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UnderworldのライブをGear VRで360度映像体験、渋谷パルコで

 3月12日、渋谷パルコにおいて、イギリスのミュージックグループ「Underworld」のライブを「Gear VR」でリアルタイム視聴するイベントが開催された。

Gear VRとTELEPODで360度ライブを体験
「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”」

 パルコでは、4月3日までイギリスのデザイン集団「Tomato」による展示会「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”」を開催中だ。12日にはTomatoのメンバーでもあるUnderworldによる限定ライブ「Underworld Live: Shibuya, we face a shining future」が行われた。

 そのサテライトイベントとして実施されたのが、ライブ本会場(パルコ屋上)の映像をGear VRを使ってサテライト会場で視聴するという試み「Galaxyプロデュース 360度映像ライブストリーミング」だ。Gear VRを使ったライブイベントは、国内でも過去数回の実施例があるが、海外アーティストのライブで使われるのは今回が初めてだという。

「Underworld Live: Shibuya, we face a shining future」

 会場には震動機能付きチェア「TELEPOD」で視聴するGear VRが5機、普通の椅子で視聴するGear VRが4機が設置され、来場者は5分程度で交代しながら映像を視聴するようになっていた。会場にはライブの音声が流れるとともに、壁3面にプロジェクターでライブ映像が投影され、Gear VRを装着していなくても、クラブイベントのような形式でUnderworldのライブが楽しめた。

ライブ中のサテライト会場

 本会場には客席最前列からステージ上までの範囲に3機の全周囲カメラが設置され、その映像が切り替わりながらGear VRにストリーミング配信された。全周囲カメラはそれぞれ、市販のレンズ交換式のデジタルカメラを3機組み合わせたもので、3つの魚眼映像を1つの全周囲映像に合成している。

イベントで使われていたGear VRのセット

 Gear VRはGalaxyシリーズのスマートフォンを装着して使用するが、今回は国内で発売済みのモデル(Galaxy S6もしくはGalaxy S6 edge)が使われていて、これらの機器の提供と運用は、主にサムスン電子ジャパンが行なっている。各Gear VRには、イベントに協力するBowers&Wilkins製のP5ハイファイヘッドフォンが接続されていた。

 現在一般向けに市販されているVRゴーグルの中では高解像度な部類に入るため、全周映像はかなりの解像度が必要となる。今回のイベントではライブストリーミングの安定性を重視し、フレームレートなどは低めだったが、解像度は比較的高めに維持されていた。

 ストリーム配信にはWi-Fiを使用。イベント中は複数のGear VRへ安定してストリーム配信する必要があるため、会場に設置できるGear VRの数はWi-Fiの通信キャパシティによって限界がある。サムスンによると、今回の環境では同時に20台程度まで接続できることを確認しているが、安定性などのために、来場者向けに9台、プレスや関係者向けに2台としているという。

準備中のTELEPOD

 震動機能付きの椅子「TELEPOD」は、現在VR Cruiseが開発中のもの。6機試作されたもののうち5機をサムスン電子ジャパンが購入していて、今回は残り1機もレンタルしてイベントに使っているという。

 今回のUnderworldのライブストリーミングは会場限定で、インターネット経由での配信は行われなかった。3月19日から4月3日まで、渋谷パルコ8階の体験コーナーにて今回撮影された映像のアーカイブ映像をGear VRを使って視聴できる。このアーカイブ映像もネット配信される予定は現在のところないとのこと。

ライブの様子

 サムスンにとっては、今回のイベントは、GalaxyとGear VRのプロモーションとしてだけでなく、この種のライブストリーミングシステムの実験としての意味合いもあるという。

 いまのところ、Gear VRを使ったソリューションの具体的な事業化には至っていないというが、先月バルセロナで開催されたGalaxyのグローバル発表会「Unpacked」では、数千台のGear VRを使って来場したプレスや業界関係者が同時にVR映像を視聴することに成功しているなど、Gear VRの活用方法は広がり続けているので、今後もこうした新しい試みに期待できそうだ。

白根 雅彦