スイス国際時計博物館のオリジナル腕時計「MIHウォッチ」


MIHウォッチ

 「MIHウォッチ」は、スイス・ラショードフォンにある国際時計博物館で企画されたオリジナルウォッチ。インダストリアルデザイナー「クリスチャン・ガフナー」のモダンでシンプルなデザインは、一見単なるデザインウィッチのようだが、天才時計師で博物館の館長「ルードヴィッヒ・エクスリン」が企画したもので、ギネスブックに最も複雑であると認定されている腕時計を手がけた独立時計師「ポール・ゲルバー」によって製作された、アニュアルカレンダー、ワンプッシュクロノグラフ機能を搭載した自動巻きの機械式腕時計だ。

 マット仕上げのチタニウム製ケースは直径42mmと大きく、コーティングされたドーム型のサファイアガラスの風防により、どの角度からでも文字盤を読み取れる。3時と9時以外のインデックスと時針、分針には蓄光塗料が塗られており、暗いところでも時刻を確認できる。9時の位置には、インデックスの替わりに「MIH」と刻まれている。

 先端が赤い針は一周60秒のクロノグラフ針で、ケース裏の小窓に一周30分の積算計が配置されている。2時位置にあるプッシュボタンにより、一回押すたびにスタート、ストップ、リセットを繰り返すクロノグラフ操作が行える。

 3時位置のカレンダーは、曜日/月/日と並んでいる。曜日の左側にあるドットは、1つの赤いドットが午前、2つの赤いドットが午後を示している。「アニュアルカレンダー」は、2月以外の小の月、大の月は自動的にカレンダー部が切り替わる。つまり、11月30日の次は12月1日が表示されるのだ。ただし、アニュアルカレンダーでは2月に関して閏年の管理ができないため、4年間に3回だけはリューズを使って日付を調整する必要がある。大の月、小の月を自動的に調整する機能は、クォーツ時計では珍しくないものの、機械式時計では複雑な機構といわれている。このMIHウォッチは定評のあるクロノグラフムーブメント「CAL.7750」をベースに、新たに考案された特殊な機構を搭載し、9つという極めて少ないパーツによってアニュアルカレンダーが実装されているというから驚かされる。

 標準ではゴム素材のベルトが付属するが、筆者の手首には余ってしまう長さだったので、特注のカーフ素材のベルトに交換している。

 このMIHウォッチは年間100本のペースで三年間だけ制作され、国際時計博物館と限定されたショップでのみ販売されていた。価格は5000スイスフランで、売上の一部は国際時計博物館に寄付されるシステムだ。

 ケース裏の積算計については見やすいとは言い難いが、国際時計博物館公認である点や、限定300本の稀少性、著名なメンバーによって企画製作された点、アレルギー反応の少ないチタンやゴム素材を採用している点など、こだわりにこだわった腕時計であることは間違いない。購入してから数年たっているため分解掃除は行ったが、普段使いでも特に動作上のトラブルなどなく利用できている。個人的には、一見特徴のないありふれた時計に見えるので、周囲の視線を気にせずに着けられる点も気に入っている。

シンプルなデザイン。ベゼル部分が薄いため42mmよりも大きく感じられるケース経も大きいが厚さも15mmを超える。ただ、チタニウム製なので比較的軽量だ
ねじ込み式竜頭とクロノグラフ操作のためのプッシュボタンケース裏の一周30分の積算計。おせじでも見やすいとはいえないシロモノ
尾錠もチタニウム製。時計本体同様きわめてシンプルなデザイン尾錠裏には国際時計博物館の座標が刻まれている

 

製品名製造元購入価格
MIH watchMIH5000スイスフラン

 

(一ヶ谷兼乃)

2010/3/2 06:00