ニュース
KDDIとナビタイム、“自転車ながらスマホ”やめたらコーヒープレゼント
自転車保険への加入も呼びかけ
2017年9月21日 14:00
KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険の3社は、自転車ながらスマホの撲滅や高額賠償への備えへの意識向上を目指し、「自転車安全・安心プロジェクト」を開始すると発表した。
自転車事故の総数は減少傾向にあるものの、対歩行者や自転車同士の事故の割合が増加傾向にあり、高額賠償事故が社会問題化している。こうした中、被害者の保護や加害者の経済的負担軽減を図るため、2015年10月には兵庫県で条例により自転車保険への加入が義務化された。その後、こうした条例化の動きは名古屋市、鹿児島県、福岡県へと広がってきている(福岡県は努力義務)。
今回のプロジェクトは、特典付きのアプリの提供やネット動画の制作、地域イベントでの啓発活動を通じて自転車の安全・安心への意識向上を図ることで3社が協力していこうというもの。自転車に乗りながらのスマホ操作を行わないことや、万が一に備えて自転車保険への加入することを呼び掛けていく。
第1弾の企画では、9月21日~10月31日の期間中、ナビタイムの自転車ナビアプリ「自転車 NAVITIME」を利用して、ながらスマホをしない状態で5km走行し、アンケートに答えると、先着5000名にローソンのコーヒー「MACHI café」をプレゼントする。同アプリでのナビゲーション機能は月額200円~で提供されているが、毎月10kmまでの音声ナビゲーションは無料で利用可能となっている。
このほか、自転車ながらスマホの危険性を訴える啓発動画「危険!自転車ながらスマホ」を公開。9月23日~24日に名古屋市で開催される「メ~テレ秋まつり2017」にブースを出展し、啓発活動を行っていく。
交通事故ワースト1返上には自転車事故の減少が不可欠
20日、名古屋市内で開催された発表会の冒頭では、KDDI 中部総支社 総支社長の渡辺道治氏が「ここ数年、携帯電話はスマートフォンの普及によって若年層からシニア層まで幅広くご利用いただくようになった。それに伴い、ながらスマホによる交通事故も増加しており、KDDIでは携帯電話の提供事業者として、ながらスマホの危険性を訴求を行っている。10月1日からは名古屋市において自転車保険の義務化も始まるため、これを機に、名古屋でこのような説明会を開催させていただいた」と述べた。
続いて登壇したのは、名古屋市市民経済局地域振興部 主幹の小崎文子氏。同氏によれば、昨日までの交通事故死亡者数は、愛知県内で137名(全国ワースト1、名古屋市内では29名)となっており、そのうち半数以上の69名が高齢者で、自転車乗車中が約2割の27名となっているという。
自転車の事故に関しては、昨年中、愛知県が約16%だったのに対し、名古屋市内は約19%と高く、全国と比較しても高い状況にあるとして、名古屋市の交通事故防止対策としては、自転車の事故を減少させることが大きな課題とされ、自転車保険への加入義務化に踏み切ったという背景が説明された。
同氏は「今回の自転車安全・安心プロジェクトは、まさしく交通事故の現状に直結したものであり、名古屋市の交通安全施策にも相通ずるものがあると感じている」と同プロジェクトへの期待感を述べるとともに、「条例は名古屋市のみの取り組みではなかなか完遂することが難しい。ぜひこの条例に関心を持っていただき、この地域から自転車事故を減少させ、自転車の事故によって悲しい思いをする方が一人でも少なくなるようご協力をお願いしたい」と協力を呼び掛けた。
ユーザーがポジティブに受け止められる工夫
次に登壇したKDDI CSR・環境推進室 室長の鳥光健太郎氏は、今回のプロジェクトの狙いについて、「交通事故の死傷者数においては、自転車事故を原因とするものは、自動車事故に次ぎ2番目に多く、事故の加害者に高額の損害賠償が請求されるケースも発生している。そのため、自転車の安全利用、自転車の安心利用の2つの観点で社会課題の解決を目指していきたい」と説明。
同氏は、「今回はスマートフォンの提供事業者であるKDDI、スマートフォンアプリの提供事業者であるナビタイム、高額請求への備えとなる保険の提供事業者であるau損保が、それぞれの知見や強みを生かし、異業種でコラボレーションすることで自転車の安全・安心利用についての社会課題にアプローチし、今までにない啓発活動を実現したい」と語る。
KDDIが独自に行った意識調査では、自転車ながらスマホの経験がある人が全体の約2割で、とくに10代、20代、30代の若年層での経験割合が高い傾向が見られた。そのうち、事故の経験がある、事故になりそうな経験をした人の割合が2割以上にのぼり、ながらスマホによる危険が身近に潜んでいることが浮き彫りになったという。
これまでにも同社では、2015年には歩きスマホ防止で阪神電鉄とのコラボし、啓発動画を制作したり、2016年にはながらスマホ運転防止でトヨタ自動車、コメダ珈琲とコラボするなど、CSR活動の一環としてスマホの安全な利用を呼び掛けてきた。鳥光氏は、「いずれもただ危険性を訴えるだけでなく、多くの人にこれらの取り組みに共感いただき、ポジティブな気持ちでながらスマホはやめようという行動に結び付くことを目指した企画だった」と振り返る。
今回のプロジェクトについては、「スマホ提供事業者として、ながらスマホの危険性をさらに強く訴求していくとともに、ライフデザイン企業として、高額請求への備えとしての自転車保険加入義務化の認知促進を図っていくことが重要」として、実施に至ったとしている。
まだまだ少ない自転車保険の認知
au損害保険 営業開発部 部長の荒尾尚氏は、「車と自転車の普及台数は、それぞれ8000万台と7000万台と、一家に1台を超える台数が普及している。車と自転車は両方とも道路交通法で規定されており、その点では共通しているが、一方で免許制度と保険が大きく違う。免許制度が無い自転車の世界では、学校を通じた交通安全教育を除けばマナー・ルールの周知について課題が多い。保険の普及率では、自動車では80%、自転車では未だ20%という状況」と、自転車保険の認知度の低さを嘆く。
そんな中、au損保は2011年から自転車保険の普及に取り組み。2013年には自動車では当たり前のロードサービスを導入。2015年の秋に兵庫県で自転車保険が義務化されたが、当時、高齢の方が加入できる商品が少なく、条例で加入義務化が決まっているのに、高齢の方が加入できないという状況があったという。そこで2016年、加入年齢を89歳まで引き上げたシニア向けプランを用意。今年は、ヘルメットの着用により死亡率が1/4に下がるというデータがあるということで、ヘルメット着用中の補償を無料で付帯化。社会的な環境の変化に合わせるように、自転車保険を進化させてきた。
荒尾氏は「保険会社として、入りやすく、サポートを手厚くすることはできるが、本当に必要なのは事故そのものが減る、無くなること。保険を使う前の事故予防、自転車の安全利用促進も重要だと強く感じている」と、au損保としてプロジェクトに参画する理由を説明した。
ちなみに、発表会には名古屋市のゆるキャラ「はち丸」も登場。ヘルメットをかぶり、自転車にまたがったイラストも作成され、自転車の安全運転や保険加入の呼びかけで使用される。