ニュース

三木谷氏「いつでもキャリアを乗り換えられる時代に」、楽天モバイルが転入・転出0円などの「ZERO宣言」発表

 楽天モバイルは4日、プレス向け発表会を開催。MNPなどの事務手続き手数料0円などが含まれた「ZERO宣言」を発表した。

 発表の場には楽天モバイル 代表取締役会長兼CEOの三木谷浩史氏が登壇。楽天モバイルのこれまでの歩みを説明。

楽天モバイル 三木谷氏

 同社は2020年4月にMNOとして携帯電話事業へ参入した。高額かつ複雑でわかりにくいとする現状の携帯電話プランへ「Rakuten UN-LIMIT」の1プランのみ、通話も通信も使い放題で2980円という料金を武器とする楽天モバイル。9月からは5Gも込みで料金は据え置きの「Rakuten UN-LIMIT V」に改定。同社の料金について「他社よりも71%安い」と説明する。

「ZERO宣言」

 三木谷氏はこれまでも「携帯電話業界の常識をひっくりかえしてきた」と自負。あらためて「楽天モバイルだからできる『新常識』に挑戦する」と語る。

 同社が展開する「ZERO宣言」では、これまでの利用料金が無料であることに加えて、事務手数料、MNP転出手数料を無料とする。また、SIMカード交換や再発行手数料、MNP転出手数料や契約解除料についても同じく無料となる。

 三木谷氏は、ZERO宣言を実行できる理由として同社の特徴でもある完全仮想化ネットワークにより、コストを大幅に削減できているからだと説明。これにより、運用にかかるコストを最小化し、ユーザーへの還元ができているという。

eSIM+eKYCの利用を加速

 2つ目の発表としてeKYC利用による契約手続きを11月9日から開始する。「スマホ(のキャリア)をいつでも自由に乗り換えられる時代へ。これが携帯電話のニューノーマルと思う」という三木谷氏。

楽天モバイル 河野氏

 楽天モバイル常務執行役員兼CMOの河野奈保氏は「eKYC+eSIMで新しいスマホの新しい常識を届ける」と語る。

 従来のオンライン契約の場合、ショップに行く手間は省けるものの本人確認のために自宅住所へ物理SIMカードの配送などが必要で結果的に契約から実際にサービスの利用開始までには少々のタイムラグが発生した。

 そこで楽天モバイルではeKYC利用の「AIかんたん本人確認」により、契約時の本人確認をスマートフォンのアプリ上で完結する仕組みを発表。「my 楽天モバイル」アプリをインストール後、運転免許証と自身の顔を正面、横、まばたきなどのパターンでインカメラで撮影。これによりSIMカードの配送などを待たずとも本人確認が終了する。

 対応する本人確認書類は今後、マイナンバーカードにも対応する予定としている。iOS版については11月30日を目処に対応予定という。

 加えてオンライン上の契約だけで利用できる「eSIM」と組み合わせることで、契約から利用開始までの流れを加速度的に短くする。

 このeKYCとeSIMの組み合わせにより従来、最短でも2日~1週間程度の期間が必要だったオンライン契約に比べて即時開通が可能になるという。今回の発表では、新たなeSIM対応スマートフォンとしてシャープ製の「AQUOS sense4 lite」とOPPO製の「OPPO A73」の発売が予告された。

基地局建設は5年前倒し

 楽天モバイル 代表取締役副社長兼CTOのタレック・アミン氏からは、基地局建設計画の進捗などが説明された。

楽天モバイル タレック氏

 同社では2021年3月までに人口カバー率80%以上を目指すと説明。タレック氏は「屋内外の人、建物の奥深くにいる人、すべてをカバーしなくてはいけない。基地局建設の計画を加速させるのは重要」と語り、計画は5年前倒しているとした。

 また、基地局あたりのカバー率について30~40%増を実現しているという。

 タレック氏は同社のネットワークについて、専用のハードウェアを用いず、汎用のハードウェアとアプリケーションのコンテナ化を進めることで低コストかつ弾性とスケーラビリティの確保を実現していると説明。

 また、OpenRAN(O-RAN)用いた世界初の大規模な商用ネットワークであることも強調。「O-RANが成功のために必要不可欠。日本において、我々は世界初のOpenRANの展開ができた」と語る。

質疑では

 楽天モバイルにローミングを提供するKDDIは、一部地域についてローミングを終了すると発表。インターネット上では、ローミング終了と同時に電波状況が悪くなったという声も聞かれたが、楽天モバイル 代表取締役社長の山田善久氏は、そうした事例はごく一部であるとした上で「ご迷惑をかけたユーザーの皆様には申し訳ない。早急な基地局建設や個別にMVNO端末を配るなどして対応する」と語った。

 東京や大阪の地下街や鉄道沿線では依然としてローミングエリアが多い。トンネルなど各キャリアが共同で整備する場所については、比較的早く自社回線へ移行する見通しという。都内の地下鉄に関して言えば、独自回線に切り替わっていることがおおいという。

 一方で個別のビルでは自社で整備する。テナントとの交渉次第な部分もあるためもう少し時間がかかるというが山田氏は「整備は急ピッチで進めている。今後数年以内には屋内も自社回線に切り替わる」とした。

 また、高い周波数帯を利用する5G帯は基地局整備にコストがかかる。KDDIやソフトバンクは共同で基地局の建設をすすめる面もあるが、タレック氏によれば現時点ではそのような共同での整備は検討していないという。既存の4G基地局を5Gに転用することも含めて整備していく考えとしたが、一方で山田氏は「5Gは基地局も増える。他社と協力するという可能性もある」と複数のプランがあることを示唆した。