。

 Android搭載のスマートフォンでは、データを転送する手段がいくつかあります。たとえば、BluetoothやWi-Fiです。また国内で販売されているスマートフォンでは赤外線通信をサポートするものも少なくありません。

 こうした手段と、「Android Beam」の大きな違いは何でしょうか。1つは、「Android Beam」では、転送する相手に関する設定をする必要がない、ということです。つまりデータを発信する端末と、受け取る端末、2台の背面などにあるNFCマークを向かい合わせて近づけるだけで、端末が互いを認識して、自動的にデータが転送されます。

 たとえば、Androidの標準アプリ「ギャラリー」では、写真を選択して表示しているときに、その端末のNFCマークを、もう一台の端末のNFCマークと重なるように近づけるだけで、画像を転送する用意が整います。ここで、画像をタップすれば転送されます。

 ここまで気軽に転送できるのはメリットですが、逆にセキュリティ上の懸念を抱くかもしれません。ただ、先述したようにNFCで通信できる距離は10cm程度です。まったく見ず知らずの人の手にあるスマートフォンとその距離で通信したり、なりすましされたりする心配は少ないと言えるでしょう

Android 4.1からはBluetoothも

 Andoird Beamは、Android 4.1で変更が加わりました。NFCで互いのスマートフォンを認識した後は、データ転送をBluetoothで行うようになったのです。

 NFCは便利な仕組みですが、もともと小さな容量のデータ転送しか想定されておらず、転送速度が106kbps~424kbpsと比較的遅かったのです。WebサイトのURL、あるいはアドレス帳データといった内容であれば、ごくわずかな情報量ですから、NFCの転送速度でも十分です。しかし数MB単位となる写真の転送には時間がかかります。

 一方、Bluetoothであれば、データ転送速度が最大24Mbpsと、大幅にスピードアップすることになります。

 ちなみに、「NFCで転送先を決め、データはBluetoothで送る」という方式を“BTSSP”と呼びます。「BTSSP」は、Bluetoothの仕様策定団体であるBluetooth SIGの定めた標準仕様で、「Bluetooth Secure Simple Pairing Using NFC」の略です。Bluetoothで通信する際には、基本的に機器同士をあらかじめ登録しあう“ペアリング”という作業が必要ですが、NFCを使ってBlueotoothのペアリングを行うという形です。

 Bluetoothでは、端末同士の距離が10m程度まで離れていても通信できます。一度、NFCで相手を認識してしまえば、Bluetoothでの通信中は端末同士の距離をおいても大丈夫です。またペアリングしていない相手とは通信しません。

 なお、Android Beamが使える機械同士でも、データ転送の仕組みが変わったため4.0とは4.0と、4.1以上とは4.1以上同士でしかデータ転送できないので、この点は注意が必要でしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)