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PHSMoUセミナー、日本のPHS事情を海外に紹介
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社団法人電波産業会傘下のPHS普及団体「PHSMoU Group」は6日、都内でPHSに関するセミナーを行なった。セミナー内容は、台湾や中国におけるPHSの現状や今後の展開といった海外事情をはじめ、DDIポケットの音楽配信サービスやコンテンツサービス、PHSのMVNOサービスなどを、それぞれの企業代表が講演する形式となった。
PHSMoU Groupは、世界各国へのPHS普及に賛同する企業・主官庁・組合などで構成された電波産業会傘下の任意団体。1996年に設立され、技術仕様の策定やプロモーション活動、PHS事業者間の意見交換などの活動を通じてPHSの普及促進に取り組んでいる。今回開催されたセミナーでは、PHSMoUの海外会員を含む会員企業を中心に、アジアなどの海外PHS事情や日本国内での動向が紹介された。
アジアのPHS事情
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京セラ 前海外営業部長の山口増海氏
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講演ではまず、通信サービスの自由化により今年6月より開始された台湾のPHSサービスとして、台湾のPHS事業者First International Telecom(FITEL)のバイスプレジデントHann-Bin Chuang氏により、自社のSMSやDDIポケットのH"LINKの台湾版サービスとして提供中の文字情報サービス(Eメールサービス)「MiMi」などが紹介された。MiMiでは、パソコンとのUSB接続により64kbps(ベストエフォート方式)でインターネットの利用も可能。FITELのPHSユーザーのうち50%が20~30代で、若年層を中心に普及しているという。
次に、中国向けのPHS展開を積極的に推進している京セラ 前海外営業部長の山口増海氏により、中国におけるPHSの現状と今後の展開予測に関する講演が行なわれた。山口氏によると、中国では1997年からPHSサービスがスタートしているが、1999年より固定通信網の付加サービス、または小規模な範囲での移動通信機能といった位置付けで一般への普及が急速に進んでいるという。現在、中国電信などがPHSサービスを行なっているが、中国電信を含め中国網通、中国移動、中国聯通といった中国のキャリアが分割・合併を行なっていることから、京セラではこれを機にPHSサービスの導入が促進されることを期待して、中国移動にPHSの導入を促がしているという。また、現状ではPHSの提供は小都市を中心に行なわれているが、中国では国土の広大さと裏腹に人工密集エリア(大都市)は狭いため、こうした大都市ほどGSM携帯電話よりもPHSの方が適していると考え、北京や上海などの大都市でのPHS導入を促がしていく意向を表わした。
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中国では現在、キャリアの分割・合併が行なわれている。再編後の中国電信、中国網通では、移動通信事業のライセンスが新規に付与される模様
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日本のPHS付加サービス:音楽配信、コンテンツ
セミナー中盤以降は、PHSにおける付加価値サービスとして、音楽配信やコンテンツ配信、MVNOなどの紹介が行なわれた。
PHSの音楽配信サービスとして、DDIポケットおよび東芝、三洋から、DDIポケットがfeelH"端末向けに提供している音楽配信サービス「Sound Market」の音楽配信技術「ケータイdeミュージック」と「SDAIR」が紹介された。三洋、日立、富士通3社の共同開発で、圧縮方式にMP3、配信技術にUDAC-MB、記録媒体にセキュアMMCを利用した「ケータイdeミュージック」については、三洋電機 ハイパーメディア研究所主管研究員の泰間健司氏から、東芝、松下電器、九州松下電器、ミュージック・シーオー・ジェーピー4社の共同開発で、圧縮方式にAAC、配信技術にEMMS、記録媒体にSDメモリーカードを利用した「SDAIR」については、東芝 Mobile AV Network Divisionチーフスペシャリストの田村正文氏から、それぞれシステムの概念や配信方式、各プロトコルなどが海外会員向けに改めて解説される運びとなった。
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インデックスの専務取締役 渡辺和俊氏
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次いで、インデックスの専務取締役 渡辺和俊氏から、PHSにおけるiモード的サービスの事例などが紹介された。渡辺氏は、自社の戦略的アライアンスとして提携企業の紹介や、ユーザーが求めるものしか作らないというコンテンツ作成におけるポリシーなどを語るとともに、現在の主力サービスとして展開しているモバイルコマースやホームセキュリティサービスなどを紹介。
同氏によれば、コンテンツサービスにおける総会員数は220万人に達し、ベンチャーでありながらモバイルコンテンツ事業といった新たな分野でこうした実績を納めたインデックスだが、モバイルコマースのサービスが当たった決め手の商品は香水であったという。一見、香水という商品は香りが嗅げなければ意味がなく、ネット商品には適さないと思われたが、リサーチを重ねた結果、実際のユーザーニーズはブランド力に大きく左右され、かつ地方では購入が難しいといった特性もあったことから、香水の販売サイトがモバイルコマースの成功に繋がったという。
話はPHSに焦点を定めるというよりは、携帯電話寄りの話題となったが、コンテンツ事業においてはこうした発想の起点が成功の可否を左右するもので、ユーザーの意見を取り入れたニーズ重視の方向性が重要であるとした。
日本のPHS付加サービス:MVNOの可能性
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日本通信 副社長兼COOのロバート・ケリー氏
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同セミナー最後の講演では、日本で最初のMVNOとなった日本通信 副社長兼COOのロバート・ケリー氏より、PHSのMVNOサービスについての説明が行なわれた。海外では、ヴァージングループなどによるMVNOが知られるが、日本では今年10月にDDIポケットが自社のPHS網を卸売りし、日本通信がそれを借り入れたことで、日本で最初のMVNO誕生となった。
ケリー氏によると、日本通信では1996年の設立当初より、MVNOを事業の主眼に置いていたという。MVNOは、ユーザー側から見ればあたかもキャリアと同じように見えるが、実際には回線を持っていないことから、キャリアとは異なった付加価値の高いサービスを提供することが重要だという。その1つとして、料金の安さが挙げられるが、海外のようにMNVOが増えてくると、市場は安さで飽満し、いずれは潰し合いになってしまうため、本当にMVNOとして生き残りたければ、付加価値の高いサービスを生まなければならない。そこで、日本通信はMVNO成功のキーワードは3Gのデータ通信にあるだろうと考えたという。3Gではデータ通信が主力サービスとなることが当時から予想し得たため、データ通信なら音声サービスよりも付加価値が見付けやすいと考えたのだという。
そんな中、通信事業者へ回線の賃貸について交渉を進めていた同社にチャンスが到来し、DDIポケットの持つPHS通信網の借り入れが可能となり、MVNOのPHS事業者として独自に法人向けのサービスを展開するに至った、とこれまでの経緯を語り、話は今後のサービス展開に移る。同社はDDIポケットの卸売り回線で10月から法人向けのデータ通信サービスを提供しているが、この12月からは法人向けのネットワークを使用した一般コンシューマ向けのサービス「bモバイル・プリペイドサービス」も始め、32kbps/128kbpsのパケット通信に対応したPCMCIAタイプのデータカード「BMH10-J」による通信料プリペイド方式のパッケージ商品の販売事業を展開。
当初の通信スピードはベストエフォート形式の32kbpsだが、来春の128kbpsのサービス開始時には端末をグレードアップすることで、そのまま128kbps通信が利用できるようになるという。また、圧縮技術にも注力し、Webベースのコンテンツを圧縮して受信可能にすることでファイルサイズを小さくし、通常の30%程度にコンテンツを圧縮して実質的な通信スピードを向上。現状の32kbpsは最大50kbps相当で利用でき、128kbpsなら最大200kbps相当の通信スピードも見込めるとして、その付加価値をアピールした。
このほか、キャリアの場合は利用料金のリストを総務省に申請する必要があるが、MVNOの場合はそうした義務もないため、1回線ごとの細かい料金が設定されていないと言う。つまり、顧客単位の要望に沿った細かい料金設定が可能で、VPNのネットワーク環境もサポートし、キャリアとの契約以外に他社の回線を介して社内LANに接続するVPNサービスなどの複数契約も必要ないため、企業ユーザーは同社との1契約でサービスの利用が可能になるといったメリットもあり、こうしたマスカスタマイゼーションが、MVNOとしての付加価値を高めることを語った。
・ PHSMoU Group
http://www.phsmou.or.jp/japan/
・ 電波産業会
http://www.arib.or.jp/
・ 日本通信、コンシューマ向けのデータ通信サービス開始
(松下 麻利)
2001/12/06 23:00
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