インタビュー
Windows 10 Mobileの今とこれから
日本マイクロソフト、VAIO、マウスコンピューターに聞く
2016年6月2日 11:01
「COMPUTEX TAIPEI 2016」に合わせ、6月1日、日本マイクロソフトはグループインタビューを開催。VAIO、マウスコンピューターとともに、報道陣からの質問に答えた。ここでは、主にWindows 10 Mobileに関するコメントをまとめていきたい。
インタビューに応じたのは、日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部長 金古毅氏と、業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏。VAIOからは執行役員副社長 赤羽良介氏、マウスコンピューターからは代表取締役社長 小松永門氏と、製品企画部 部長の平井健裕氏が参加している。
VAIO Phone Biz発売後の手ごたえと今後の展開
――VAIO Phone Bizを4月に発売してから、反響をどのように受け止めていますか。
赤羽氏
おかげさまで、一言で表現すると、ご好評をいただいております。今回は合格点かな、と。
――今回“は”ですか?(笑)
赤羽氏
端末の名前からもお分かりの通り、ビジネスで使うことにフォーカスしており、実際に企業との協議もたくさんあります。なぜかというと、まずは(Windows 10 Mobileの)セキュリティが1つ。その面があることに加え、マネージャビリティがあるとでも言えばいいのでしょうか。他のOSを使ったものだと社内システムとの相性がよくないということもある一方で、Windowsであれば、その管理能力が広がります。そういった点で、たくさんの方にご興味をいただいている状況です。ただ、これを実売につなげていくのは、まだまだこれからです。そういう意味でも、非常に大きな期待はしています。
VAIOとしては質感にこだわった部分があり、安心して使っていただけるよう、ドコモのIOT(相互接続性試験)を取り、キャリアアグリゲーションに対応する努力もしました。もう1つ大きいのが、やはり「Continuum」です。開発を始める段階では採用しているチップ(Snapdragon 617)が、正式にサポートされていませんでしたからね。この機能は、非常に大きな可能性のあるもの、ライフスタイルを変えられる可能性があるものだと思っています。
これはぜひとも実現したいと思い、マイクロソフトさんと一緒に取り組んできました。もちろん、まだまだ進化させなければいけないことはあります。モバイルのライフスタイルがあり、そのうえで、オフィスで単なる入力端末として使っているレベルであれば、置き換えも可能です。PCを完全に置き換えるものではありませんが、新しいワークシステムを提供できる可能性があるものとして、期待をしています。企業のお客様が関心を持っているのも、そういうところですね。
――Windows 10はIoT(モノのインターネット)までカバーしていますが、VAIOブランドで、こうした商品を出す可能性はあるのでしょうか。
赤羽氏
もちろんありますが、具体的にはまだこれからです。
――Windows 10の市場規模については、どう捉えているのでしょうか。
赤羽氏
あまり気にしていません。我々の強みがある特定の分野にフォーカスして、経営が成り立つ規模のビジネスをしっかりやる。それに加えて、成長のために新しいことには挑戦していきたいと思っています。
金古氏
Windows 10の市場規模という意味では、前まではパソコンしか見ていませんでしたが、「One Windows」という観点では、モバイルもWindows 10です。我々としては新しい市場で、規模は広がっています。
――マイクロソフト側は、VAIOがスマートフォンに参入したことをどう捉えているのでしょうか。
金古氏
Windows 10 Mobileの市場を作っていくという意味では、非常に大きなインパクトがありました。やはりVAIOは、大きなブランド認知度を持っています。企業ユーザーに信頼感を持っていただく中で、VAIOさんが加わってくれたことは大きいですね。
あとは先ほどもおっしゃっていましたが、VAIOさんはContinuumをいち早くサポートしてくださった1社です。新しい使い方を提案してくれたという点でも、インパクトがありました。Continuum対応は開発段階からの大きいな悲願で、それを達成できました。
マイクロソフト担当者
補足すると、Continuumの開発や検証の際にも、VAIOさんには機材を提供していただき、レドモンド(マイクロソフト本社)のチームもそれを使っていました。その意味でも、非常に大きな意義があったと思っています。
――初となるスマートフォンを開発してみて、どのような印象を持ちましたか。
赤羽氏
大変は大変でしたが、やってみれば何とかなるものだと思っていました。ほとんど初めての経験でしたが、各方面からご協力いただけました。意外なところでは質感を出すための苦労もありましたし、チップセットや機能などにも、新しいものを立ち上げていく苦労がありました。ただ、おかげさまで、マイクロソフトさん、クアルコムさん、OEMパートナーの支援をいただき、なんとか発売にこぎつけることができています。
――海外事業に関しては、VAIO Phone Bizも対象になる可能性はありますか。
赤羽氏
もちろん、あると思っています。ただ、マイクロソフトさんのいる前では話しづらいのですが(笑)、むしろ海外の方が厳しいと感じています。それはWindows 10 Mobile自体がです。Windows 10 Mobileに関して言えば、むしろ日本が一番期待のできる市場で、我々もそこに集中しています。日本でうまくいけば、海外にそのラーニングを生かして展開する。そうすれば現実的にやっていけるのではないかと考えています。それも(PCの海外事業と同じように)、自前でやる地域と、パートナーと組んでライセンスの形でやるところに分かれると思います。
MADOSMA後継機の発売は「最終調整中」
――2月のMobile World Congressで見せていただいた、MADOSMAの後継機ですが、進捗状況はいかがでしょうか。
平井氏
実はハードウェアとしてはほぼ完成していて、今、最終的な作り込みをしているところです。マルチバンド対応(多バンド対応)した関係もあるのですが、実際にテストしてみると、日本のバンドがどうしても弱くなってしまう。そこで巻き戻しをかけ、ある程度の今日でつながるよう、最近まで基板を作り変えていました。あわよくば海外で使えるという、最初の大前提に戻っていたということです。今は最終調整中というところで、(発表や発売は)もう少しだけお待ちください。
――MADOSMAのビジネスについて、マウスコンピューターはどのように考えているのでしょうか。
小松氏
MADOSMAは、企業のコンピューティングをよりモバイルに近づけるためのソリューションだと考えていて、法人市場に対してもいろいろな形でプロモーションしています。これが、だんだんと企業に対して伝わるようになりました。最初に出したときは、どちらかと言うと、評価用も含めていろいろな方にお求めいただきました。そうしたお客様に評価いただき、ちょうど今、いろいろな案件のオポチュニティ(機会)が上がっているところです。法人のところでは、今年がリアルビジネスに結びつくフェーズで、その手ごたえは感じています。
企業の中で使っていただくうえで、お声として上がってきているのが、やはりセキュリティです。AndroidなどのOSでは不安だと思われていた方々から、心配がなくなったという声は聞いたことがあります。また、Windows 10 Mobileは、いい意味でも悪い意味でもいろいろなアップデートがありますが、企業ユーザーであれば、それも取捨選択ができます。そうした管理が行えるという意味でも、導入された方々からはいい評価を得ています。
平井氏
あとはUWP(ユニバーサル・ウィンドウズ・プラットフォーム)ですね。そのデモ用として、弊社の端末がいろいろなところで使われ始めています。
――マイクロソフトとしては、MADOSMAをどう評価しているのでしょうか。
金古氏
Windows Mobileのマーケットを切り開いたのは、まさにマウスさんです。Windows Phone 8.1のときから、とにかくタイム・トゥ・マーケットで市場を作ってきました。パイオニアになるという意気込みでご協力いただいたので、その恩返しがしたいと取り組んでいるところです。
当時も、我々のターゲットは、Windowsファンと企業のお客様だと明確に申し上げていました。そのファンの心をつかむというところでは、大きな意義があったと思います。そこを通じて、他の企業が参入し、新しいモデルを開発していただき、次も考えていただいています。その意味では、マウスさんがWindows 10 Mobileを大きく引っ張っていると言ってもいいでしょう。
――マウスコンピューターの参入以降、1年でここまでメーカーが増えるとは想像していませんでした。この状況を、マウス自身はどう見ているのでしょうか。
小松氏
ビジネスの一般論として私が思っていることですが、「いいな」と思えるものは、やはりいろんな方が参入してきます。そういった意味だと、Windows 10 Mobileも、私どもが出せば、いろいろなメーカーさんが参入してくることも想定していました。その中で、私たちの立ち位置をどうするか。Windows Phone 8.1のころからやっているのも1つのポイントですが、ビジネスとしての経験もあります。お客様に対してのサポートだったりの経験をしっかり積んでいることは、差別化するうえで重要で、そのために8.1のころからやっていました。たくさんの方が参入されるのは、マーケットが活性化するという意味で、よかったと思っています。