ウィルコム、スマートフォンと健康機器を連携できるSDKを提供


 ウィルコムは、慶應義塾大学と国際医学情報センターが共同開発したソフトウェア開発キット(SDK)を9月中旬以降をめどに提供する。スマートフォンとさまざまな医療・健康機器を連携できるもので、非商用利用では無償で提供される。加えて、スマートフォンを活用した訪問介護支援ソリューションや、医療分野における電子証明書発行システムの提供についても発表された。

 スマートフォンと健康機器を連携できるSDKでは、オープンオーバーレイ/P2Pネットワーク技術の標準技術を開発するコンソーシアム「PUCC」のメンバーから、慶應義塾大学、国際医学情報センター(IMIC)が参加しているほか、機器メーカーとしてエー・アンド・デイ、オムロンヘルスケア、スズケン、東芝ホームアプライアンス、タニタ、パラマ・テックが協力している。これにより、従来であればメーカーごとにそれぞれ開発が必要だったドライバーソフトやミドルウェアが統一的なSDKの形で提供されることになり、スマートフォンと健康機器を連携させるアプリケーションの開発が容易になる。個人の非商用利用において無償でSDKを入手できるほか、商用利用においても従来にない複数メーカーの機器をサポートしたサービスを提供できる。

 またウィルコムは、ヴィータと協力し、訪問看護師を支援するソリューション「ほうもん看護 サポート・モビ」を開発した。8月からヴィータより提供される。ASPサービスとウィルコムのスマートフォンを組み合わせたもので、デスクワークを減らすといった効果により、潜在的に存在する看護師がより働きやすい環境を構築できるとしている。スマートフォンとモバイルプリンターを用いて訪問毎に看護記録を手渡せるほか、在宅向け医療機器の浸透にも低電磁波のPHSが有効としている。

 このほか、ウィルコムは三菱電機グループから保健医療福祉分野の公開鍵基盤「HPKI」を利用するためのライセンスを取得した。医療機関などに向けてライセンスの販売を開始する予定で、これにより医療機関向けソリューションの中で医師資格の電子署名を付けた電子紹介状を作成したり、受け取った側では検証したりすることが可能になる。

健康機器とネットワークの融合、サービス開発を促進

ウィルコム ソリューション本部 副本部長の大川宏氏

 13日には都内で記者向けに説明会が開催され、ウィルコムの医療・健康分野への取り組みや、提供されるSDKについて説明が行われた。

 ウィルコム ソリューション本部 副本部長の大川宏氏は、5年前より本格化させた医療・健康分野への取り組みを説明し、高速化された次世代のネットワークでは遠隔医療といった分野でも活用できると紹介。地域の医療だけでなく行政などとも連携した採用例を挙げながら、「安心・安全を提供する会社として、今後も応援をよろしくお願いします」と医療・健康分野への注力をアピールした。

ウィルコムの取り組み各レイヤーにおける取り組み。赤丸が今回発表された内容

 スマートフォンと健康機器を連携できるSDKの提供については、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 准教授で、PUCC代表理事副会長の北川和裕氏が説明にあたった。同氏からはSDK提供に至った経緯として、「各社が作っているのは似て非なる物」と機器メーカーがバラバラに仕様を開発し提供している現状を挙げ、「サービスでの差別化まで至らず、技術で差別化する競争になっている。開発費はかかるが市場は広がらない」と指摘。ミドルウェアまでの基礎的な部分を包括できる仕様を策定し、SDKの形で提供することで、開発コストが削減され、蓄積されたデータの活用などサービス開発競争が生まれるとした。

 また、今回はウィルコムのスマートフォンを経由してサーバー上のデータベースとの連携が可能になっているが、基本的な考え方として、ほかのキャリアのネットワークでも利用できる内容であるとした。同氏は「地に足を付けた、健康増進とネットワークが融合するようなものができれば」とSDK公開の目的を語り、健康機器とネットワークの関係がSDKで促進されることに期待を寄せていた。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 准教授の北川和裕氏SDK提供の参加メンバー
スマートフォンを経由したデータの管理とオープンオーバーレイの概念会場には対応機器が展示された。USBのほか、Bluetoothなどもサポートされる
ヴィータ 代表取締役の伊藤誠一氏は、訪問看護の現状と新しいソリューションを解説したスマートフォンを利用することで、看護師の直行直帰も可能になるという
展示された「ほうもん看護 サポート・モビ」のスマートフォンとモバイルプリンター。日本語入力には医療用の辞書データも収録される

 



(太田 亮三)

2009/7/13 17:56