サイボウズとソフトバンク、iPhone向け「かんたんSaaS」で提携


「かんたんSaaS」がiPhoneに対応

 サイボウズとソフトバンクモバイルは、中小企業を対象としたiPhone向け「かんたんSaaS」の展開で提携すると発表した。パソコン向けに提供されてきた「かんたんSaaS」が4月22日より全面的にiPhoneからの利用に対応するほか、ソフトバンクモバイルの法人部門にて「かんたんSaaS」が取り扱われる。

 サイボウズが提供している「かんたんSaaS」(かんたんさーす)は、ソフトウェアをネットワーク経由で提供する「SaaS(Software as a Service)」の概念の取り入れ、中小企業でも顧客管理や報告書処理といった業務用のソフトウェアを簡単に導入できるようにしたサービス。一般的に、SaaSはネットワーク経由で利用するため、サーバーなどの機材を企業側で用意する必要はなく、申し込むだけで利用可能。「かんたんSaaS」では、「顧客台帳」「日報」などあらかじめ用意された業務用のソフトウェアやセットを選ぶだけで、ブラウザ上で利用を開始できるなど、利用開始までの流れを簡略化しているのも特徴となっている。後から個別の業務用ソフトウェアの利用を追加できるほか、特定業種に特化した専門的なデータベース構築ソフトウェアといった、さまざまな業務用セットも用意されている。

 今回の提携に伴い、サイボウズでは、これまでパソコンから利用するサービスとして提供してきた「かんたんSaaS」のすべてのソフトウェアについて、iPhoneからの利用に対応した。iPhoneのブラウザで閲覧しても問題なく表示されるよう、改修されており、iPhoneのユーザーインターフェースを踏襲した使い勝手が実現されている。

 今回のiPhone対応は「かんたんSaaS」のサービスを拡充する目的で提供され、別途利用料などは不要。すでに「かんたんSaaS」を利用している企業も、4月22日からはiPhoneからアクセスしても利用できるようになっている。

iPhoneから「かんたんSaaS」を利用する様子

 「かんたんSaaS」の利用料は1ユーザーあたり月額500円~。利用は5ユーザーから申し込める。例えば、販売・営業向けとしてサイボウズが提供している「お客様が見える化セット」では、「顧客台帳」「商談報告書」「見積もり依頼受付」「売上情報」「お問い合わせ・クレーム対応管理」の5つの業務用ソフトウェアがセットになり、1ユーザーあたり月額1000円となっている。

 iPhone対応を記念し、キャンペーンが実施される。申し込み期間は7月20日までで、利用期間は8月15日まで。キャンペーン中に申し込むと、iPhoneから利用する場合の「お客様が見える化セット」が、期間中無料で利用できる。

 

iPhoneは「中小企業の経営者も使えるツールになる」

 22日には都内で記者向けに発表会が開催され、iPhoneからの利用に対応した「かんたんSaaS」の内容が説明された。

サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

 サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏は、「かんたんSaaS」を提供している背景として、グループウェアが中小企業にまで浸透していないとする現状を示し、「サイボウズが3万社に導入され、グループウェアのシェア1位といっても、大した数字ではない」と語る。同氏によれば、中小企業においては、重要な決断を下す社長の外出が多かったり、勤務中はデスクに向かう時間がなかなか確保できなかったり、数名の企業ではスケジュールの管理よりも受注状況の共有に需要があったりと、大企業とは異なる需要になっていると指摘。「かんたんSaaSはとても簡単で、5分で分かる。(100万社ある企業のうち)残りの97万社の中小企業に提供できる内容になっている」と自信を見せ、「今回の提携では、iPhoneで使えるようにし、かんたんSaaSをさらに中小企業に広めようというもの。今はiPhoneで仕事ができるの? と思われているかもしれないが、中小企業の経営者でも使えるツールになると、本気で信じている」とiPhone版での利用のしやすさをアピールした。今後1万社に提案予定で、初年度は3000万ユーザーの獲得が目標という。

安価で簡単に始められる点を特徴とするiPhone対応でキャンペーンも実施

 

サイボウズ SMB戦略部 部長の野水克也氏

 サイボウズ SMB戦略部 部長の野水克也氏は、中小企業をターゲットにする上で重要という社長へのアピールについて、iPhoneの直感的で分かりやいUIや、大きな画面が有利であるとし、一覧性に優れた画面と機能を提供することで、中小企業におけるIT化を推進できるとした。

 ソフトバンクモバイル 執行役員 法人事業推進本部長の安川新一郎氏は、「中小企業に対して最もキラーなアプリを、一気に展開できる」と今回の提携に期待を語ったほか、携帯電話市場でスマートフォンが拡大している数字を示しながら、同社やグループ企業におけるiPhoneの大規模な導入事例を紹介。大企業においても経費削減効果や業務の効率化が「経営も無視できない規模」になっているとした。

iPhoneが「かんたんSaaSに」向く理由ブラウザのUAでiPhoneを判別し、「かんたんSaaS」全体で対応する
ソフトバンクモバイル 執行役員 法人事業推進本部長の安川新一郎氏中小企業ではないが、ソフトバンクテレコムにおけるiPhone導入効果
実際に中小企業の担当者へインタビューを行った映像も事例を元に対談形式で「かんたんSaaS」の利点をアピールした
発表会はUstreamとTwitterでも中継され、Twitterからの質問に答える時間も用意されたサイボウズの青野氏(左)とソフトバンクモバイルの安川氏(右)

 

 なお、iPhone以外のスマートフォン、携帯電話への対応について、サイボウズの野水氏は「現在はブラウザのユーザーエージェントで判別し、iPhone用のCSSを用意している状態。Androidへの対応は難しくないが、市場規模や台数をみながら検討していきたい」とした。一般的な携帯電話に対しては、「実は最もハードルが高い」として、現時点で具体的な計画は無いとした。

 



(太田 亮三)

2010/4/23 06:00