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西日本で通信・防災の新拠点となる「KDDI大阪第2ビル」初公開

 KDDIは、通信設備を収容し、西日本での災害対策でも要となる「KDDI大阪第2ビル」を報道陣関係者向けに公開した。

KDDI大阪第2ビル。左は既存のKDDI大阪ビル

 KDDI 理事 関西総支社長の松尾恭志氏は、大阪第2ビルが災害対策を念頭において建設された、通信設備を主体としたビルであることを紹介。22年前の阪神淡路大震災をはじめ、いくつもの大災害を経験したことで、さまざまな工夫が凝らされていることを、各所をまわりながら解説した。

KDDI 理事 関西総支社長の松尾恭志氏

 KDDI大阪第2ビルは、既存の「KDDI大阪ビル」のすぐ隣に建設された。2015年7月に竣工し、通信設備やオフィスフロアはすでに稼働中で、現在は非常用電源設備の設置が順次行われている。

 20階建てで、13階までは通信設備や電源設備を収容し、14階より上が同社のオフィスフロア、屋上には周辺地域(大阪ビジネスパーク)で唯一という非常時用のヘリポートも備えた。今後は自衛隊のヘリの発着試験なども検討されている。

 ビル内には通信網を管理する大阪テクニカルセンターも設置されており、東京の設備と冗長化する形で、非常時には東京に代わって全国の通信網を制御できる。

 港湾地区ということもあり、津波の被害に耐えられるよう、大阪第2ビルの非常用電源設備は3階に設けられている。ここには、非常用発電機では国内最大級、KDDIでも大阪第2ビルだけにあるという6000kVAのガスタービンエンジンが7台設置される予定で、現在は3台の設置が完了している。燃料タンクは地下に埋設され、7台が48時間稼働できる約10万5000リットルの燃料(A重油)を備蓄する。

屋上のヘリポート
排熱シャフトが屋上まで伸びている
3階の非常用電源設備のフロアには、吹き抜け構造からガスタービンエンジンなどをクレーンで吊り上げて搬入する
3階の天井にあるクレーン
3階のガスタービンエンジンのフロアから出ている排熱ダクト。ここから屋上まで続く
6000kVAのガスタービンエンジン
試運転のようす
備蓄タンクから汲み上げられた燃料

 既存の大阪ビルも通信設備を備え、堅牢な「耐震構造」で建てられているが、大阪第2ビルは耐震構造に加えて4種類の「免震構造」を組み合わせ、大地震への耐久性を高めている。また、隣の大阪ビルと通信回線や電源を融通し合えるような連携の仕組みも取り入れられている。

 このほか大阪第2ビルには高品質データセンター「TELEHOUSE OSAKA 2」も収容されており、KDDI関係者用とは別に入口が設置されている。データセンターの入口にはIDカードと生体認証を組み合わせたゲートが設置され、契約した企業のスタッフは24時間365日いつでもデータセンターに入室できるようになっている。

災害対策はデータ通信への対応が重要に、ドローンの活用も本格化

 KDDIが取り組んでいる災害対策については、KDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部 特別通信対策室長の木佐貫啓氏から解説された。なお、すでに本誌では、熊本地震への対応を総括した木佐貫氏へのインタビュー記事を2016年9月に掲載している。

KDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部 特別通信対策室長の木佐貫啓氏

 大阪際2ビル見学会での説明では、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)と、大きな震災が起こった年で、通信のトレンドが変化してしまっていることが改めて指摘され、熊本地震の発生後には通話よりもデータ通信のトラフィックが大きく伸びるなど、事前の対策とは異なる傾向が現れたことが反省点として触れられた。

 熊本地震では、ドローンを活用し既存の基地局設備の復旧の迅速化を図るという取り組みが行われたが、これは、震災後にデータ通信のトラフィックが大きくなる中で、衛星通信による臨時復旧だけでなく、無線エントランスを活用した既存の基地局を利用する復旧作業も、より迅速化が求められていることが関係している。

 ドローンは無線エントランスの見通し確保のために利用されたが、KDDIとして事前に運用方法を決めていたわけではなかったため、多くの手続きが発生し、検討を始めてから復旧させるまでに2週間ほどかかってしまったという。現在はドローンを飛行させる許可などを含めて対策を整えており、半分ほどの時間で対応できるのではないか、としている。

 また、熊本地震でも「00000JAPAN」として提供された、非常用の無料の公衆無線LANサービスについても、熊本地震の当時、機材は用意できていたものの、設定や配備の取り組みが遅れていたと振り返った。こちらは、新たに用意された、スーツケース型で持ち運べる専用パッケージなどが公開された。これらは2016年度中にも全国に配備されるという。

 このほか見学会では、LTEや衛星通信網にも対応した、遠隔作業支援システム「VistaFinder Mx」なども披露された。