法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
動き出した5G、夏モデルへの期待も高まるMWC 2018
2018年3月13日 19:32
2月26日からスペイン・バルセロナで開催されていたMobile World Congress 2018(MWC 2018)。本誌では各社の発表イベントや現地速報などをお伝えしたが、今回はこれらを振り返りながら、現地での様子やこれからの展開などについて、レポートしよう。
動き出した5G
MWCは世界中の携帯電話事業者や通信機器メーカー、端末メーカー、ソフトウェアベンダー、関連企業が集まるイベントとして知られているが、「議会」「会議」という意味合いを持つ「Congress」というタイトルからもわかるように、他の展示会と違い、関係各社の商談や交渉の場所という意味合いが強く、言わば、業界向け、プロ向けという位置付けになる。
ただし、業界関係者の商談の場でしかないというわけではない。直近のビジネスに向けたアピールとして、各社はこの時期に合わせ、新製品や新サービス、最新技術をを発表する。特にMWCは、今年~来年にかけて、あるいはもう少し先のトレンドを知ることができるイベントとも言える。
そんなMWCの2018年を語る重要なキーワードと言えば、やはり「5G」ということになる。実は、昨年の「MWC 2017」のレポートで「5Gへの道筋が見えた?」という話題を書いた。昨年の段階では業界各社がある程度、スケジュールを決め、2019~2020年頃をめどに商用サービスを開始するというリリースを出したことが大きなトピックだった。
これに対し、今年、「MWC 2018」はいよいよ本格的に5Gへ向けて動き出したという印象だ。各社のトライアルの状況をはじめ、5Gを利用したデモなども注目を集めていた。たとえば、米クアルコムは5Gチップセットを搭載したリファレンスモデルを使い、すでにエリクソンやノキア、ファーウェイといった各ネットワーク機器メーカーと相互に接続試験を行ない、接続の確認ができたことをアピールしていた。
ファーウェイもプレスイベントにおいて、5G対応チップセットとCPE(Customer Premises Equipment/ユーザー宅内装置)を発表した。NTTドコモもステージ上の演者とロボットを5Gを使って、同期させながら動かすというデモを行い、来場者からの高い注目を集めていた。この他にも数多くの5Gのトライアルやデモが公開されており、MWC 2018は5Gの商用サービスへのカウントダウンが始まったという印象だった。
こう書くと、「じゃあ、次のスマホは5G待ちだな」と考えてしまいそうだが、当面、そういった考えは持たなくても良さそうだ。
まず、5Gの規格は3GPPやGSMAなどによって標準化され、その規格に基づいて、各社がトライアルや製品開発を進める。商用サービスへ向けた取り組みは日本、米国、中国、韓国などが先行し、欧州などはコスト面などから5Gの導入がスローペースになる見込みと言われている。その他の国と地域もまだLTEを導入したばかりで、投資の回収が終わっていないことなどから、商用サービスは数年以上先にしか検討できないというところも多いという。
ちなみに、日本については各社が5Gへ向けたトライアルを実施しているものの、どの事業者がいつ、どこで、どの周波数帯域でサービスを開始するのかといったことは正式にアナウンスされていない。おそらく2020年の東京オリンピックがひとつの目安になるが、当面、エリアは大都市部が中心で、現状の4G LTEのネットワークを補完するような形で提供される見込みだ。そのため、ユーザーが利用するスマートフォンとしては、数年後に4G/5Gの両方のネットワークが利用できる製品などが登場し、エリア内に移動したときに5Gの超高速通信や超低遅延といったメリットを享受できることになる。
では、5Gはユーザーにとって、当面、あまり縁がないのかというと、そうでもない。たとえば、各社のデモでよく登場する遠隔操作などがいい例だ。遠隔操作は5Gの超低遅延の特徴を活かす用途のひとつで、前述のNTTドコモのロボットの同期デモもそれを具体的に見せたもののひとつ。
こうした技術の完成度が高まれば、遠隔操作で工作機械を動かしたり、遠隔医療なども実現しやすくなる見込みだ。5GのデモにVRやARが組み合わせられているのも同様の理由によるものだ。5Gで利用する周波数帯域が広ければ、限られたエリアに一斉にデータを送信できるため、スタジアムなどでハイライト映像を観客の端末に一斉配信するといった使い方もできるという。つまり、5Gは我々ユーザーの個々の端末だけでなく、長い目で見れば、社会インフラに組み込まれていくような存在になりそうだ。
今後、5Gが商用サービスへ向けて、動き出していく中で、ユーザーとして、認識しておきたいのが利用する周波数帯だ。5GではこれまでLTEで使わなかった高い周波数帯を含め、いくつもの周波数帯を利用する見込みだが、技術面では「6GHz」がひとつの区切りとされている。
たとえば、今回、ファーウェイからは5G対応CPEが発表された。現在、国内でauやUQ WiMAXが販売する「Speed Wi-Fi HOME」、ソフトバンクが販売する「SoftBank Air」シリーズなどと同様の屋内設置用の機器で、「HUAWEI 5G CPE」と「HUAWEI 5G CPE(mmWave)」の2機種がラインアップされている。円筒形デザインの筐体のHUAWEI 5G CPEが6GHz未満の周波数帯に対応するのに対し、ミリ波と呼ばれる6GHzを越える周波数帯に対応するHUAWEI 5G CPE(mmWave)は円筒形デザインの筐体とは別に、ヒートシンクのようなものを備えた箱が付属する。この箱はODU(OutDoor Unit)と呼ばれる分離型アンテナで、CPE本体を屋内に設置し、ODUをベランダなどに設置して利用するという。
こうした構成になっているのは、「Sub6(サブシックス)」と呼ばれる6GHz未満の周波数帯がこれまでのLTEで利用してきた2.5GHz帯や3.5GHz帯に近く、ある程度、技術的な応用が利くのに対し、6GHzを越える周波数帯(28GHz帯など)はそれらの周波数よりもさらに直進性が強く、信号の減衰も大きいため、アンテナのみを分離しているという。
6GHzを越える周波数帯は、確保できる帯域が広く、超高速データ通信が可能と期待されている。その一方で、スマートフォン本体での利用よりも、CPEのように固定回線のラストワンマイルの置き換えの方が、当面、現実的な利用と言えるのかもしれない。日本のように、ブロードバンド回線の利用可能世帯が99%を越える地域にはあまり縁がないが、固定回線やブロードバンド回線が普及していない地域には有力な通信手段として期待されている。もちろん、日本でも光回線が利用できる環境でありながら、マンション内の配線設備が古く、「Mbps」クラスの通信速度しか得られないような環境には有効な手段として期待されるかもしれない。「5G=無線通信=モバイル」と考えがちだが、5Gは利用する周波数帯によって、その用途が大きく違ってくることになりそうだ。
そして、5Gについて、最後にもうひとつだけ注意しておきたいことがある。それは米クアルコムの動向だ。クアルコム自身の動向というより、クアルコムを取り巻く業界動向によって、今後の5Gの商用サービス開始が大きく左右されてしまうかもしれないからだ。
クアルコムと言えば、スマートフォンのチップセット「Snapdragon」シリーズでおなじみだが、昨年11月、米ブロードコムから1300億ドルで敵対的買収を仕掛けられている。ブロードコムとしては無線通信技術の分野で数多くの特許を保有し、スマートフォンのチップセットでは圧倒的なシェアを持つクアルコムを買収することで、スマートフォンを軸にしたモバイル業界の覇権を一気に握ろうという構えだ。
仮に、この買収が成立すると、これまで5Gの標準化や商用化へ向けて動いてきた流れが止まってしまい、5Gの商用サービス開始そのものが危うくなるのではないかという指摘がある。MWC 2018の会期終了後、3月6日に株主総会が予定されていたが、ブロードコム側が取締役会の過半数を握ろうとしたものの、対米外国投資委員会(CFIUS)が「ブロードコムの買収提案に安全保障上の懸念がある」として、調査をすることになったため、30日間の延期が発表されている(※関連記事)。その後、3月10日には一部メディアが「米インテルがブロードコム買収を検討か」と伝え、さらに動向は複雑化しそうな気配を見せている。インテルがブロードコム買収を検討しているのは、仮にブロードコムのクアルコム買収が成立すると、モバイル業界全体に影響力を持つ企業グループになってしまうためだ。そこで先にインテルがブロードコムを買収することで巨大勢力の成立を阻止しつつ、インテル自身も5G時代への勢力拡大の足固めを狙いたいためだと伝えられている。さらには3月12日、ドナルド・トランプ米大統領が「国家安全保障上の観点から」ブロードコムのクアルコム買収を禁止する命令を出したことが報じられた。
今回の一件が最終的にどういう形に落ち着くのかはわからないが、いずれにせよ、5Gの規格や技術、製品、サービスがどういう内容なのかといったものとは、少し違う次元の出来事によって、今後の5G時代の展開が大きく変わってしまうことを覚えておきたい。裏を返せば、それだけ5Gが持つ社会的な影響力が大きいことを表わしているとも言えそうだ。
国内市場への投入が期待される端末が続々
5Gは、2020年頃をめどに商用サービスが順次、スタートすると見られるが、現在、我々が利用している4G時代の製品も今回のMWC 2018では数多く発表されている。数年先の将来の話をしつつ、今春以降に販売される製品のお披露目をするのもこの時期に開催されるMWCならではと言えるだろう。筆者がプレスカンファレンスなどに出席したメーカーを中心に説明しよう。
サムスン電子「Galaxy S9」「Galaxy S9+」
今回のMWC 2018を機に発表された製品で、もっとも注目を集めたスマートフォンと言えば、やはり、サムスンの「Galaxy S9」と「Galaxy S9+」だろう。
本誌では発表会速報のほかに、写真レビューや現地での速報レビュー、「ケータイしようぜ!」の特別編などをお伝えした。従来のGalaxy S8/S8+のデザインを踏襲しながら、カメラとセキュリティを強化しているのが特徴だ。
カメラはGalaxy S9+が広角と望遠のデュアルカメラ、Galaxy S9がシングルカメラだが、Galaxy S9のシングルカメラはGalaxy S9+の広角カメラと共通で、12Mピクセルのデュアルピクセルイメージセンサーを採用し、絞りはF1.5とF2.4をメカニカルに切り替えるしくみを搭載している。一般的にデュアルカメラは被写界深度の違いなどを利用し、背景をぼかして、メインの被写体を際立たせるポートレートモード(ワイドアパーチャ)などが実現しやすいが、今回のGalaxy S9ではシングルカメラでも「選択フォーカス」という撮影モードで、同様の撮影を可能にしている。
この他にも虹彩認証と顔認証を組み合わせたインテリジェントスキャン、インカメラとRGBセンサーや赤外センサーの組み合わせで自撮り画像をキャラクター化できる「AR Emoji」など、ユニークな機能を搭載している。国内市場向けの発売は何も触れられていないが、順当に行けば、Galaxy S8/S8+同様、NTTドコモとauから発売されることになりそうだ。この夏、もっとも期待できるモデルと言えそうだ。
ソニー「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」
2016年以来、Xperiaの新シリーズとして、Xperia Xシリーズを展開するソニーは、今回のMWC 2018の会期初日のプレスカンファレンスで、「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」などを発表した。Xperia Xシリーズとしては、「Xperia X(Performance)」「Xperia XZ」「Xperia XZs」「Xperia XZ1」に続く、5つめのシリーズになる。
従来モデルから約半年ぶりの新機種ということで、Xperiaシリーズならではのハイペースぶりは健在だが、今回は指紋センサーの位置を側面から背面に移動し、背面もラウンドさせたボディを採用するなど、デザインを一新している。
両機種共通の強化ポイントとしては、ディスプレイとカメラが挙げられる。ディスプレイはXperia XZ2が5.7インチ、Xperia XZ2 Compactが5.0インチのフルHD+対応液晶パネルを採用し、縦横比は18:9となり、本体前面のイメージも従来から少し変更された。ちなみに、CompactシリーズがようやくフルHDクラスの解像度に対応したこともユーザーとしてはうれしい改良点だろう。カメラについては、従来モデル同様、1920万画素のメモリー積層型イメージセンサーによるMotion Eyeカメラを搭載するが、新たに4K HDRビデオの撮影を可能にし、従来機種でサポートされていた3Dイメージクリエイターもインカメラでスキャンに対応した。サウンドでは出力する音響に合わせて、本体のバイブレーションを連動させるなど、細かい部分も改良が加えられている。
こちらも国内向けの発売は何もアナウンスされていないが、やはり、順当に行けば、主要3キャリアからの発売が予想される。ひとつ気になる点としては、ソニーのプレスカンファレンスで初のスマートフォン向けデュアルカメラモジュールの開発が明らかにされたことだろう。ソニーとしてはイメージセンサーやカメラモジュールも重要なビジネスに位置付けられているため、このタイミングで発表したかったことは理解できるが、やはり、Xperia XZ2とXperia XZ2 Compactという新機種を発表した流れで見せてしまうと、ユーザーとしては「もしかして、次を待った方がいい?」と躊躇してしまいそうだ。短いスパンで新機種をリリースしてきたXperiaだけに、こういう見せ方をされると、さらに新機種を買うタイミングを悩んでしまいそうだ。
ASUS「ZenFone 5」「ZenFone 5 Lite」「ZenFone 5z」
ASUSはこれまで販売してきた「ZenFone 4」シリーズに続く新シリーズとして、「ZenFone 5」シリーズ3機種を発表した。シリーズとしてラインアップされているが、ZenFone 5が縦横比19:9の6.2インチディスプレイを搭載し、ディスプレイ上部にiPhone Xのようなノッチ(切り欠き)が存在するた斬新なデザインを採用しているのに対し、ZenFone 5 Liteは縦横比18:9の6インチディスプレイ搭載したモデルで、インカメラに20Mピクセルのデュアルカメラを搭載しており、デザイン的にも方向性としても少し異なるものとなっている。
ユーザーインターフェイスも従来モデルから少し変更された印象で、使い勝手の面も含め、ややiPhoneを強く意識したしようとなっていた。国内ではSIMフリースマートフォンとして安定した人気を得ているZenFoneシリーズだが、今回のデザインやユーザーインターフェイス変更などを鑑みると、ZenFoneシリーズのアイデンティティというか、基本的な方向性や個性が少し揺らいでいるような印象も受けた。同時に、「ZenFone 5」という名称は2014年に発売されたモデルにも使われており、4年を経て、その名前が復活したことも気になるところだ。ユーザーが利用するうえでは、実害はあまりないだろうが、混乱を招くことにならなければいいのだが……。
LGエレクトロニクス「V30S ThinQ」
昨年のMWC 2017では他社に先駆けて、縦横比18:9という縦長ディスプレイを搭載した「LG G6」を発表した同社だったが、今年は国内で販売されている「V30+」の強化モデルとも言える「V30S ThinQ」を発表し、出品していた。「ThinQ」は同社がAIプラットフォームの名称で、スマートフォンだけでなく、テレビや冷蔵庫など、同社の家電製品に展開していくことが明らかにされている。今回のV30S ThinQはカメラに「AI CAM」というメニューが用意され、被写体を認識し、ディープラーニングの情報を活用することにより、それぞれの被写体に合った最適なモードで撮影できるというものだ。また、同社のブースでは現在のV30/V30+が対応するGoogleのVRグラス「Daydreamview」のデモコーナーが人気を集めていた。
ファーウェイ「MediaPad M5」「MateBook X Pro」
昨年はフラッグシップモデル「P10」「P10 Plus」を発表したファーウェイ。今年は会期前日にイベントを開催し、Windows 10搭載パソコン「MateBook X Pro」、Androidタブレット「MediaPad M5」、5G対応チップセット「5G01」、5G対応CPU「HUAWEI 5G CPU」「HUAWEI 5G CPE(mmWave)」を発表した。
MediaPad M5については10.8インチと8.4インチのディスプレイを搭載したモデルがラインアップされており、iPadやiPad miniを強く意識したモデルだが、ユニークなのはキーボード(モデルによっては同梱)を接続すると、わずか数秒でMate 10 ProのPC Modeと同じように、Androidタブレットの画面がウィンドウ表示に切り替わるというもの。つまり、2in1タイプのノートPCのような使い方ができるわけだ。上位モデルのMediaPad Proでは4096段階の筆圧を検知する「M-Pen」による手書き入力機能がサポートされる。
MateBook X ProはスリムなボディのWindows 10搭載ノートPCで、13.9インチのFullViewディスプレイを搭載する。スマートフォンのMate 10 Proのように、ディスプレイを狭額縁で搭載し、画面占有率は91%を実現している。タッチパネルへの対応や独自のクーリングシステム搭載など、本格的に既存のPCメーカーの製品をキャッチアップしてきた製品だ。同社CEOのリチャード・ユー氏、日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏のインタビューでも明らかにされたが、いずれの製品も国内市場への投入が明言されている。さらに、イベント終了時にはスマートフォンのフラッグシップモデル「P20」シリーズの発表イベントを3月27日にフランス・パリで開催することが告知されており、こちらも国内市場への投入が明らかにされている。今年の国内市場の春商戦では存在感を増したファーウェイだったが、次なる夏商戦へ向けて、さらに強力なラインアップを揃える構えだ。
ZTE「Blade V9」「AXON M」
ZTEは会期前日、プレスカンファレンスを開催し、リーズナブルな価格帯でウルトラワイドディスプレイやデュアルカメラを実現した「Blade V9」、さらに低価格の「Blade V9 VITA」を発表した。Blade V9は5.7インチの縦横比18:9のディスプレイを搭載したモデルで、狭額縁に仕上げることで、画面占有率は83.6%を実現している。カメラは被写体の背景をぼけさせる効果のほか、暗いところでの高感度撮影も強化されている。
筆者はスケジュールが合わず、参加できなかったが、暗所での撮影に強いことをアピールするためか、プレスカンファレンスのタッチ&トライの会場が暗く、実機の撮影に苦労したという裏話も耳にした。
ZTEと言えば、昨年、NTTドコモと共同で開発した「M Z-01K」を海外の携帯電話事業者向けにも供給し、NTTドコモ向けにはロイヤリティが支払われるというビジネスモデルが話題になった。多くの携帯電話事業者が参加するイベントということもあり、ZTEの展示ブースには「AXON M」というプレートと共に実機が展示され、来場者の注目を集めていた。今後、こういった形で、日本で企画されたスマートフォンやケータイが海外に送り出されるきっかけになるのだろうか。
5G時代へ向けて、夏商戦へ向けて、各社の動向に注目
モバイル業界では世界最大のイベントとして知られるMWC。昨年に引き続き、今年のMWCも主役は「5G」がキーワードとして注目されたが、本稿の冒頭でも説明したように、ブロードコムのクアルコム買収騒動により、今後の展開が少し読みにくい状況も生まれつつある。
ただ、業界全体として、5Gへ向けて動き出していることは事実であり、今年は昨年と違い、商用サービスを謳う製品や技術が明確になってきたことが注目に値する。「いつか来る5G」が「まもなくやってくる5G」になり、グッと現実感を帯びてきた印象だ。ある業界関係者は昨年の業界各社の5Gについてのプレスリリースを受け、今年は各社が商用サービスへ向けてトライアルやデモを出品し、おそらく来年は実際の商用サービスの具体的なスケジュールや内容が明らかになるタイミングだろうと話していたが、クアルコム買収騒動が妙な方向に進まなければ、2019年や2020年のMWCは、5Gサービスをリアルに語り、体験できるイベントになりそうだ。
一方、スマートフォンそのものについては本稿で取り上げたように、サムスン、ファーウェイ、ソニーといったメーカーの製品が強く、LGエレクトロニクスやASUS、ZTEなどがこれらに続くといった印象だ。ややバリエーションが少なくなってきた感もあるが、グローバル市場での戦いは国内市場と違った競争があるため、選択肢が絞り込まれてきたと言えるのかもしれない。ちなみに、本稿でも説明したように、今回発表された製品の多くは、今年の夏商戦前後をめどに、国内市場に投入される見込みなので、各社の発表を楽しみに待ちたい。
また、今回のMWC 2018では各社のエグゼクティブにも数多くインタビューすることができた。それぞれに各社の現状に加え、今後の展開などもわかりやすく説明していただいたので、機会があれば、ぜひ一度、ご覧いただきたい。そして、最後に今年3月末で代表取締役社長を退任されるKDDIの田中孝司氏にもインタビューさせていただいたが、今回が『田中プロ』の社長としての最後のインタビューになるそうだ。正式には任期はまだ数週間残っており、今後も会長職として、あるいはGSMAのボードメンバーとして、業界には関わるとのことだが、この場をお借りして、ひとまず、「お疲れさまでした」と申し上げたい。