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レコ協が“適法”マーク運用開始、違法配信被害に歯止め

エルマークのデザイン。許諾を意味する「License」の「L」がモチーフ。「L」のデザインは、携帯電話やノートPCが開いている形態も表わし、3つの大中小のマルは配信される音楽などのコンテンツを示すという
 日本レコード協会(RIAJ)は19日、レコード会社が許諾した音楽配信事業者を識別するための「エルマーク」制度の運用を開始した。正規の音楽配信サイトにエルマークを表示することで、ユーザーが正規配信と違法配信を区別できるようにし、違法配信による損失に歯止めをかけることが狙い。

 RIAJは、PCおよび携帯電話向けの音楽配信事業者からの申請にもとづき、エルマークを無償で発行。エルマークは、配信事業者が運営するサイトのトップページおよびコンテンツの購入ページに表示する。トップページでは、マークとあわせて管理番号も表示する。違法配信事業者がマークを無断使用した場合は、マークの商標権者であるRIAJが使用差止請求を行なう。エルマークは、許諾を意味する「ライセンス(License)」の「L」がモチーフ。

 2月19日時点では、ナップスタージャパンやドワンゴなど110社の543サイトで導入が決定。ただし、国内最大の音楽配信サイト「iTunes Store」を運営するアップルは導入していない。今後は、国内約120社あるという配信事業者すべてに採用を働きかけるほか、映画配信事業者への導入も図る。なお、エルマークの付与対象は、ダウンロード配信サービスのみで、ストリーミング配信は対象外となっている。


エルマークの概要 エルマークの運用体制

エルマークの表示画面(携帯電話向けサイト) エルマークの表示画面(PC向けサイト)

エルマーク導入の背景には、「着うたはタダ」が当たり前の状況

ソニー・ミュージックエンターテインメント取締役の秦幸雄氏
 エルマーク導入の背景についてRIAJは、携帯電話向けの違法音楽配信が蔓延している点を指摘する。RIAJが2007年11月に公表した調査結果によれば、権利者に無断で携帯電話向けに音楽を配信する「違法サイト」について、ユーザーの83%が認知し、37%が実際に利用していた。また、着うた・着うたフルの違法ダウンロード数は、年間で約3億9,900万ファイルに上り、正規のダウンロード数(約3億2,700万回)を上回る状況だという。

 こうしたことからRIAJでは、加盟レコード会社で構成される「違法配信識別ワーキングチーム」を2006年3月に発足。2007年12月には、エルマーク使用許諾の申請受付を開始し、今回の運用開始にこぎつけた。ワーキングチームの座長を務めたソニー・ミュージックエンターテインメント取締役の秦幸雄氏は、エルマーク導入の必要性について次のように語る。

 「音楽ファンの間では『着うたはタダ』が当たり前。携帯電話の検索サイトで好きなアーティストや楽曲名を検索すれば、掲示板サイトなどから無料で入手できる。しかも、これらの楽曲が違法アップロードされたものであるという意識もない。現在は着うたの被害が中心だが、今後は携帯電話の通信網が大容量になり、インターネットとシームレスにつながる。そうした状況で、どんどんダウンロードされる状況は最悪。今なら何とかなるという思いで対策してきた。その一方で、無料ダウンロードはアーティストや作詞家、作曲家などに一銭ももたらさないという話をすると、理解を示して『ぜひ買います』というユーザーもいる。音楽を愛してくれるユーザーが、安心して購入できるようにするために、エルマークを普及していきたい。」


エルマーク導入の背景 エルマーク導入の目的

著作権法第30条の改正と識別マークをセットで違法配信対策図る

日本レコード協会専務理事の生野秀年氏

エルマーク導入の経緯には「著作権法第30条改正」
 RIAJ専務理事の生野秀年氏は、著作権法第30条が認めている「私的複製」の適用範囲の見直しが図られようとしていることも、エルマーク導入に至った要因であると説明する。

 現在、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」では、違法着うたサイトやファイル交換ソフトなどから、権利者に無許諾でアップロードされたコンテンツをダウンロードする行為を30条の適用範囲から除外し、違法とすることが議論されている。2007年10月には小委員会の議論をまとめた「中間整理」が提出され、その中で「30条の適用を除外することが適当であるとする意見が大勢であった」と記載された。

 また、この中間整理では、30条の適用範囲から除外する条件として、利用者が違法サイトであることを知らずに権利侵害してしまうことを防ぐための保護措置が必要であると記載。その保護措置の1つとしては、「違法サイトと適法サイトを識別できるよう、適法サイトに関する情報の提供方法について運用上の工夫」が求められている。今回のエルマーク運用開始は、中間整理の要求に応えるという側面もある。

 ただし、中間整理に対するパブリックコメントでは8,720通の意見が集まり、そのうち8割近くが、違法サイトなどからダウンロードする行為について、30条の適用範囲から除外することを懸念するものだった。

 これについては生野氏も認めるが、「基本的には利用者保護をどうするかに尽きる」と主張。中間整理に関するパブリックコメント後でも「(30条適用範囲の見直しは)オーソライズされた」との認識を示し、法改正とエルマーク普及をセットにして違法配信対策を図る姿勢を見せた。


「盗品」とわかってダウンロードすることが合法か

 19日に開かれた会見では、コンテンツを違法アップロードしたユーザーを送信可能化権で取り締まれば、著作権法改正は不要ではないかという指摘も挙がった。これに対して生野氏は、アップロードとダウンロードは表裏一体であると反論する。

 「コンテンツを違法にアップロードするから、ダウンロードする人がいるが、ダウンロードするからアップロードする人が出てくるとも言える。しかも、現実にはアップロードした時点では被害は生じない。ダウンロードによって、初めて権利者の被害が発生する。有体物であれば、『盗品』とわかって譲り受ければ違法だが、コンテンツも同じ。違法アップロードされたものをダウンロードすることが、堂々と『合法』と言えるのだろうか。」

 また、エルマーク導入による違法配信対策の効果について生野氏は、「違法対策は識別マークを普及させるだけでなく、さまざまな取り組みで実現するもの。まずは著作権法改正で利用者の行為規範を定めてもらい、違法配信の大幅な減少を目指したい」とコメントした。



URL
  ニュースリリース
  http://www.riaj.or.jp/release/2008/pr080219.html
  「エルマーク」公式ページ
  http://www.riaj.or.jp/shikibetsu/


(増田 覚)
2008/02/20 13:10

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