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次期「Android O」の新機能は? 新興国向けのAndroid Goとは――Google I/O 2017レポート
2017年5月22日 11:10
グーグルは5月17日から本社横にあるShoreline Amphitheatreにて、毎年恒例の開発者向けイベント「Google I/O 2017」を開催している。
基調講演ではAndroid OSの次期バージョンとなる「Android O(アンドロイド オー)」についての詳細が語られただけでなく、その後、本社で製品の担当者が各国メディアとのラウンドテーブルに応じた。
「Android O」のテーマとは
Android O について、Androidエンジニアリングのバイスプレジデント、Dave Bruke氏は「Fluid ExperiencesとVitalsがテーマになっている」と語る。
Fluid Experiences(フルイド エクスペリエンス)とは「流れるような操作体験」と言えばいいだろうか。たとえば「Android O」ではYouTubeなどの動画を小さな窓にして、他のアプリを使用している間も視聴できる「Picture in picture(ピクチャー イン ピクチャー)」機能を採用。また、通知が届いた際に、アプリのアイコンに赤い印が表示される「Notification dots(ノーティフィケーション ドット)」にも対応した。
ほかにも、Web上でIDやパスワードの入力を自動的に行ってくれる「Autofill(オートフィル)」や、メールなどに記載されている電話番号やメールアドレス、URLを簡単に選択できるだけでなく、すぐにアプリを起動させることのできる「Smart Text Seleciton(スマートテキストセレクション)」も備える。
これらの機能はすでにアップルのiOSでは対応しているが、ようやくAndroidでも追いついた格好だ。
一方、プロダクトマネジメントのディレクターであるStephanie Saad Cuthbertson氏は「Vitals(バイタル)では3つの進化点が特徴にある。そのひとつがセキュリティの向上だ」という。
Android Oでは「Google Play Protect」が導入されるという。これは「Google Playでは機械学習により、毎日、ネットにつながっているすべてのデバイス、さらに500億のアプリをスキャンし、安全に使えるか検証を行っている」(Cuthbertson氏)というものだ。Google Playで配信されているアプリであれば、ユーザーに対して安全性は相当高い、というわけだ。
2つめの進化としては「OSの最適化」が行われ、アプリの起動速度が2倍、速くなる。さらに3つめとして開発ツールが進化し、ユーザーがどれくらいクラッシュに遭遇しているか、という確認ができるようになる。
Android TVが進化する方向とは
Android Oは、Android TVも進化させる。
Android TVはAndroid Oにバージョンアップすることで、ホーム画面のユーザーインターフェースが一新される。Android TV担当のSascha Prueter氏は「ユーザーがコンテンツを探しやすくなるように進化させた。さまざまなコンテンツやアプリをひとつの画面で確認できるのが最大の特徴だ」と胸を張る。
動画再生のアプリが縦に並ぶと共に、それぞれの横にはお勧めの動画が、プレビューとして再生された状態で表示される。これまでのAndroid TVは、アプリのアイコンだけ、もしくは静止画のサムネイルしか表示されないため、中身が伝わってこないというのが欠点であった。
さらにAndroid O版のAndroid TVでは次に見るべき動画が「Whach Next」として、一覧で並ぶようにもなった。
「毎日や毎週、新しいエピソードが配信される番組が一発でわかり、すぐに再生できる」(Cory O'Connor氏)という。
Android Oになることで、Googleアシスタントが便利に使えるようになる。
「“OK Google”と言ってから作品名をいえば、どの動画配信サービスで、何話、配信されているかがすぐにわかる。さらにそこから再生するのもGoogleアシスタントに話しかければいい」(O'Connor氏)
Googleアシスタントはテレビの操作だけでなく、「今日、傘が必要かとか、勤務先まで何分で到着できるか、といったことも聞くことができる」(Prueter氏)という。
Googleアシスタントはスマホやスピーカー型のGoogle Homeが注目されているが、テレビに話しかけても音声で様々な情報を引き出すことができるのだ。
低スペックなスマホでも動く「Android Go」
今回、グーグルはAndroid Oと共に新たなプラットフォームとなる「Android Go」を発表した。
主にインドなどの新興国向けのプラットフォームで、低いスペックの端末で動くことを目標としている。実際、RAM容量は1GB以下を想定しているようだ。
開発に着手した背景をBruke氏は「AndroidにはサムスンのGalaxy S8のようなハイエンド機種があるものの、製品の幅はとても狭いと思っていた。Android Goを作ることで、ターゲットを拡大していきたい。いまのAndroidは月間のアクティブユーザーが20億となっているが、次の20億を狙うには必要不可欠なプラットフォームと言える」という。
「新興国を狙う」という戦略は、グーグル以外の企業がすでに着手しつつあった。
「新興国向けの軽量版のアプリをつくるところが増えてきた。Facebookもそうだし、スカイプもそうだ。グーグルもYouTubeの軽量版を作ることにした。デバイスとともにアプリ本体も軽量で、さらに流れるデータ量も少なくないと、新興国のユーザーに使ってもらえない」(Bruke氏)。
実際、アプリ本体のAPKのサイズは10MB以下となるようだ。さらにオフラインで利用でき、低電力でメモリ効率の良いことが条件となるという。
これまで高機能化を進めてきたAndroidであったが、さらにシェアを拡大していくためには、これまでとは逆の進化である、こうした超ローエンドの端末が増える施策が必要だったようだ。