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SUPER GT 第3戦でau TOM'Sが初優勝、シリーズランキングも2位浮上

 国内最高峰のGTレースSUPER GTで2016年からKDDIがチームスポンサーとなった「au TOM'S」チーム(36号車)が、大分県のオートポリスで21日に開催された第3戦で悲願の初優勝を果たした。

SUPER GT 第3戦で初優勝を果たしたau TOM'Sの中嶋一貴選手(左)とジェームス・ロシター選手(右)

好タイムをマークするもコースアウトで終わった予選

au TOM'S LC500

 開幕戦に続いて予選でコースアウトし、「心が折れそうだった」とレース後に振り返る中嶋一貴選手。同選手は、WEC(世界耐久選手権)やSUPER FORMULAで今シーズン負け無しの無敵状態だったが、SUPER GTだけは絶不調。開幕戦では予選でコースアウトしてクラッシュし、決勝でもコースアウトし、表彰台を逃した。そんなミスが続いていただけに、第3戦では相当なプレッシャーがかかっていた。

 そうした中で行われたQ1(1回目の予選)は、チームメイトのジェームス・ロシター選手が2位で通過。Q1を通過した8台のマシンで争うQ2(2回目の予選)でマシンを引き継いだ中嶋選手は、第2セクターまでトップタイムを記録する勢いで走行するも、最終セクターでまさかのコースアウト。そのままマシンを止めてしまった。

 最終的に上位のチームに減速義務違反でベストタイム削除のペナルティもあり、予選順位は一つ繰り上がり7位となったが、チームとしては不本意な予選結果となった。

ロシター選手がごぼう抜き、終盤に事件発生も見事優勝

 気持ちを切り替えて挑んだ決勝では、スタートドライバーのロシター選手が前を走るマシンを次々にオーバーテイク。レース中盤、トップを走る100号車に追いたところで100号車がピットイン。その間に好タイムで周回を重ねたロシター選手がピットに入り、燃料補給やタイヤ交換を済ませ、中嶋選手にバトンタッチしてピットアウトすると、ピットストップ済みのマシンの中でトップでコースに復帰していた。

 中嶋選手はピットアウト直後、素早いピット作業で100号車の前に出た1号車からの激しい攻めにあう。巧みなブロックで順位を守り、徐々にタイム差が広がっていき、初優勝をほぼ手中に収めたところで事件は起きた。

 51周目、周回遅れの処理に時間を要して1号車に横に並ばれ、両車が接触。1号車がスピンしたところに後続車両が追突し、同車はリタイアに追い込まれた。生き残ったau TOM'Sもマシン前方にダメージを負い、本来の走りができなくなってしまう。中嶋選手は大きくタイムを落とすことなく走行を続けるも、この接触が審議の対象となり、初優勝に黄色信号が灯った。

 しばらくして接触はレーシングアクシデント(不可抗力)と判断され、au TOM'Sにペナルティが出ることは無かった。落ち着きを取り戻した中嶋選手は、後続とのタイム差をキープしたまま、65周のレースを走り切り、トップでチェッカーフラッグを受けた。

ドライバーとともに優勝を喜ぶ伊藤大輔チーム監督(中央)
マシン前方には接触によるダメージも

 au TOM'Sチームとしては、これが初優勝。シリーズランキングでも1位のKeePer TOM'Sと4ポイント差の2位につけた。

優勝ドライバー会見での両選手のコメント

――今のお気持ちとレースを振り返って。

ロシター選手
 最初からイベント盛りだくさんの一日だった。最初は6号車や37号車とのバトルがかなりあった。セーフティーカーが入った後が勝負だと思い、6号車を追い越すことができ、37号車については彼らには悪いが、簡単に追い越すことができ、振り返ると今日はアタック・クレイジー・モードでいた。とにかくアタックして、アタックして、トップまで行きたいという状況だったので、本当に楽しかったし、車もスピードに乗っていると思ったし、36号車は今日はツイていると感じていたので、それを思う存分活かして楽しく走らせてもらった。本当にエンジョイできた。とてもエキサイティングだった。その中で2位まで車を持っていって、その後は自分のピットストップまでに後ろとのギャップを作るというのが僕の仕事だったし、それを獲得できたということに満足している。

中嶋選手
 まず昨日の予選でミスしてしまったので、今回ばかりは心が折れかかりました。そういうことがあっただけに、あまり軽口を叩く気には未だになれないのですが、ジェームスが本当に良いスティントを見せてくれて、上がって行けるだろうとはある程度思っていましたが、まさかトップでバトンを受けるところまで来るとは正直あまり思っていなかったので、今日のレースはそれに尽きると思います。2スティント目、タイヤ的に少し未知数なところもあったのですが、ペース的には決して悪くなかったですし、トラフィックに少し引っかかり方が悪く、追いつかれましたが、それ以外は問題無く推移していたので、予定通りでした。接触については、同じレクサス同士ということもあるので残念ではありますが、こちら側としてはどうしようも無い状況でした。その後、ダメージもあり、最後まで車を持っていくのに気をつかう状況でもありましたが、とりあえずトップで車を運ぶことができてホッとしています。GTに関しては、開幕戦、今回と個人的にミスが多いので、とにかくホッとしています。

――WECの開幕戦からこれで4連勝。いろんなトラブルやアクシデントを抱えながらも、ずっと勝っているというのは、(中嶋選手)ご自身はどういう風に見ていらっしゃいますか?

中嶋選手
 前回のWECのスパは完全なる運というか、転がってきた優勝だと思っているので、正直なところ、運を使いすぎたくないなとずっと言ってきたのですが、今日のレースに関しては運を使ったのかどうなのかよく分かりませんが、とにかく今日は僕がどうこう言うより、ジェームスがいい仕事をしてくれた結果が非常に大きいと思います。自分としては反省点の多いレースなので、GTに関しては、次のSUGOに向けて、僕自身はテストには行けませんが、テストもありますし、車もまた違った状態でのレースになると思うので、しっかりそこにアジャストしていきたいと思っています。

ロシター選手
 たぶん(中嶋選手は)世界ではランキングトップじゃないかな?(笑)

中嶋選手
 結果だけ見たら、そうです(笑)。

ロシター選手
 1年にSUPER GTもSUPER FORMULAもWECも優勝するなんて初めてなんじゃないの?

中嶋選手
 2013年にもあったけどね。

――ロシター選手にとって一番のピンチは?

ロシター選手
 レースの序盤で6号車と37号車の後ろを走っていたんですが、レクサス同士なので慎重にいかなければいけませんでした。僕にはスピードがあったけど、(6号車の)アンドレアは(37号車の)ニックと非常にアグレッシブにバトルしていて、それに絡まないように心を落ち着かせて走らないとと自分に言い聞かせていました。追い越してからはリラックスして自分のレースができたと思います。

――中嶋選手が1号車と当たった瞬間、どう思いましたか?

ロシター選手
 実は僕自身はかなりリラックスしていました。サイド・バイ・サイドになるのはレーシングインシデントとしてGTでよくあることですし、SUPER GTではドライバーは互いにリスペクトしてクリーンに戦っていると、5年間走ってそう感じて安心しています。今回のインシデントに関しては、一貴にはどこにも行き場が無かったので、とくにペナルティが出るとは考えていませんでした。経験上、これはレーシングインシデントということで安心していました。

――3シリーズでタイトルを取れる見通しは?

中嶋選手
 レースをやる以上はチャンピオンを取ることがドライバーの仕事なので、それが順調に行っているという実感もあるし、このように良いスタートが切れた以上、やはりタイトルを狙っていかなければいけないとは、もちろん思っています。ただ、まだ5月ですし、先のシーズンの方が全然長いので、気を緩めることなく戦っていかなければいけません。GTに関しては自分自身が良い仕事をしているかというと、そんなことは全然ないですし、反省点も多いので、これからもっと努力していかなければいけない部分の方が多いなと思っています。

――最後、右のフロントが壊れていましたが、車の状況はどうだったのでしょうか。

中嶋選手
 ダメージの影響も多少あって、ペースが上げられなくなりましたし、ペースが上がらなくなると余計に(タイヤかすを)ピックアップしたりして、タイヤの状況も非常に厳しい状況になっていたので、上げたくても上げられないけど、ゆっくりも走れないという難しい状況でしたが、幸い後ろとのギャップも大きく、後ろもペースも速くはなかったので、トラフィックとイエローフラッグだけマージンを取って走っているような状態でした。それをやるとまたピックアップしてくるので、最後の2周ぐらいはそっちの方が大変でした。

――次戦、SUGOに向けての意気込みを。

ロシター選手
 テスト中にはテレビで(中嶋選手が出場する)ル・マンを見て応援したいですね(笑)。彼がトヨタに優勝をもたらしてくれることに期待しています。一番いいタイヤをテストで見つけて、次のレースも勝てるようにしたいですね。

中嶋選手
 SUGOのテストには行けませんが、SUGOのレースでは(燃料)リストリクターとかウェイト(ハンデ)とか、いろいろ状況が変わってはきますが、クルマのベースとしては本当に良いものがあると思うので、その中でも前に行けるように頑張りたいと思います。SUGO自体、走っていて楽しいサーキットなので、良いレースがしたいと思います。