第457回:リモートワイプ とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「リモートワイプ」とは、携帯電話に記録してあるデータを、携帯電話から操作するのではなく離れた場所から、遠隔操作(リモート)で、消去、無効化する機能です。この用語における“ワイプ”とは、「拭く」「拭き取る」などを意味する英単語「wipe」から来ています。主に、携帯電話を紛失したり盗難にあった場合の、情報漏洩を防ぐ目的で利用されます。

 一般ユーザーの利用する携帯電話では、もし電話を紛失したような場合には遠隔地から通話機能などを使えないようにする「遠隔ロック」といった機能が多く搭載されています。

 しかし、企業でもし携帯電話を紛失した場合、通話に使われたかどうかだけでなく、電話の中に登録されているデータ、たとえば、アドレス帳に登録されている個人データが盗用されるようなことがあれば、それもコンプライアンス面から大きなダメージになります。スマートフォンの場合、アドレス帳だけでなく、他の業務で使われているデータ、たとえばカレンダーや、ToDoリスト、売上情報などが登録されている場合もあります。

 そこで「遠隔ロック」から一歩進んで、本体データ、場合によっては外部メモリ内のデータも消去できる機能を準備されているのです。

 特に、スマートフォン向けに、こういった機能がよく組み込まれています。たとえばWindows Mobile 5.0以降、iPhone OS 3.1以降で、リモートワイプのための機能があります。

 リモートワイプを実際に端末に実行するには、その命令を送るためのサーバーが必要になります。Windows Mobileの場合、Exchange Server 2003 Service Pack 2というマイクロソフト製のサーバーから同機能を利用できます。

 リモートワイプを実行するには、サーバーの管理画面などから指令を送ることになります。すると、携帯電話のデータ通信を利用して端末に送られ、端末内のOSやソフトがデータを自動的に消去するのです。

リモートワイプの仕組み。リモートワイプは、遠隔地から携帯電話の利用を停止させ、携帯電話内のデータを消去し悪用させないようにする機能だ。遠隔地のサーバーから携帯電話に指令を出し、内部のデータを消去

 iPhoneの場合、iPhone OS 3.1以降搭載の端末では、MobileMeからこの機能を実行することができます。

 このようなスマートフォンをリモートワイプするためのソリューションは、法人ユーザー向けのサービスとしても提供されています。たとえば、iPhone 3GSの場合、ソフトバンクBBが提供している法人向けのSaaS/ASPサービス「TEKI-PAKI」のサービスの1つとして「リモートワイプサービス」が提供されています。月額315円の有料サービスで、Webサイトの管理専用画面、あるいは専用電話番号から自動音声案内の指示に従って操作することで、リモートワイプによるデータ消去を行えるのです。

電源オフや圏外の場合は使えない

 リモートワイプは、その仕組み上、「携帯電話が通信できること」が前提となります。つまり、圏外であったり、電源がオフになっていたりする場合、一般的にはリモートワイプを行うことはできません。

 また、携帯電話を紛失した場合、事業者に連絡して遠隔操作でロックしたり、使えなくしたりする機能もありますが、リモートワイプを実行する場合は、その実行前に携帯電話を使えない状態にしてはいけません。

 もし圏外だった場合、どのような処理が行われるかは、機種、あるいはサービス提供元によってさまざまです。たとえば、iPhoneとMobileMeの組み合わせの場合、iPhoneの電源が入っていない状態、あるいは圏外だった場合にリモートワイプが実行されると、iPhoneにふたたび電源が入って、圏内になったタイミングでリモートワイプが実際に行われます。成功すると、確認メールがMobileMeのアカウントへ送信されます。

 



(大和 哲)

2010/3/2 11:47