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1秒を切り取った“動かせる写真”「ポラロイド・スイング」日本に登場

傾きやタッチでヌルっと動く新感覚の写真

 ポラロイド・スイングは、1秒間の動きが記録された“動かせる写真”を撮影できる写真SNSアプリ「ポラロイド・スイング」の日本市場での配信を開始した。iOS向けで、利用は無料。Android版も予定されているが、提供形態は現在未定。

ポラロイド・スイング

 アプリ「ポラロイド・スイング」で撮影された写真には1秒間の“動き”が記録されており、端末を傾けたり、画像をタッチしたりする動作に連動してリニアに1秒分を動かせるという、新感覚の写真が撮れる。同社は「スチール写真の構成力と、常に動いている世界の生命感を併せ持った画像ができあがる」と説明している。

 一般的な動画のような“再生速度”という概念はなく、動きの速さは、端末を傾ける速さ(スワイプ操作のすばやさ)などの、手元の動きとリニアに連動。勝手に“動く”のではなく、自分で“動かせる”というインタラクティブ要素が強く、早送り、スローモーション、巻き戻し、それらを行ったり来たり、といったような表示を、手元の傾きやタッチ操作だけで自在に再現できる。PCでみるWebサイトの場合はマウスオーバーでこれらの操作ができる。(ポラロイド・スイングのWebサイト

 技術的には、1秒間の動画を60fpsで撮影した後に、独自アルゴリズムで補完フレームも生成。写真クオリティの画質はそのままに、端末を傾けると「写真がヌルヌルと動き出す」という見た目になっている。アプリの撮影機能では、フィルターを撮影前のファインダー画面で確認したり、撮影後にフィルターの適用も可能。記録した1秒の動きを逆再生に設定することもできる。

 現在、「ポラロイド・スイング」で撮影した「インタラクティブフォト」は、アプリ上や、ポラロイド・スイングのWebサイトにアップロードすることで閲覧できる。アップロードした写真は、Instagram、Twitter、Facebook、LINEで共有も可能。

 アプリ「ポラロイド・スイング」のニュースフィードには、ほかのユーザーが公開した写真が掲載され、スクロールに連動して“動き”も順番に再生されていくようになっている。

ポラロイド・スイングのトミー・スタッドレン氏に魅力を聞いた

ポラロイド・スイング 共同創業者のトミー・スタッドレン氏

 ポラロイド・スイング 共同創業者のトミー・スタッドレン氏は、アジアで最初に配信する地域として日本を選んだ理由について、「革新的なツールをすばやく取り入れる日本人の傾向や、ポラロイドブランドの強さを考えれば、当社の最大の市場になる可能性もある。この技術にも魅力を感じてもらえるのではないか。我々が想像もしていないようなケースで使ってもらえるのでは」と期待を語る。

 「動きのある画像」という意味ではGIFアニメや「Vine」などの短時間の動画SNSがおなじみだが、ポラロイド・スイングは「動きが非常にスムーズで、静止画のようなクオリティ。(写真や写真家のような)アーティスティックな感覚を持てる」(スタッドレン氏)と、写真の感覚、写真の作法で撮影できる“リビング・フォト”(生きている写真)である点が最大の特徴とする。「今ではみんなが写真家だが、動画はむずかしい。ある動画SNSでは、8割の動画が2割のユーザーによって作られているというデータもあった」ともしており、写真の感覚で撮影できる点は重要になっているという。

 また、GIFアニメや他の動画フォーマットとは異なり、自動的に再生されるのではなく傾きやタッチ操作で自ら動かすため、「没入感をもって、世界に入り込める」のも特徴になっている。もっとも、GIFアニメを駆逐するわけではなく「住み分けができるのでは」とも語っている。

 フレームの補完や独自アルゴリズムといった技術はAppleの元エンジニアが開発しているとのことで、関連する特許も取得済み。さらに、Instagramのロゴとオリジナルフィルター「Rise」をデザインした写真家、コール・ライズ氏がチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるなど、人気や実力のあるスタッフが集まっている。

 今後の機能的なフィーチャーについては、端末に保存されている、すでに録画した動画からポラロイド・スイングの写真を作れる「インポート機能」を検討中とのこと。これは2017年中の導入を検討しているという。同社はサンフランシスコに研究開発部門も設置しており、コンピュータビジョンのエキスパートが在籍。あらゆる実験が行われ、ソフト・ハードを問わず研究しているとのことだった。

プロフィール紹介画面も“スイング”

Android版はプリインストールを検討中

 現在はiOS版のみの提供だが、Android版については「大手を含めて、多くのAndroidスマートフォンのメーカーから独占的に搭載したいとアプローチをうけている。当初は完璧に動作する形で、ひとつのモデルに搭載し、その後に市場全体に広げていきたい」と機種数の多いAndroid版の提供方針を示している。

 なお、交渉中のいくつかのメーカーには、世界的な大手から、日本のスマートフォンメーカーも含まれているとか。どこになるかはまだ決定していないが、Android版のローンチは「2017年を予定している」とのことだった。

企業ブランドの広告戦略でも活用

 無料アプリのため、収益源についてもスタッドレン氏に問うと、アプリ上の「ニュースフィード」には、将来的に、雰囲気を壊さない広告の導入を検討していることが明らかにされた。

 一方で、現在でもいくつかのブランドの広告戦略で「ポラロイド・スイング」が採用され、人気を博しており、こうした連携が収益になっているとのこと。同社が独自に学術的な観点で調査したところでは、GIFアニメや動画、静止画などのSNSで拡散される既存のメディアフォーマットと比較して、ポラロイド・スイングは5倍のエンゲージメントが発生しており、目新しさも手伝って、広告クライアントの評判も高いようだ。

 加えて、同社に参加している前述のコール・ライズ氏はInstagramで100万人にフォローされており、同氏やポラロイド・スイングに共感したユーザーコミュニティにも、TwitterやInstagramなどで75万人などといった膨大な数のフォロワーを抱えるユーザーがおり、こうした拡散力も、広告を展開する企業・ブランドには魅力になっているとしている。