KDDI上期決算は減益も、「勢いは回復、成長起点の年に」


 KDDIは、2012年度上期および第2四半期の連結業績を発表した。

KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 2012年度上期(4~9月期)の営業収益は前年同期比0.2%減の1兆7406億円、通期予想に対する進捗率は48.6%となった。営業利益は前年同期比13.3%減の2312億円、通期予想5000億円に対する進捗率は46.2%となっている。経常利益は前年同期比10.1%減の2270億円、純利益は前年同期比43.1%減の798億円となった。EBITDAは前年同期比7.2%減の4408億円。

 2012年度第2四半期(7~9月期)の営業収益は前年同期比0.1%増の8790億円、営業利益は前年同期比8.2%増の1370億円、経常利益は前年同期比14.1%増の1368億円、純利益は前年同期比58.3%減の285億円。


 

 決算発表会に出席したKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は、2012年度上期の業績について、減収減益になったことを説明する一方で、第2四半期は増収増益に転じており、営業利益を通期で5000億円とする計画に変更はなく、「計画通りの進捗」とした。また、上期では期初計画に織込み済みの特別損失が889億円計上されているが、このうち、旧800MHz帯の周波数再編に伴う、他周波数帯に転用しない設備などについての減損損失等が882億円であることを示した。

 同社はパーソナル、バリュー、ビジネス、グローバルの4つのセグメント別でも業績を発表しているが、同社の事業の7割を占めるというパーソナルセグメントの進捗が計画通りとする一方、サービスなどを手がけるバリューセグメントは「会社計画としては、若干未達の認識」とした。ビジネス、グローバルの両セグメントは「上振れで進捗している」という。

 2012年度上期において営業利益が前年同期比で13.3%減少した要因は、ARPUの減少と、端末販売台数の減少を挙げた。同社が掲げる「3M戦略」の先行投資コストが290億円としており、こうした先行投資も利益に響いた形となっている。一方で、下期は周波数再編に関するコスト(端末移行の追加コスト)が解消したことで、前年同期比で300億円規模のコストが解消することや、売上の拡大、固定系収入の増加が続くことなどを見込んでおり、「下期は心配していない」と増益を予想している。

 上期の減益の中でも大きな位置を占めた、ARPUなどで示される通信料収入については、減収幅が半減したとし、「もう少し様子を見たい」を慎重な姿勢はみせるものの、ARPUの減少が底を打ちつつあることを示唆している。同社(au)のARPUは4480円で、このうち通信ARPUが4240円、コンテンツなどの付加価値ARPUが240円となっている。

 また、auの通信ARPU、4240円の内訳は、データ通信が2790円、音声通話が2030円、割引適用額(マイナス)が580円となっている。ARPUの4240円は直近の第1四半期と同じで、データARPUは増加傾向にあり、音声ARPUは減少がゆるやかになっている。田中社長は「特に重視するのがデータARPU。業界最高の伸びを示している」としており、データARPUの上昇率が前年同期比で12.5%増であり、ドコモの5%、ソフトバンクモバイルの4.1%と比較して優位に推移している様子を示した。

 田中社長は「auのモメンタム(勢い)は完全に回復した。先日の発表会で説明したように、3M戦略の基盤の構築は完了した。今期は成長起点の年と位置づけており、来期は成長カーブにしっかりと乗せていきたい」などと語り、前向きな姿勢を示している。


 

MNPは10月も好調、iPad/iPad miniは後日詳細を案内

 田中社長からは、足元の状況やau 4G LTEなどについても説明が行われた。解約率は第2四半期で0.65%と、周波数再編の影響を含めても業界最低水準で推移しており、既存ユーザーから支持されている様子を示す。

 また、MNPは12カ月連続で転入超過の数がナンバー1で、「iPhoneの効果もあるが、3月から提供しているスマートバリューの成果が非常に大きい」とした。加えて、「iPhone 5」が発売された9月のMNPは差し引きで9万5300件の転入超過となり、「圧勝」とアピール。9月のMNPにおいては、ソフトバンクモバイルからの転入は8月と比較して約3倍、ドコモからの転入も約2.5倍になったことを明らかにしている。さらに田中社長は、「10月は足元の数字を見ても非常に順調に推移している。10月は9月を超える数字になるのではないか」と語り、すでに10万件近い転入超過になっているという、好調ぶりを語った。


 

 3M戦略では、スマートバリューが200万件、スマートパスが250万件、au IDが1000万件と「順調に推移している」と紹介。スマートバリューについては固定回線を同時に契約することから、顧客獲得単価が減少するといった効果も現れているという。また、提携事業者からの申込みは、スマートバリュー全体の4割になっていることも明らかにされている。

 定額制でアプリを使い放題とする「au スマートパス」は、「auのスマートフォンの定番サービスになった」とし、8月のauショップの実績として、スマートフォン購入ユーザーの87%が契約するなど、広く受け入れられている様子を示した。iOS向けには、Webサービスについて9月21日よりスマートパス提供しているが、「計画よりも少なめだが、急伸している」としたほか、会見後の取材では12月までにアプリも対応させる方針を改めて示した。


 

 iPhone 5の販売状況については、販売の4割が新規契約で、iPhone 4Sが3割だったことと比較しても好調とし、「非常にいい滑り出し。10月になっても勢いが変わっていない」とした。

 なお、24日にAppleが発表した最も新しい「iPad」および「iPad mini」については、従来のソフトバンクに加えてKDDIが取り扱うことも発表されている。田中氏は報道陣からの質問に対し、Wi-Fiモデルを取り扱うかどうかも含めて、「ノーコメント」とし、詳細は改めて案内するとした。

 その一方で、タブレット端末全般については、「10インチクラスはWi-Fiモデルが8割ぐらいを占めるとみているが、7インチクラスは、(モバイル通信機能付きが支持され)Wi-Fiは4割程度になり、より外で使う傾向が強くなるのではないか。たまにしか使わない人は、テザリングができるスマートフォンとセットでもいいが、外出先でよく使う人には通信回線付きのタブレットが選ばれるのではないか」と予想を披露。「まだまだ市場が大きいとは考えていない。日本はタブレット後進国。利用シーンを提案していくことが、市場を開拓するポイントになるだろう」などとした。

 このほかKDDIは24日、住友商事と共同で、ジュピターテレコム(J:COM)を株式公開買付により買収し、JCNと統合すると発表している。この発表は決算発表より後に行われたため、決算発表の場では触れられていない。


プレゼンテーション


 




(太田 亮三)

2012/10/24 18:59