KDDIとジブリ、映画「コクリコ坂から」で共同キャンペーン


左からKDDI高橋氏、手嶌葵、ジブリの鈴木氏

 KDDI、沖縄セルラーは、スタジオジブリの最新作「コクリコ坂から」の劇場公開に先立ち、共同キャンペーンを実施する。映画の公開は7月16日からで、キャンペーン期間は7月1日~8月31日。

 今回実施される「コクリコ坂から×KDDI」キャンペーンでは、ジブリ初の試みとしてインターネットを利用した大々的なキャンペーンを行う。劇場予告編、宮崎吾朗監督のインタビュー動画をauユーザー限定で配信するほか、手嶌葵が歌う主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」の楽曲の体験版や、コクリコ坂をテーマにした待受Flashや、スマートフォン向けきせかえコンテンツも提供する。

 また、作品の舞台は1963年の横浜であることから、横浜市と連携し、セカイカメラで1963年当時の風景を実際の場所に重ねあわせて閲覧できるコンテンツが提供される。キャンペーンエリア内では「au Wi-Fi SPOT」が設置され、利便性の向上も図られる。このほか、歴史を学べるジブリ製作の横浜ガイドマップで、アナログなスタンプラリーも楽しめる。

 

ジブリ鈴木氏が語るタイアップまでの経緯

 22日には都内で記者向けにキャンペーンの発表会が開催された。KDDI 代表取締役執行役員専務 新規事業統括本部長の高橋誠氏、KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部本部長の雨宮俊武氏が登壇して説明を行ったほか、スタジオジブリ 代表取締役 プロデューサーの鈴木敏夫氏も登壇しキャンペーンの経緯などを語った。

 KDDIの高橋氏は、「去年、やっと鈴木さんとお話ができた。その時に訴えかけたのは、コンテンツを出して、ということではなく、KDDIとしてコンテンツを大事にしてきたことや、価値有る物を価値を持って伝えることが大事なのではないかと、その思いを伝えた」とジブリの鈴木プロデューサーと話をしたときを振り返る。同氏はこのキャンペーンを通じてKDDIが伝えたいメッセージとして、「人と人とが向き合う大切さ」「伝えたいという自然な気持ち」の2つを挙げ、「コミュニケーションの本質は“伝えたい”ということ。『コクリコ坂から』にはこの思いがたくさん込められており、メッセージが届けばいいと思う」と語るとともに、高橋氏が学生時代を過ごしたという横浜にも「ぜひ足を運んでもらえれば」とアピールした。

KDDI 代表取締役執行役員専務 新規事業統括本部長の高橋誠氏KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部本部長の雨宮俊武氏

 

スタジオジブリ 代表取締役 プロデューサーの鈴木敏夫氏
「コクリコ坂から」の広告イラスト。U・W旗を毎朝掲げる少女が描かれている

 ジブリの鈴木氏からは、タイアップのキャンペーンが決まるまでの経緯が語られた。当初は、博報堂の担当者からタイアップの話が持ちかけられた時は、KDDIではなくとある食品会社がタイアップ先だったという。「(博報堂の担当者が)なんでもいいから決めちゃおうというのがミエミエだった」(鈴木氏)と冗談交じりに振り返るが、「その時、高橋さんの顔が浮かんだ。なぜ浮かんだのか、分からない。高橋さんとお目に掛かる機会は数回あったが、私は顔と名前を覚えるのが苦手で、合うたびに名刺を渡していた。去年、『借りぐらしのアリエッティ』の展示会で名刺を渡したら、いい加減に覚えてください、と言われた(笑)。鋭い目で、なんか印象に残っていた。ご存知のようにジブリはケータイやインターネットとは距離を置いていたが、あの人だったらうまくいくかもしれないと感じた」と、高橋氏の人柄を起点に話が始まった経緯を語る。

 「初めてのKDDIとの打ち合わせでは、高橋さん、雨宮さんと、どういうタイアップにするかを話した。インターネットを使わないでタイアップはできませんか、と言ったら、二人の顔が曇ったのを覚えている。その時に浮かんだキャッチコピー“ケータイの無い時代、みんな幸せだった”を披露すると、全員が沈黙した。博報堂の担当者は、いいですねーと感心していたが、高橋さん、雨宮さんは眉間にシワが寄っていた」と鈴木氏は、インターネットから距離を置いてきたというジブリらしいエピソードを披露。「高橋さんはその会の最後、屋久島に友達と旅行に行ったと語りだし、ケータイが通じなかった、と嬉しそうな顔をした。その時、この人・会社とタイアップするのは間違いじゃないと思った。そうなったら、あとは方法論で、インターネットを利用することは覚悟していた。インターネットでもジブリを本格的にやっていこう、そういうことを決断するときにも、人は介在している。高橋さんと雨宮さんのコンビは、私よりも歳が若く(笑)、建前でものを言わない人たち。非常に正直な方たちだと思った」と、人との出会いや人柄で企画が進行していった様子を語った。

 鈴木氏からはこのほか、映画の見どころについても語られた。「1963年の高校生の男女の話。私が高校生の頃と同じ時代です。ひとつの見どころは、団塊の世代が送った青春というところ。明るい未来しかなかったし、ひとつの目標に向かって力を合わせていた時代だった。舞台の高校では、クラブハウスのような建物の取り壊しが決まるものの、汚くても、一室に愛着を持っていた男の子が反対する。その後、まず掃除しましょうと、男の魔窟だったところに女の子がやってきて、やがて見違えるように綺麗になる。しかし学校側は一度決めたことなので、取り壊そうとする、そこでどうするか、というお話です」と、鈴木氏の視点からストーリーの見どころを語った。

 発表会ではこのほか、手嶌葵が主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」を披露。「切ないですが、愛の歌。CMでも歌っているので、横浜の風景とともにご覧いただけたら」と紹介していた。

手嶌葵は主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」を披露

 

(太田 亮三)

2011/6/22 17:51