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KCCS、携帯のようなエリアのIoT通信サービスを展開へ

仏SIGFOXのIoTネットワークを日本で構築

 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、仏SIGFOX(シグフォックス)が提供しているIoTネットワークの通信規格およびサービス「SIGFOX」を、日本で独占的に展開すると発表した。2017年2月から、東京23区を皮切りに順次サービスを開始する予定。

 日本での展開にあたっては、具体的には1日50回以下の通信頻度で、数万台規模の場合、1回線あたりの利用料は年間で1000円を切る価格帯を計画しているという。

 「SIGFOX」は仏SIGFOXが開発・提供しているUltra Narrow Band(UNB)の通信サービスで、長距離・低消費電力が最大の特徴。IoT向けに特化し超低消費電力で駆動でき、通信速度は上りのみで100bpsと低速だが、日本でも免許不要で利用できるようになっている920MHz帯を利用し、別途構築する基地局は数十kmのエリアをカバーするなど長距離の通信に対応している。グローバルで共通のIDが発行され、末端の通信モジュールは他国で展開されているSIGFOXのエリアへ国際ローミングも可能。

 KCCSは、日本で独占的にSIGFOXを展開できる契約をSIGFOXと締結し、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク事業に参入する。SIGFOXに対応する基地局の構築など、KCCSはネットワークインフラの構築や通信サービスの提供を担当し、KCCSと契約するサービスプロバイダーが、エンドユーザー向けに通信機器やサービスを提供する形になる。日本でのSIGFOXエコシステムのパートナー企業として、サービスプロバイダーを含む40社がすでに名乗りを上げている。

 またKCCSと資本関係のあるKDDIからは、IoTサービスの開発や基本性能の検証に加えて、SIGFOXの活用も推進していくとしており、KCCSのインフラ構築でもKDDIの協力が検討されている。

 他国では、SIGFOXは欧米を中心に24カ国で提供されており、2018年までに60カ国で展開される予定。競合するLPWAネットワークの規格やサービスと比較して、グローバルで統一したサービスが提供され、国際ローミングが可能な点が挙げられている。

低コストで電池駆動、「制約から解き放ちたい」

 9日には発表会が開催され、登壇したKCCS 代表取締役社長の黒瀬善仁氏は、IoTネットワークの課題として、コスト、電源、エリアの3つを挙げ、「SIGFOXで3つの制約から解き放ちたい」と意気込む。

KCCS 代表取締役社長の黒瀬善仁氏
IoT市場の予測について
通信規格におけるSIGFOXのポジションと3つの特徴

 同氏によれば、SIGFOXでは、100万台以上で1日2回以下という通信頻度なら、1回線あたりの料金は年額100円といった低価格を実現できるとする。日本での展開にあたっては、具体的には1日50回以下の通信頻度、数万台規模の場合で、1回線あたりの利用料は年間1000円を切る価格帯を計画しているという。

 通信モジュールも小型で、1チップが150円程度からと安価で、センサーと通信モジュール、数年間の通信料込みで3000円などといった、売り切りタイプでの展開も可能で、これらで「通信の売り方も大きく変わる」とした。

 低消費電力も特徴で、電池で5年間の駆動といったレベルが可能という。これにより、IoTセンサーの展開にあたって商用電源を確保する必要がなくなり、実質的には充電なども不要とする。

 エリアについては、SIGFOXの通信モジュールが接続する先として、携帯電話のようなエリア構築が必要。

 当初は東京23区でスタートし、2017年3月までに神奈川県の川崎市、横浜市、および大阪市でサービスを展開。2018年3月までに政令指定都市を含む主要都市でサービスを展開する予定としている。

 エリアの全国展開にあたっては、山間部などを含めて面積を重視していくのか、人口カバー率を重視していくのかは、今後の事業の発展をみながら判断していくとしている。

 SIGFOXの基地局は、KCCSがビルの屋上や鉄塔で展開していく。基地局のロケーションではKDDIとも協力を検討していく方針。基地局数は、東京23区と川崎市、横浜市、大阪市での展開時点で、120局程度になる見込み。

「遠距離をカバー、ローコストに注力」

 SIGFOX SINGAPORE アジア太平洋地区 プレジデントのRoswell Wolff氏は、日本は今後世界でトップ3のIoT市場になり、世界で3兆ドルと予想されるIoT市場の6%が日本で展開できると期待を語る。

SIGFOX SINGAPORE アジア太平洋地区 プレジデントのRoswell Wolff氏

 SIGFOXはすでに欧州で500億人、エリアにして85%をカバーしているとしており、広範なサービスエリアを展開できていることや、早期に展開を開始したことで、グローバルでも類を見ないIoT専用のネットワークを構築できていることが強みとする。

 「遠距離をカバーし、ローコストに注力している」とWolff氏が語るように、パートナー企業と協力して安価な通信モジュールが展開されており、通信モジュールで3ドルを切るようなものも開発中という。ヘルスケア、ロジスティクス、スマートメーター系などが特に活用が期待されている分野とした。また国際ローミングが可能な点にも触れ、「ひとつの契約でグローバル展開できることが重要になる」とした。

 ほかにも、BluetoothやWi-Fiと異なり、ペアリングや接続設定が不要で簡単に利用できることから、「シンプルで多くの人に使ってもらえる」とコンシューマーのユーザーにも使いやすいものになることをアピールした。