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ドコモの2016年度上期決算は増収増益、吉澤社長「ガイドライン」の影響やiPhoneの販売状況を語る

上期決算を解説するドコモの吉澤社長

 NTTドコモは、10月28日、2016年度上期の決算を発表した。営業収益は2億2883億円、営業利益は5856億円で、それぞれ対前年同期比3.3%増、26.6%増となる。営業利益をセグメント別でみると、通信事業が5247億円、スマートライフ領域が609億円と、いずれも対前年同期比を大きく上回っている。代表取締役社長の吉澤和弘氏は、「増収増益の決算だった」と自信をのぞかせた。

決算概況
主な財務指標
セグメント別の実績

上期は増収増益で、通期の業績予想も上方修正

 増減の要因を見ると、モバイル通信サービスやドコモ光からの収益が大きく伸びていることが分かる。モバイル通信に関しては、「昨年6月に導入した『ずっとくりこし』の減収影響がなくなり、『カケホーダイ&パケあえる』の拡大で、ARPUの回復が継続している」(同)という。営業費用では、コスト効率化に取り組んだ結果、前年同期比で497億円が減少した。これらの差し引きに加え、償却方法の変更などで5856億円の営業利益を達成した。

営業利益の増減要因
契約者数は増加

 オペレーションの状況を見ると、契約数は6%増の7249万件になり、スマートフォン、タブレットの契約数も11%増え、3409万にまで上昇した。一方で、「解約率は0.58%と、引き続き、低水準で推移している」という。9月末時点では、カケホーダイが3342万契約、ドコモ光が253万契約となり、吉澤氏は「おおむね通信サービスのオペレーションは順調」(同)と評価した。

「カケホーダイ&パケあえる」や「ドコモ光」も順調
ARPUは新料金プラン導入前に水準に回復しつつある

 また、ドコモ光については、「ケーブルテレビの事業者からご要望があり、12月以降、あらたにケーブルテレビ事業者とドコモ光の協業を開始する予定」(同)と発表。シー・ティー・ワイやケーブルネット鈴鹿と提携し、「ドコモ光 タイプC」の提供を開始する。

スマートライフ領域の営業利益

 dマーケットについては、9月末時点で1534万契約となり、「第1四半期は季節要因で成長したが、その後は堅調に回復している」(同)とした。直近での契約者数は、1580万にまで拡大しているという。また、dカードは1697契約となり、10月には1700万契約を突破。新たにdカードプリペイドも開始する予定だ。

dマーケットも順調にユーザー数が増加
金融・決済サービスも好調だ

 dカード関連では、10月25日にApple Payでのサービスが開始している。これについて吉澤氏は、「かなりのお客様に設定していただいている」と述べ、「iPhoneで非接触決済をしたいという要望は大きいと思っている。Androidではすでにやってきたが、iPhoneがそういった機能を持ったことで、決済そのものや金融、クレジットのサービスをさらに拡大させ、収益、利益に貢献するところまでもっていきたい」と意気込みを語った。

 好決算を受け、ドコモは業績予想の上方修正を行っている。営業利益は当初予想の9100億円から9400億円に、純利益は6400億円から6550億円に見直しを入れた。一方で、コスト効率化に関しても、800億円から1000億円に増加させている。

通期業績予想の見直しを発表した

「ドコモ 子育て応援プログラム」を発表

 決算発表に続けて、吉澤氏は「ケータイの料金については、満足向上にこれまでも務めてきた」と語り、カケホーダイ&パケあえる導入以降の各種施策を解説。9月には「ウルトラパック」や「ウルトラシェアパック」をスタートさせ、10月19日の記者会見でLTEケータイ向けの新料金プランを発表したことを改めて説明した。これに加え、11月1日からは「子育て家族を応援する取り組みを追加する」(同)という。

料金関連の施策を振り返った
子育て家族を応援する、3つの取り組みを発表

 11月1日から新たに導入するのが、「ドコモ 子育て応援プログラム」だ。吉澤氏はドコモが家族を重視している方針を明確に打ち出し、「子育て中のご家族がより安心して、便利に楽しく過ごせる3つの取り組みを行いたい」として、その内容を語った。

「ドコモ 子育て応援プログラム」

 子育て応援プログラムには、3つの特典がある。1つが子どもの誕生月にdポイントが3000ポイントもらえるというもの。その目的を吉澤氏は「高島屋のようなdポイント加盟店や、Combiのようなdケータイ払いプラス加盟店で誕生日プレゼントやケーキのご購入にお使いいただきたい」と語る。

 2つ目の特典が、55GBのクラウドオプション。通常は月額400円で提供している50GBのオプションサービスを無料にし、「お子さんが小学校を卒業するまでの写真や動画をクラウドに保存いただける」(同)ようにした。このクラウドにアップロードした写真でフォトブックを作成できるというのが3つ目の特典になる。子育て応援プログラムは、子どもの小学校卒業まで適用される。

 この子育て応援プログラムとは別に、キッズケータイ向けの料金も新設。親の回線に月額500円プラスすることで持てる「キッズケータイプラス」を発表した。さらにNPO法人ひまわりの会と協力して「母子健康手帳アプリ」の提供も10月28日より開始。アプリに関しては「ドコモ契約者に限らず、どのお客様でもご利用いただけるキャリアフリーで提供する」(同)という。

キッズケータイ向けの新料金プラン
母子健康手帳アプリの提供も開始

質疑応答ではガイドラインの影響などが聞かれる

 質疑応答では、4月1日に施行されたガイドラインの影響や、MVNO影響、iPhone 7、7 Plusの販売状況などの質問に吉澤氏が答えた。

 ガイドラインによる実質0円禁止の影響については、「販売の減はあまり出ていない」(同)という。4月1日にガイドラインが始まり、「第1位四半期は少し計画に対して落ちたと思っていたが、第2四半期位になってからはほとんど計画通りで、ものすごく影響を受けたということはない」(同)という。

 一方で、「ガイドライン後にはワイモバイルやMVNOに対するポートアウトの影響はある」(同)といい、端末の販売台数ではなく、ユーザーがより安価なキャリアに乗り換える形で影響が出ていることを示唆した。

 ガイドラインを受けた総務省のフォローアップ会合では、SIMロック解除に関する議論が行われており、これを受け、ソフトバンクはSIMロック解除ができない期間を短縮する方針を明かしている。これに対し、ドコモは「以前解除した方は6カ月待たずにできる。また、MVNOの方は、(SIMロックを解除しないまま)端末を変えずに移ることもできている」(同)ため、すぐに期間を短縮する予定はないという。吉澤氏は「6カ月を何カ月にすればいいのかは、なかなか難しい。不正利用もある。その辺の状況を見極めながら検討したい」と語った。

 一方でドコモは、ガイドラインには“抜け道”があると見ているようだ。吉澤氏は「端末購入を条件としない奨励金のようなものを出して安くしたり、土曜、日曜などの休みのときだけ購入を条件としない奨励金が出たり、上位データパックを契約すると奨励金が出たりする」と現状を解説。「そういうものをやって端末を安くることがまかり通るような抜け道はなくした方がいい」(同)とした。

 端末価格は、今後、徐々に上がっていく可能性もありそうだ。吉澤氏によると「実際に我々がメーカーから購入するときに、それなりの値段がある。それを1万円で売るというのは、もう少し是正できるのではないか。ドコモとしては、そういうものを検討している」という。一方で、「すぐに2万円、3万円、4万円というふうにはならないと思う」(同)というように、価格はある程度時間をかけて上げていく方針だ。

iPhoneの販売状況

 iPhone 7、7 Plusの販売状況に関しては、「ジェットブラックの入荷数が少なく、当初は6sに比べ、ちょっと少なかった」(同)といい、需要と供給のバランスが取れず、販売台数に影響を与えたことを明かす。その後、「入荷は潤沢になりつつあり、今時点では6sを7が抜いている」といい、販売は好調のようだ。ただし、ジェットブラックについては「まだ予約が残っている」(同)というように、希望するユーザーに行き渡っていないこともうかがえた。

 iPhone 7、7 Plusに合わせて導入したウルトラパック、ウルトラシェアパックについては、「移る方がそれなりに多いが、シェアパックはそこまでたくさんではない」(同)という。開始から間もないこともあり、「ウルトラパックを契約すると有利になる方がいて、そういったところから入られている割合が多い」(同)という。また、「元々ガマンしてそこまで使っていなかった方が入るようになると、ドコモのARPUが上がる」(同)といい、ARPUにとってプラスの影響が出るのは、やや時間がかかる見通しとなる。