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シンポジウム「移動通信技術の進化」で見えた4G携帯電話
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4月15日、神奈川県横須賀市にある複合研究施設群「横須賀リサーチパーク(YRP)」で、英国大使館主催による移動通信技術のシンポジウム「移動通信技術の進化」が開催され、NTTドコモやKDDI、Nokia、Siemensなどに所属する研究者等が第4世代携帯電話についての講演を行なった。
4Gとはなにか
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横須賀リサーチパーク(YRP)。写真は会場となった一番館
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シンポジウムでは、NTTドコモから2名、KDDIから1名、Nokia、Siemens、さらに大学の研究者も講演を行なったが、ほぼ全ての講演者が、4Gについて「何を指すのかはっきりせず、それを話し合っている段階」と述べている。現在、各企業・団体はビジネスモデル・サービス体系を模索するとともに、4Gのキーテクノロジーを比較・検討している段階のようだ。
一方で、「イメージ」としての4Gはできあがりつつあるようで、講演者各氏とも、「IP」「2010年」「100Mbps級の伝送速度」「複数の通信インフラが融合したネットワーク」といったキーワードを挙げている。
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YRPにはNTTドコモのR&Dセンタもある。ここでFOMAや4Gの研究・開発が行なわれている
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こちらは松下通信工業の研究所
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複数のネットワークを自動で切り替える4G
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キングス・カレッジ・ロンドン教授 ハミッド・アグヴァーミ氏
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特に、キングス・カレッジ・ロンドン教授のハミッド・アグヴァーミ氏は、4Gについて明確なビジョンを語っている。同氏は4Gを、「IPテクノロジー、エージェントテクノロジー、リコンフィギュラブルテクノロジーの3つの既存の技術を使用する。まったくの新技術ではなく、いわば“3.99G”と呼ぶにふさわしいものだ」と定義した。
教授によれば、ポイントとなるのは、ユーザーに安価でワイヤレスのブロードバンドサービスを提供することだという。その実現のためには、「いる場所」に適した技術を自動で切り替えて使用する形が望ましいというのが同氏の考え。グローバルレベルでは衛星で、国内レベルでは2G、3Gといった移動体通信の技術で、都市やローカルレベルでは無線LANで、家庭では各世帯が契約するブロードバンド回線と無線LAN技術を組み合わせたPANを利用。これらを1台の端末で実現することが次世代の携帯電話の姿だと語った。
この端末は、ユーザーの場所や環境、複数のネットワークのトラフィックなどを考慮し、自動で最適なネットワークを選択する「エージェント機能」と、コンテンツ閲覧やアプリケーション実行などのネットワーク以外の処理においても、常に通信状況を監視して端末を自動制御する「リコンフィギュラブル機能」を備えることになるという。
現在の研究課題は、異なるインフラ間でのハンドオーバーで、セルラー技術(2G、3G)から無線LAN、またはその逆などが繰り返し実験されているという。
4Gで“All-IP”時代に
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Nokia所属でMobile VCE会長のキース・ボーン氏
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Nokiaに所属し、業界団体Mobile VCE会長のキース・ボーン氏は、「IP化」を4Gのキーと主張し、「4Gで全てがインターネットプロトコルで処理される“All-IP”時代を迎える」と述べた。同氏は、4Gの重要なポイントとして、タブレットタイプや家電との融合製品など端末が多様化することや、現在のパソコンと同じように、「データを再生し、保存するもの」という利用方法に変化し、携帯電話という概念そのものが変わっていくことを指摘した。
一方で、3Gや4Gといった高度なサービスが受け入れられるには、消費者のレベル向上が不可欠との考え方も示し、「業界全体で音声通話からデータサービスへの誘導に取り組まなければならない」と語った。
複数のネットワークや技術との連携が必要
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NTTドコモ ワイヤレス研究所 新世代方式推進研究室長の山尾 泰氏
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NTTドコモ ワイヤレス研究所 新世代方式推進研究室長の山尾 泰氏は、4Gにおける技術的な課題を述べ、それに対する同氏の考え方を表わす形で講演は進められた。
同氏によれば、セル間の干渉を受けにくく、高スループットを出せる単一セル方式を用いながら、エリアのカバーも両立させることが開発における最大の課題。同氏は「いずれもまだ研究段階だが、限られた電波を有効利用でき、マルチパス干渉に強いOFCDMが有力なのではないか」と語る。
4G向けの技術開発については、「2Gから3Gと突き進んできたように、これからもただ技術を発展させればいいのか。答えはノーだ」(山尾氏)と述べ、IPを核に無線LANなどさまざまな技術と連携をとる必要性を強調した。
ドコモの4Gビジョンの中心はやはりIP
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NTTドコモ 第4世代ネットワーク方式研究室長 藪崎正美氏
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また、NTTドコモ 第4世代ネットワーク方式研究室長の藪崎正美氏は、ドコモが描く4Gのアーキテクチャ「IP2(IP-based IMT Platform)」の概要について説明した。これは、端末に固有のIPが割り振られ、通話・通信がインターネットプロトコルベースで処理されるシステムだという。この時点では端末はもはや電話の形にとどまらず、「動くもの全て」に通信機能が組み込まれ、機器同士で相互乗り入れが可能になるという。
KDDI au技術本部 無線アクセス技術部長の渡辺文夫氏は、ほとんど4Gのビジョンについては触れず、ただ「今は“あんなふうにできたらいいね”と夢を出し合っている段階」と述べるにとどまった。今後の移動通信業界について、「企業だけでなく、標準化団体や非営利団体、国家などさまざまな機関がコラボレーションする必要がある」と訴えた。
各講演者の話を総合すると、4Gはいわゆる「3G=IMT-2000」というような形で表わされるものではなく、様々な通信レイヤーを持ち、そのレイヤーを自由に移動できる通信機器がイメージされているようだ。特にローカルエリアにおける無線LANのアドバンテージを指摘し、4Gにはなくてはならない技術になると語る講演者が多かったのが印象的だった。
・ 英国大使館ホームページ
http://www.uknow.or.jp/
・ 「移動通信技術の進化」 イベント情報
http://www.uknow.or.jp/be/science/seminar/4g/4g_intro_j.html
(伊藤 大地)
2002/04/15 21:24
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