レビュー

楽天モバイルは今、どこまで繋がる? 「無料サポータープログラム」のサービスエリアをチェック

 楽天モバイルが10月からスタートした「無料サポータープログラム」。限られたエリアながら、実際にユーザー自身が“第4のキャリア”の通信サービスを利用できる機会になっている。そのサービスエリアは、実際どの程度、“使える”ものなのか。

 今回、本誌ではいわばファーストインプレッションとして、楽天モバイルの回線で通話や通信速度を試してみた。本稿だけで楽天モバイルの現在および今後の品質の全てがわかるわけではないが、その実力の一端が垣間見えるかもしれない。

商業エリア、路地、地下から高層ビル街へ

 今回、筆者が楽天モバイルのSIMカードを装着した「OPPO Reno A」で訪れたのは、表参道駅~原宿・竹下通り~原宿駅~山手線~新宿駅~新宿西口の高層ビル街というエリアだ。

 表参道から原宿までは商業施設の集まる屋外で、見通しの良い大きな道路もあれば、路地裏のような道もある。山手線は鉄道に乗車中の繋がりやすさがわかるだろう。新宿駅から高層ビルまでは地下を抜けていくため、途中、auのローミングとの切り替わりもわかりやすい――と考えてのチョイス。

 移動中は、ずっと「117」へ電話をかけて、通話状態を維持した。またネットワーク監視アプリを用いて、利用する周波数を確認した。auのローミングは800MHz帯で提供されているとのことで、バンド3であれば楽天モバイル、バンド18であればauと、繋がっている電波が楽天モバイルのものか、auのローミング用のものか確認した。

右上のほうに「B:L3」とある。バンド3、つまり楽天モバイルの1.7GHz帯で接続していることを示している
こちらはL18とある。バンド18、つまりauの800MHz帯に繋がっている

 またスピードテストは参考として実施したもので、グーグルで「スピードテスト」と検索したときに表示されるものを用いた。同時にau回線のiPhoneでもほぼ同時に計測し、違いを見比べた。

計測スタート

 平日の朝10時、筆者は表参道駅から原宿駅前に向かってスタート。先述の通り、「117」へ電話をかけたまま、アップルの店舗前や表参道ヒルズまで、都道413号線(表参道)を歩いてみる。見通しの良い道で、これなら電波はかなり届きやすそう。

神宮前五丁目の交差点周辺でスピードテスト

 神宮前五丁目の交差点周辺で通信速度を測ってみると、下り約20Mbpsとなった。これなら不満なく使えそう、と思う一方で、大手キャリアの回線での速度も気になり、au回線のiPhone Xで計測したところ下りで146.6Mbpsとなった。

au回線のiPhone Xでは100Mbpsを超えた

 この数字だけ見ればauのほうが優れていると言えそうだが、一般的に携帯電話サービスの通信速度は、基地局が近くにあったり、あるいは繋がりやすい(見通しやすい)場所にあったり、利用できる電波(周波数幅)が多かったりすれば速くなる。

 楽天モバイルに割り当てられている電波は、auのそれより少なく、今回は両社の基地局の場所がどのあたりにあったかまではわからない。少なくとも利用できる周波数からすると、auのほうが速くなるのは自然なことだ。

 ちなみにこのあと、幾度か行ったスピードテストでも楽天モバイル回線は数~20Mbps程度の数値になることが多かった。ユーザーとしては、今後、正式サービスとなる際の楽天モバイルの料金や、その時点での本誌をふくむさまざまな場での品質検証などを見た上で、利用するかどうか考えたほうがよさそう。

 さらに言えば、総務省が、楽天モバイルによって国内の携帯電話市場の競争を促したいのであれば、楽天モバイル向けの電波をどう増やしていくか、という議論にも期待したくなるし、楽天モバイルを軸に競争を生み出すという視点では、総務省の働きはまだ緒に就いたばかりなのだろう。

 このあと、原宿駅までの屋外は圏外にはならなかった。JR山手線で新宿駅へ移動する際には、新宿駅構内に入線する段階で圏外になってしまったが、都内の駅構内はかなりの場所でauのローミングが利用できるようで、ユーザー視点ではあまり不便を感じることはなさそうだ。

店舗1階や地下では圏外に

 原宿・竹下通りでは、コンビニエンスストア、ドラッグストア、そして100円ショップに入店して、楽天モバイルの電波がどうなるか試してみた。このうち、ドラッグストアは1F、2Fという構造で、どちらのフロアも途切れることなく利用できた。2Fは窓の外からの電波がうまく通じていたような印象を受ける。

竹下通り

 コンビニエンスストアは、あまり広くなかったが、奥までいくと圏外状態になった。通話の音が聞こえない状態になった直後に「Reno A」の画面を見ると、アンテナピクトは0~2くらいの表示が維持されたまま。そこで少し待つと通話が切れ、アンテナピクトも圏外の表示になった。また、100円ショップには地下のフロアがあり、階段を降りきった直後に通話が切れた。

 大規模な商業施設の屋内はauのローミング対象となるようだが、小売店は、いかに全国展開しているチェーン店であっても、1つ1つの店舗の電波環境は異なり、auのローミングに繋がるわけではないようだ。

ネットワーク監視アプリのひとつ「NetMonitor」で見たところ。圏外になると数字は表示されない
こちらはauのネットワークで繋がっているところ

 新宿駅に降り立ち、地下エリアの中ではしばらくはauのローミングが効いた状態のまま。階段から上がると、十数mほど、auのローミングで繋がり続けることもあれば、別の場所では階段を上る途中で切れることもあった。

 少なくともauのローミングエリアと楽天モバイルのエリアが切り替わる際には、きちんと切断される状態だ。これが本来の姿なのか、はたまた切断せずに繋がり続けてシームレスにローミングと切り替わることを目指しているのかはわからない。しかしユーザーとしては、ローミングエリアなどを気にせずに、つぎ目なく使えるほうが便利なことは間違いない。

高層ビル街でも不都合なく

 新宿西口は、都庁方面にかけて多くの高層ビルが立ち並ぶ。基本的には、こうしたエリアも高層ビルの屋上に基地局設備やアンテナが設置され、サービスエリアが形作られる。

新宿の高層ビル街。筆者が試した際には繋がった

 だからこそ、高層ビルの屋上から発射される電波は、思いもよらぬところに飛んでいったり、干渉が起きたりすることがある――これは、過去、筆者が大手通信事業者へ取材した際に教えてもらった内容だ。今回、新宿西口の高層ビル街を歩いた限りでは、楽天モバイル回線での通話は途切れず、通信速度もほどほど出ており、問題なく利用できるように思えた。

 エリアがきちんと構築されていることは間違いなく、楽天モバイル側の技術陣の苦労を感じた瞬間でもあった。その一方で、ユーザーが増える場合、通信品質(容量、繋がりやすさ、通信速度)を一定以上の基準で維持していくためには、基地局をさらに細かく展開するといった必要が出てくるだろう。

 高層ビル街に限った話ではないが、基地局を細かく設置していく際、新規事業者である楽天モバイルが1.7GHz帯だけでどこまで改善を進められるか……という点は、もう少し長期にわたって動向を見ていきたくなる。

試した場所環境接続状況
表参道屋外繋がる
原宿・竹下通り屋外繋がる
原宿・竹下通り店内地下・店舗奥で圏外
山手線移動中繋がる
山手線新宿駅到着時圏外
新宿駅地下繋がる(au網)
新宿駅西口高層ビル街繋がる

気になるのは運営体制とサービス面

 今回の試した範囲では、圏外になったり、ローミングエリアとの切り替えで切断されたりした後、通話がふたたびできるようになるまで、数十秒の時間がかかったこともあった。通話中でも困るところだが、データ通信でも地下や大型ビルなどへ出入りする度に途切れて、通信できなくなるとフラストレーションが溜まりかねない。また、路地裏に入ると繋がらないと指摘する人もいて、屋外エリアの品質はまだまだ途上と言うべきだろう。

 こうした点だけでも、少なくとも東名阪の対象エリアで暮らす人にとって、MVNO(仮想移動体通信事業者)としての楽天モバイルはともかく、自身で携帯電話ネットワークを構築するMNO(移動体通信事業者)としての楽天モバイルだけを使う……というのは、現時点では時期尚早だろう。

 気になるのは、Twitterなどでユーザーから多くの指摘が挙がっている楽天モバイル自身の運営体制だ。5000名限定とうたいながら、複数の回線を申し込めた状況もあれば、MNPの手続きや、SIMカードの配送などで不備を訴えるユーザーが少なからず見受けられる。

 携帯電話サービスを運営する事業者としての体制が、まだ万全ではないとうかがわせる話だけに、無料サポータープログラムという名のプレサービスであっても、できるだけ早い時期に対応してほしい。

 こうした点はおそらく楽天モバイル側も承知しているだろう。たとえば通信品質は、楽天だけではなく全ての携帯電話会社において、日々、改善が図られるものだ。

 今回は思っていたよりも繋がる印象を受ける場面もあれば、使いづらい印象が残る場面もあったが、時間を経るごとに、より使いやすくなっていくはずだ。同じく体制面でも改善が図られるだろう。

 楽天モバイルには今後、節目節目で、記者説明会などを通じてユーザーへ自社の取り組みをきちんと説明していただけるとありがたい。

 冒頭、述べた通り、今回お伝えした内容は、あくまでごく限られたエリアでの内容だ。引き続き、楽天モバイルの取り組みを本誌ではお伝えしていきたい。