高精細表示のGPSロガー「Pocket GPS S1」


小型軽量な本体。高精細な有機ELディスプレイは屋外でも見やすかった

 先日本誌で紹介されていたGPSロガー、Pocket GPS S1をお借りできたので、簡単な使用感をお伝えしたいと思う。

 当連載でも何回か紹介されているが、GPSロガーとは移動経路をGPSで記録する小型の装置で、記録したログをパソコンに取り込んで利用するためのものだ。地図上に反映して移動した経路を確認したり、デジカメで撮影した写真に位置情報を付与したり、様々な用途に利用できる。GPSを利用した小型ナビゲーション機器との違いは、ログを収集することに特化している点だ。

 その代わりに本体サイズを大幅に小型化できるので可搬性に優れる。Pocket GPS S1もかなり小型・軽量で、タバコの1/3くらいのサイズ・厚みになっている。一般的なGPSロガーは小型軽量化のために、表示部分はモノクロ液晶、ものによってはLEDランプのみという製品も珍しくない。カラー有機ELディスプレイを採用した本製品は、GPSロガー製品の中ではユニークと言っていいだろう。

 リッチな表示能力を活かして表示される情報は、かなり見やすい。移動速度は大きな数字で表示され、高度の推移は簡易グラフで表示するなど、移動しているという実感を強めてくれて、思いの外楽しい。ほかにも色々と多機能で、MP3の再生機能やボイスレコーダー機能もあり、散歩中に音楽を聴きながらとか、登山中に気になった箇所をボイスメモで記録、といった利用シーンを想定しているようだ。とはいえ、肝心なのはロガーとしての性能だ。かねてより自転車での移動ルートを確認したい欲求があったので、早速乗り出してみた。

 川崎市内の自宅から横浜までの往復で、行きは第一京浜(国道15号)、帰りは第二京浜(国道1号)で走ってみたが、比較的速い自転車での移動ということもあってか、ところどころワープしている部分があった。停止するとそれなりの精度が得られるようで、撮影をした桜木町の帆船日本丸や、関内の開港記念会館(ジャックタワー)、山下公園の「赤い靴はいてた女の子の像」に付与されたジオタグはほぼ正確な位置を示した。山下公園はかなり開けているので正確だったのは想定通りだが、日本丸や開港記念会館は周囲が建て込んでいる割には精度の面で健闘している。JR横浜駅前では正確な位置を得られなかったが、高層ビルに加え高架に囲まれている場所なので致し方ないだろう。総移動距離は40.95kmを示していた。自転車に取り付けてあるメーターでは41.53kmを示しており、これは誤差の範囲と言える。

付属ソフトによるルート表示。青が往路で紫が復路だが、復路の国道1号では大きくワープしている箇所が見られた(生麦~鶴見付近)。「赤い靴はいてた女の子の像」の写真にジオタグを付与し、Picasaウェブアルバムで表示。ほぼ正確な位置を示している

 「Pocket GPS S1」は多機能な割に低価格に抑えられており、割り切っている部分も多い。パソコンに接続するとUSBマスストレージとして認識されるので、ログデータを取り出したりMP3ファイルを転送したりといった作業は容易だが、驚いたことに、写真にジオタグを付与したりルートを地図に表示したりするための付属ソフトも本体内のメモリに収録されている。取扱説明書のPDFも本体に入っているなど、かなりの合理化だ。裏を返せば、ある程度パソコンについての知識があることが前提だ。ソフトの使い方の説明はもちろん、ソフトが本体内に収容されていることも説明書には書いていない(ホームページには詳細説明があり、誤ってソフトを削除した場合にはダウンロード可能)。もちろん、そのあたりを充実させるとコストに跳ね返ってくるので痛し痒しだが、せめて付属ソフトがどこにあるのかくらいは説明書に欲しかったところだ。

 全体としては、精度にやや難があると感じられたものの、気軽に使える印象だ。移動の記録をするだけでなく、手軽さや見た目の楽しさも欲しいという人にお勧めしたい一品だ。

 



(ナカムラ)

2010/6/3 06:00