ニュース

ソフトバンクモバイル宮内社長、囲み取材一問一答

 19日、ソフトバンクモバイルの2015年夏モデル発表会が開催された。プレゼンテーションの後、同社代表取締役社長の宮内謙氏が報道陣の囲み取材に応じた。主なやり取りを紹介する。なお、SIMロックに関するやり取りは、別記事(※詳細記事)でご紹介している。

――ワイモバイルにおけるヤフー色が薄くなったよう印象がある。

宮内氏
 ワイモバイルでやろうとしていたことを(ソフトバンクモバイル)全部に拡げたということ。

――孫氏が社長職だったときには、ワイモバイルで実験的なことをやる、という話だった。その方針は変わらないのか。

宮内氏
 今日は細かな点まで発表しなかったが、ワイモバイルとヤフーはある意味、一緒になってやっている。よくよく考えると、ソフトバンクモバイルも一緒になると、差別化って何だ、となったときに兄弟会社であるヤフーとIDで連携するとこんなに便利に買い物できるんだと、今回は強調したかった。

――店頭を見ると、ワイモバイルは格安スマホ会社に対抗しようとしているようだ。

宮内氏
 その狙いはある。MVNOの価格は一見安いが、電話代を含むとそこまで安いわけではない。ワイモバイルは少し低価格だが、もともと若年層を狙った。でも(実際のユーザー層は)そうでもないような。ばらけてますね。

――PHSは今後どうなるのか。

宮内氏
 今も病院や学校、構内PHSといったところニーズがあって、どんどん入っていっている。ただ、個人的には今後スマートフォン一色になると思っている。それがいつかわからないが、フィーチャーフォンも残るだろうが、どう考えても全部スマホになる。今のスマホよりもっと使いやすくなるのではないかと思う。そういう意味で言うと、PHSはスマホにアップグレードしていってもらいたいと思っている。ワイモバイルではどんどんスマホシフトを進め、PHSからiPhoneへ乗り換えられるよう施策を打っていこうとする、ちょうど矢先だ。

――スマホの利用を促進するにはどうすればいいのか。

宮内氏
 スマホユーザーの世代別グラフを見ると、60代以上が5.4%だ。日本の産業からすると60歳以上はボリュームゾーンで、スマホの楽しさを感じていないのはもったいないし、大きなビジネスチャンス。今、進めようとしているのは、各店舗にスマホのエヴァンジェリストのような人たちをどんどん配置するというもの。スタッフの教育プログラムも、ソフトバンクには、Eラーニングのサービスがある。機種別の教材を用意して誰でも学べるようにする。店頭での説明の半分以上はそこ。店舗の重要性はそこにある。

――ヤフーとの連携で、利用者数や決済額での目標は?

宮内氏
 目標はあるが、ここではノーコメント。もともと僕らはインターネットビジネスを展開してきたが、トラフィック(通信量)が肝。スマホの上でトラフィックが増えるとビジネスチャンスが増える。そういったあたりを狙っている。

――モバイルサービスと各種ポイントサービスの連携で、囲い込みが強まっている。ソフトバンクの強みは?

宮内氏
 Tポイントもしかり、東電さんもしかりだが、販売力が1つ。もう1つは兄弟会社のヤフー。そのあたりが強いのではないか。

――ヤマダ電機への出資の狙いは?

宮内氏
 いろんな意見があるだろう。ヤマダ電機さんに対して出資したことで、他の量販店にそっぽを向かれると困る。出資と言っても保有比率は5%程度。ヤマダ電機さんはスマートホームを大きく展開しているが、今後は宅内に向けて、光回線やモバイル回線、電化製品などをどうやって提供していくかが競争軸の1つになる。ヤマダ電機さんは特に住宅事業を持っていて、そういう意味でやっていこうと。ただ、ヨドバシさんも、ビックさんもケーズさんもジョーシンさんも、(ヤマダとの提携のあと)社長さんみんなにお会いしたが、理解いただけた。

――このタイミングでAndroidのフルラインアップを揃えた理由は?

宮内氏
 今まではどちらかというとAndroidはワイモバイル。ソフトバンクもやっていたが、どちらかというとiPhoneだった。これからはグーグル陣営、そしてマイクロソフト、iPhoneと、マルチにする。スマホが市場の50~60%になってきたなかで、何か1つでどーんと切り込む時代ではない。バラエティに富んだ我々の顧客に向けて提供するためスイッチしたというのが僕の考え。だからGalaxyも扱った。そういう風に順番に、秋にもと、いろいろと計画している。

――ワイモバイルブランドの位置付けと、Surface 3の関係について教えて欲しい。

宮内氏
 詳しくは午後(のマイクロソフトの会見)で発表される(※詳細記事)。ワイモバイルがヤフーと組んでパソコンのイメージがあったので、ワイモバイルで走るのが面白いとなった。ただ、Surfaceは法人からのニーズもあり、ソフトバンクの法人部隊で扱う。実は銀行での採用も決まった。やはりLTEがあるとどこでも使えるので大きい。

――Tポイントとの連携が進んでいるが、集客効果や費用対効果はどうか。

宮内氏
 どうだろうね(宮内氏の脇にいた担当者:あまり数字は出していないが、新規顧客獲得効果や解約防止についてはある一定の量が検証で出ている、とコメント)。もともとは僕らだけのポイントで、機種変更のときにしか使えなかった。でもTポイントにしたことで好意度は高まった。それが結果として解約抑止などに繋がっているかどうかは検証しなければならないが、好意度はとても高まった。

――孫氏やニケシュ氏は国内事業の舵取りにどの程度関与しているのか。

宮内氏
 孫さんは会長ですから、一応……いや、一応と言うか何というか(笑)。まぁ任せてもらってます。ただし、最重要な決定は役員会。ニケシュはソフトバンクのグローバル展開のところが中心。僕と彼は会話するが、直接、国内事業についての話はしない。

――スプリントとのシナジーを考えなくなったことで、国内事業でやりやすくなったところはあるのか?

宮内氏
 スプリントのネットワークについては、うちの大事な宮川(潤一氏)を放り込んでますから(※関連記事、これから日本の小セル技術を利用したやり方が向こうでこれから生きてきますよ。

 端末はね、本当にその当時は(共同調達でシナジーがあると)そう思ったんですよ。サムスンも向こうでは400万台、500万台売っている。でも現実は、日米両方で買うから安くなるかというと、そういうものでもない。そして日本市場もグローバル仕様も最近は受け入れられつつあるが、なんだかんだ、ワンセグがない、おサイフケータイがないとなると見劣りした感じになる。

 彼ら(スプリント)と一緒にやりながら、シャープのこれをやろう、京セラのこれをやろうといくつか成功したプロジェクトが出てきてる。でも全部を一緒にしようというのはやっぱり無理があった。それは事実。

――Pepperの一般向け販売はどうか。

宮内氏
 特に企業向けで引き合いが強い。立ち上げるとすごい数字になる。生産が追いつかないほど。一般向けも販売するが、Pepperのエコシステムが徐々にできつつある。介護や銀行、コンビニで使いたいと。そこにWatsonをリンクさせる。これは我々からすると差別化商品。スマホをどうリンクさせるかは、次の発表になるかもしれない。

――Watson利用のサービスは年度内ということだが、ビジネスモデルはどうなるのか。

宮内氏
 実際に米国でサービスを提供しているところがあり、提携して日本に持ってくる。それが一番早い。国内からもやりたいと手が挙がってきている。特に医療系データは、医師会などいろいろあって難しいが、海外ではガンの全ての症例をデータベースにしてオープンにしたものがある。初期症状をWatsonでチェックする、セカンドオピニオンをもらう、ということが始まっている。一番早いのは、海外で成功しているものを持ってきて、やり始めてから、そこに刺激を受けて東大などでの研究が動き出すと。一方、法人向けはもう始まっている。海外と日本で身体の特徴で多少の違いはあるかもしれないが、大きな違いはないと聞いている。(メディカルデータの運用ルールの違いがあるのでは? という問いに)それはあるかもしれない。でもそれで診断するわけではない。やるとしたらセカンドオピニオンや食事のアドバイスだ。

――競合他社はキャリアアグリゲーションで高速化をアピールしている。

宮内氏
 僕らのキャリアアグリゲーションは最大187Mbps。来年ぐらいには3キャリアアグリゲーションができれば、もう少しあがる。ただ、(問題は)実効速度なんですよね。220Mbpsと言っても、何人もユーザーが居たら速度が出ないのではないか。一番大事なのは実効速度。ビッグデータでエリアごとの状況を調査しており、たとえば山手線内は20Mbpsを下回らない、といった目標を定めて調整している。キャリアアグリゲーションが流行り言葉のようになっているが、どこにおいても10~20Mbpsという実効速度をキープするか。これが僕らの一番大事な仕事じゃないかと思う。

――700MHz帯の状況は?

宮内氏
 免許はいただいたが、実験している程度でまだ。これは3社とも同じはず。

――900MHz帯は? 総務省から是正しろと言われていないか。既存免許人の移行が進んでいないと指摘があると思うが。いつ頃、移行が完了するのか。

担当者
 既存の免許人と調整中で、おおむね3Gに近づく形で展開している。数字ではカバー率は出していないがだんだんと近づいてきている。今のレベルは遜色ないところまで来ていると思う。時期はまだはっきりと言えないが徐々に完了しつつある。

宮内氏
 でも今年度内だね。やっと。

――パケット通信に制限について、「スマ放題」以外で緩和する考えは?

宮内氏
 スマ放題への移行を進めたい。「スマ放題」にはそういう制限はない。過去の料金プランを残したほうがいいなど、いろんな意見があるが、現実には毎月、9割が「スマ放題」に加入している。

関口 聖