日本通信は、NTTドコモとのレイヤー2(L2)レベルでの相互接続を利用した製品「Doccica」(ドッチーカ)を3月23日に発売する。ドコモの3G網、プリペイド、分単位の課金という3つの特徴を備え、レイヤー2接続ならではのサービスも盛り込まれている。10日には都内で記者向けに発表会が開催され、製品の概要やレイヤー2接続で実現されるサービスについて、説明が行われた。
■ 「レイヤー2で通信をデザインできる」
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日本通信 代表取締役社長の三田 聖二氏
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今回発表された「Doccica」が対応するレイヤー2接続とは、ドコモと日本通信との相互接続に関する形態で、インターネットや企業網に接続する際のゲートウェイ設備(GGSN)を日本通信側が用意するもの。これにより、通信の制御を日本通信側が行え、柔軟なサービス開発が可能になる。当初、両社の相互接続のための交渉が決裂したことから、2007年には日本通信が総務省に紛争処理を依頼、総務大臣の裁定が下り、今回のドコモ網を利用したレイヤー2接続のサービスが実現されるに至っている。
冒頭に壇上に上がった日本通信 代表取締役社長の三田 聖二氏は、MVNOとしてのこれまでの歩みを振り返った上で、すでにドコモの3Gを利用するデータ通信カードとして発売されている「bモバイル3G」を従来のレイヤー3の内容の製品とし、今回の「Doccica」については「日本通信のノウハウを活かし、付加価値を持たせた。13年間追いかけてきたレイヤー2のサービスが今日の製品」と紹介した。同氏はまた、レイヤー2接続による柔軟なサービス開発を特徴に挙げ、ATMなどの金融分野に加え、自動車やゲーム機、機械などに展開できるとする展望を語った。
「Doccica」では、3Gに加えて公衆無線LANサービスもサポートしているが、同氏はこれらについて、「日本通信として、マルチネットワークをコアの政策としていく。WiMAXやLTEなども、違うネットワークとしてとらえれば、機器を出す可能性もあるかもしれない」と述べ、3G以外の通信方式に対しても柔軟に取り組んでいく姿勢を見せた。
料金面については、既存のサービスがMB単位やパケット単位で提示されている点を「複雑でユーザーに不親切」と指摘。「Suicaのような交通系プリペイドサービスが親切ではないかと考えた」とし、電子マネーのチャージに着想を得て、安価な分単位の課金によるプリペイドサービスに至ったとした。同氏は、イー・モバイルの「スーパーライトデータプラン」を“最安値”として紹介した上で、「DoccicaでのWebサーフィンなら10分の1ぐらいの値段」と安価に利用できるとし、「レイヤー2では我々が帯域を管理できる。帯域を有効に使い、値段を下げられる。通信をデザインできるのはレイヤー2の特徴」と、これまでとは異なるレベルでのサービス展開に意気込みを見せた。
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レイヤー2接続ではGGSNを日本通信が設置。柔軟なサービス開発が可能になる
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他の通信方式も視野に入れた展開が示された
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■ 「従量制で、肌感覚で分かりやすい」
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セールス バイスプレジデントの沢 昭彦氏
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「Doccica」の具体的な特徴については同社 セールス バイスプレジデントの沢 昭彦氏から説明された。沢氏は、昨今では一般的になっている2年契約の定額制データ通信プランを例に挙げ、2年間で10万円以上の費用になることなどを指摘。「月々の支払額は決まっているので安心だが、使っていないときも支払う。これが定額制の最大の弱点でありデメリット」と語る。2段階制の定額プランに含まれる無料通信分がWebサイトをいくつか閲覧しただけで使ってしまう例を挙げた同氏は、「Doccicaは定額制と従量制が持つ問題点を解決する」とする。
「ポイントは2つ。従量制で、肌感覚で分かりやすいこと。プリペイドで、思わぬ請求が無いこと」とDoccicaを2つの特徴で示した沢氏は、さらに、ドコモのネットワークを利用する点や、使いやすさにこだわった接続ソフト「bアクセス」などをデモを交えて紹介した。
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イー・モバイルのプランを例に、費用を比較した
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イー・モバイルのあるプランに付属する1000円の無料通信分(2万3825パケット)は、6サイトを閲覧したら突破してしまったという
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全国をカバーするドコモのネットワークを利用
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従量制と定額制の問題を解決するとした
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■ 「レイヤー2では、通信・品質をコントロールできる」
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常務取締役CMO兼CFOの福田 尚久氏
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質疑応答の時間では、レイヤー2接続の意義に質問がなされた。同社 常務取締役CMO兼CFOの福田 尚久氏は、公衆無線LANサービスでのワンクリック接続を例に、ID・パスワードをパソコン本体とひも付けた形で自動生成し、3Gのネットワークを経由して日本通信の認証システムで認証される仕組みを紹介。このような仕組みはレイヤー2接続で可能になるサービスとしたほか、「レイヤー2では、通信制御、品質制御を日本通信がコントロールできる。ある一定の装置を持てば、品質制御が可能で、キャリア以外も通信品質を管理できる。これは、NGNの課題に対するひとつの答えではないだろうか」とも述べ、レイヤー2接続による多様なサービス開発の可能性について語った。
三田氏が「マルチネットワーク」政策として、他の通信方式も取り込んでいく可能性に言及したことを受け、WiMAXのMVNOサービスに質問が及んだが、三田氏は「接続料金の提示は受けていないが、今の値段を見ていると、MVNOとしての参入は難しい。サービスが本格的に展開された上で交渉する必要があるだろう」との考えを明らかにし、現段階では参入に慎重な姿勢を見せた。
■ URL
ニュースリリース
http://www.j-com.co.jp/news/release/0903.html
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(太田 亮三)
2009/03/10 16:41
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