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総務省の谷脇氏、携帯市場へのオープン化導入の意義を語る

総務省の谷脇氏

総務省の谷脇氏
 29日、都内で携帯電話・PHS向けコンテンツプロバイダの業界団体「モバイル・コンテンツ・フォーラム」(MCF)によるセミナーが開催された。最初に登壇した、総務省事業政策課課長の谷脇 康彦氏は、国内の携帯電話市場における現状と、総務省の方針について説明を行なった。

 同氏のプレゼンテーションは、「オープン型モバイルビジネスの構築に向けて」と題したもので、垂直統合モデルで展開されてきた国内の携帯電話市場で、多様性をもたらすべく、オープン型(水平分業型)モデルを導入することを説明する内容となった。


成熟期を迎え、オープンモデルで正常化を目指す

 国内の携帯・PHS契約数が1億を超えて成熟期に入る中、キャリア別の市場シェアについて谷脇氏は「若干下がっているが、引き続き寡占度が高い」と評し、変化に乏しく競争の余地が多分にある状況と指摘。ARPU(ユーザー1人あたりの平均収入額)は、音声ARPUが減少し、データAPRUは上昇しつつも音声ARPUの減少幅をカバーし切れておらず、全体的に下落傾向にある。一方、国内の全てのコンテンツをあわせた市場規模のうち、携帯電話向けコンテンツは3.4%と低い水準で、成長の余地があるとされている。こうした現状を踏まえて、総務省では、垂直統合だけではなく、水平分業型のビジネスモデルを入れて競争環境を活性化させ、結果的に市場全体をさらに成長させる戦略を描いている。

 水平分業の一例として、販売モデルに触れた谷脇氏は「0円で携帯電話が販売されていたが、ARPUの1/4が販売奨励金の回収分だった。そのため、端末代金と通信料金をわかりやすく示す料金プラン“分離プラン”を導入するよう、昨秋各キャリアに要請した。あわせて期間付き契約も導入された。メーカーや代理店からすれば、急に端末の売れ行きが落ちるという懸念がある。しかし、我々はソフトランディングを目指している。いかにより良い形へ近づけるか模索していく」と説明した。

 また、同氏が「昨年からの残された課題」と指摘するのはSIMロックだ。国内の3Gケータイでは、SIMカード(UIMカード)という仕組みが取り入れられている。海外の2G方式であるGSMでは一般的な仕組みだが、顧客情報を書き込んだ小さなICカードで、端末内に設けられたスロットに差し込めば、その携帯電話を自分の電話番号で使える。しかし、国内キャリアが提供するほとんどの携帯電話は、その会社のSIMカードしか使えないようにロック(SIMロック)がかけられている。たとえばドコモの906iシリーズは、ドコモのFOMAカードしか認識しない。


 谷脇氏は「国内でSIMロック解除を導入しても、auは異なる通信方式であり、ドコモ・ソフトバンク間だけとなっても通話とショートメッセージ程度しか利用できないだろう。コンテンツに関してはAPIの共通化なども必要だ。2010年に結論を出したい」と述べる。

 谷脇氏は、SIMロックや販売奨励金は、携帯電話という新しい市場が立ち上がる際に大きなメリットがあったと認めつつも、「もともと1994年に携帯電話がレンタルから販売可能に自由化された段階で、総務省ではいろいろな形で販売した方が良いという方針を出していた。キャリア主導の販売奨励金モデルは、端末価格を安く見せて需要を喚起する役割はあったが、市場が成熟してくると正常化する必要があるのではないか」と述べて、分離プランの導入やSIMロック解除が今後の携帯電話市場にとって必要との認識を示した。

 オープンなビジネスモデルという視点は、昨年12月に割り当てられた2.5GHz帯の免許でも取り入れられた。WiMAXを推進するUQコミュニケーションズと、次世代PHSを展開する予定のウィルコムに対しては、免許割当への条件としてオープンモデルの導入が求められている。谷脇氏は「今後、700MHz帯、900MHz帯という重要な帯域での新規割当の話が出てくるだろうが、2.5GHz帯での措置はいわば試金石。700や900のときに同等のオープン化をお願いするかどうかは大きな課題になるだろう。2.5GHz帯の事業者に対する施策が機能するかどうか、注視したい」とした。

 このほか、フェムトセルの動向については「小型の基地局だが、導入されると不感地域対策にもなるし、FMC(固定・携帯の融合)サービスも提供できる。4月にガイドラインを示したが、ポイントはフェムトセルの販売制の導入だ。干渉などの課題はあるが、価格面での影響を考慮し、売り切り制を導入することにした。ただし、フェムトセルは固定網に接続されるため、固定と携帯で、どう責任を分担するのか、現在、次世代IPネットワーク推進フォーラムという場所で話し合っており、秋に出すフェムトセルのガイドラインに反映させたい」と説明した。


現在もっとも注力している「通信プラットフォーム」

 2007年を通じて総務省で開催されたモバイルビジネス研究会は、分離プランの導入などを提言し、国内の携帯電話業界に大きなインパクトを与えた。その流れを受け継ぐ研究会の1つが、同じく総務省内で開催されている「通信プラットフォーム研究会」だ。これは、携帯電話の通信部分において、課金や認証といった機能をどう取り扱うか検討する会合だ。現在は、ドコモユーザーはドコモが課金・認証を行なっているが、オープン化を進める上では、他社も課金・認証できる形にすることを含め、議論されている。

 谷脇氏は「現在、一番注力しているのが通信プラットフォームの連携強化。現在はキャリア自身が担っているが、他者が担う余地があるのかどうか。ざっくりと言えば、通信プラットフォームとは高速道路のようなもの。コンテンツはその上を通る自動車と言える。自動車が高速を通るときの料金所や交通管制センターのような役割を高速道路の所有者だけが持つのか、他者も使えるようにするのか。垂直統合モデルは、この点でよくできたモデルだが、他者も使える形になればネットワークとコンテンツの好循環になる可能性がある」とした。

 あわせて同氏は「固定系で、次世代ネットワークの導入に関して、認証や課金の機能を検討してきた。しかし今後、携帯と固定が連携するのであれば、認証や課金は一番キーになる部分。多様な連携のために、何が必要か考えたい」と述べた。


 これまで携帯電話の課金機能は、いわゆる公式サイトでゲームや着うたなどのコンテンツを購入する場合に利用され、携帯電話の利用料と一緒にコンテンツ利用料を支払う形になっている。一方、総務省が行なったユーザーアンケートの結果によれば、ユーザー側に一般サイトか公式サイトか、と区別する意識は少ないことが示され、谷脇氏は「公式サイトのビジネスモデルがどう変化してきているのか、あらためて検証する必要がある」とも述べていた。

 課金だけではなく、認証という点でもインターネットの世界では「OpenID」などの仕組みが提唱され、一部のWebサービスで導入されつつあるが、谷脇氏は「認証の世界は非常に重要な点。各国が最も重視している、戦略的な部分。これまでの垂直統合なモバイルの世界ではうまくIDや属性情報を使っている。しかしMNPがスタートした現在、キャリアを乗り換えても移行できるのは電話番号だけで良いのか。コンテンツなど他のサービスも引き継げるようにするべきなのか。このあたりも検討していく」とした。

 谷脇氏は、キャリアの枠組みを超えたコンテンツの引き継ぎを実現するために必要なポイントとして、APIの在り方やIDの連携なども重要とし、「このオプションがなければ、垂直統合から何も脱皮できない。もう少し通信プラットフォーム研究会で考えていきたい」と語っていた。

 このほか今後の動向としては、昨年話題になった固定系インターネットでの通信帯域制限に触れ、「これまではモバイルは念頭になかったが、今後は議論の対象になっていくだろう」と述べたほか、MVNOについても「海外では成功事例がVirgin Mobileしかないと言われるが、海外の動向云々よりも日本ならではのビジネスが出てくることを期待している」とした。



URL
  セミナー開催案内
  http://www.mcf.to/seminar_application_form/20080529.htm
  総務省 通信情報政策ポータル
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/joho_tsusin.html


(関口 聖)
2008/05/29 18:04


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