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ソフトバンク、第3四半期決算は大幅な増収増益 孫氏「今年はインターネット元年」と改めて強調
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連結決算のサマリー
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ソフトバンクは、2007年度第3四半期の連結決算を発表した。2007年4月~12月までの9カ月間の売上高は、前年同期比13.0%増の2兆587億円、営業利益は31.9%増の2,601億円、経常利益は107.9%増の2,319億円、当期純利益は324.9%増の931億円となった。
孫正義社長は、「すべての数字で好転している」と総括。「営業利益では、2,319億円のうち、572億円がAlibaba.com Limited上場の影響によるもの。実力値では1,747億円。それでも高い成長率を遂げている」と余裕を見せた。
移動体通信事業は、売上高が前年同期比20.3%増の1兆2,205億円、営業利益は30.3%増の1,479億円。
なお、ソフトバンクBBを中心としたブロードバンド・インフラ事業の売上高は前年同期比1.1%減の1,941億円、営業利益は56.0%増の302億円。ソフトバンクテレコムを中心とした固定通信事業は、売上高は1.5%減の2,714億円、営業利益は前年同期の23億円の営業損失から黒字転換し、17億円。ヤフーを中心とするインターネット・カルチャー事業は売上高が25.2%増の1,769億円、営業利益が20.8%増の837億円。イーコマース事業は売上高が2.9%増の1,951億円、営業利益は40.3%減の29億円となった。
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セグメント別売上高
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連結ベースの経常利益
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■ オペレーションデータ
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前年同期比で141万契約の増加
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この日、電気通信事業者協会から発表された1月の携帯電話加入者数で純増シェアで66%を獲得し、ナンバーワンとなったことを示し、「9カ月連続での純増数ナンバーワンを獲得した。昨年の9カ月間では、29万件の純増数だったが、この9カ月では170万件に増加し、12月までの9カ月累計でもナンバーワンとなっている」として、年度での純増数ナンバーワン獲得に意欲を見せた。
第3四半期の解約率は1.21%。そのうち、3Gの解約率は0.88%。「1年前には3%を超えていた。この解約率のままだと、年間で40%のお客が解約してしまう計算になる。つまり、いくら獲得しても、2年で獲得した利用者がいなくなってしまうという状況であり、経営効率が悪かった。それがいよいよ1%を切った。着実に好転している」と自己評価した。
3G契約者のうち、56%が「パケットし放題」の契約であり、今後、携帯電話のインターネット端末化が進めば、ますます「パケットし放題」の契約数が増加するとした。
また、基地局数は5万基地局に達しており、「接続率が高まり、これが純増数増加に繋がっている」とした。
さらに、CM好感度調査において、会社別/作品別/銘柄別の3つの項目で、昨年8月からの6カ月間で5回に渡り三冠王を獲得。「過去に2カ月連続という企業はあったが、これだけの期間において三冠王を獲得した例はない。これをさらに続けていきたい」とした。
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9カ月連続で純増シェア1位
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CMも好評
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継続利用以降が急激に上昇した
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乗換後の満足度調査でも好調な結果
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MNP開始時には最低だった継続利用意向も高まっており、最新調査で継続意向者の比率が86%に拡大したほか、乗り換えたあとの満足度でも、12月の調査ではauを抑えて初めて1位になった。
総合ARPUは4,520円となり、そのうち、データARPUは1,490円、音声ARPUは3,040円。
「割賦請求分を含めると、ARPUは5,520円となっている。昨年度の第4四半期が5,430円であり、それ以来上昇している。昨年度の第4四半期に底打ちしたとも判断できる。総合ARPUの減少を過剰に心配する必要はない」とした。
現在、3Gの契約比率は71.6%。HSDPAの人口カバー率は12月末時点で65.1%となった。
また、春の新端末の16機種中12機種がHSDPA対応とし、「1年前は4機種だったHSDPA対応が、現在では28機種に増えており、他社に比べて多い。さらに、ワンセグ対応機種では10機種、世界対応端末では7機種、有機EL搭載端末は3機種、色数では57機種と、いずれも我々の方が多い。機種が華やかではないとか、デザインが格好悪いとか、かつてのボーダフォンの残存イメージがあるが、数字の上では決してそんなことはない。今後も自由で個性的なものを出していく。認識を新たにしてほしい」と呼びかけた。
なお、先頃発表したディズニーケータイは、20代、30代の女性からの問い合わせが多いという。
■ NEC製端末の登場を予告
孫社長は、携帯電話端末メーカーとの関係についても言及した。
「当社はすべてのメーカーに対して、オープンである。ただ、この1年間は、シャープが頑張って、素晴らしい端末の提案をしてくれ、これに当社の技術陣も興奮した。また、ボーダフォン時代には何年間か取引のなかった松下電器が、力を入れた端末を開発し、改めて参入してもらった。それ以外のメーカーとも話を進めている段階」とし、「実は、NECから提案をしてもらったが、5分間で帰ってもらったことがあった。私は本音ベースで話をして、こんな端末ではお互いに恥ずかしくないかと、過激なことも言った。最近になって、出直しで持ってきてもらった端末が非常に良い。『なんだ、NECさんもやればできるじゃないか、早く持ってきてください』と言ったばかり。NECの矢野薫社長がゲキを飛ばして、良いものが出てくるようになった。近いうちにNECからすばらしい端末が出てくる」などとした。
さらに、「私自身が、全ての端末機の企画にのめりこんでやっているので、それなりの特徴と性能、アピールできる点がないと出さないという強い決意でやっている。単に品揃えを増やすのではなく、良いものを増やしていく。その最たるものが1,000万円のティファニーケータイである。トータルの商品価値をあげていく考えだ」とした。
■ フィルタリングへの取り組み
フィルタリングについては、ドコモがホワイトリストによって、70のサービスにしか接続できないこと、auも2,000の公式コンテンツにしか接続できないことを指摘。「ソフトバンクは、ブラックリスト方式でサービスインした。auがCMでアピールしている『auの庭においでよ』という言葉を引用すれば、ホワイトリストによるフィネルタリングは、まさに囲われた庭のなかで利用するという思想のものだ。ドコモの70サイトは、箱庭や盆栽のような小さな庭に過ぎない。ソフトバンクがブラックリスト方式を採用したのは、インターネット思想の会社であるから。ブラックリスト方式の方がインターネットの世界に合う。ホワイトリスト方式によって、県庁の災害情報のウェブサイトや、学校の先生が作ったサイトまで見れなくなってしまうというのは本末転倒であり、行き過ぎ。ソフトバンクは、ホワイトリストも用意しているが、ブラックリストをお勧めしている」と、考えを述べた。
■ 携帯事業に対する考え方
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ARPU
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孫正義社長は、携帯電話事業への取り組み方についても説明。「携帯電話の経営は、お客様の数×客単価(割賦販売分を含めたARPU)によって示されるが、ソフトバンクはまずシェアを増やすことに力を割いている」と、現在の戦略を位置づけた。
シェア獲得の手法として、ホワイトプランを用意し、1年間で約1,000万件以上の契約数を達成した実績を示しながら、「2月から、学生に限り、980円の基本料金を無料にするホワイト学割を開始した。これで契約した学生には、3年間で3万円以上の基本料を値引く計算になる。大学4年生が2月に契約しても、たとえ社会人になっても、3年間に渡って、このメリットを得られる。このプランを用意したのもシェア拡大策の1つ。ソフトバンクは、学生市場においては、7%のシェアしかない。残り93%のお客を獲得することが先決。他社がこれをやると、学生からの収入が激減するので検討しないのは当然。当社は弱者のメリットとして、既存ユーザーがいないところに打って出た」とした。
ホワイト学割の契約件数については、「初動はいい感触で動いている。3月がメインで動くだろう。認知の度合い、問い合わせなどの状況を見ると、想定したよりも良さそうだ」としたものの、「数字については、まだ公表できる段階にない」とした。
■ シェア拡大の後はARPU向上を
また、「シェアを拡大したのちのステップとしては、ARPUを拡大することになる。なかでもデータARPUを拡大することが重要である。当社は、他社に比べてデータARPUが低い状況にあることから、これを引き上げる必要がある。HSDPA対応機種や、フルブラウズができる大画面搭載機を投入するなど、データARPUの拡大に最適化した端末を用意し、コンテンツも増やしていきたい」とし、「2Gでは音声の収入が中心だったが、3Gではデータ利用頻度が増えている。そして、これからのBeyond 3G(3.5G/4G)の世界では、HSDPAの速度によって、さらにデータ通信を使ってもらえることになる。これは、実質的には3.6Mbpsという10倍の速度が実現できるからこそ、成り立つもの。今年は、インターネットマシン元年。携帯を使ったインターネット利用が一気に増えていく」と語った。
また、データARPUの拡大については、「インターネット利用が増加することで、ARPUはデータ定額の高い方が選択されるようになり、また、Y!ボタンによるワンタッチでのコンテンツ接続や、ヤフーオークションなどの支払いも携帯電話の利用料金と一括支払いできるようになるといった利便性の高まりもデータARPUを増やすことにつながる。さらに、技術進化などにより1パケットあたりの投資コストも下がるという経営面からのメリットも今後は見込まれる」とした。
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シェアを拡大し、ARPU向上を目指す
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データAPRUの向上で音声ARPUの落ち込みをカバー
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■ 「今年はケータイインターネット元年」
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孫氏は、携帯電話によるインターネット利用が主流になるとの見方を示した
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孫正義社長は会見の冒頭、「今年は、インターネットマシン元年である」とし、会見でも、この説明に時間を割いた。
「パソコンは年間2億7,000万台が出荷され、一日平均2時間程度利用されている。だが、携帯電話は年間11億台が出荷されており、ほとんどの人が24時間電源に入れっぱなしにして、個人それぞれが持ち歩いている。そうした状況を見ると、これからは携帯電話がインターネット端末になっていく。これまで携帯電話がインターネット端末になり得なかったのは、通信速度、画面のサイズ、CPUの速度という3つの問題があったからだ。だが、それが解決される条件が揃うのが今年であり、それが真っ先にやってくるのが日本である。HSDPAの速度が提供されることで、携帯電話でインターネットを利用する人が増加し、さらに利用頻度、利用シーンが多くなる。3Gの時代までは電話会社が中心の時代であったが、これからの3.5G以降は、インターネットの会社が中心になる。マイクロソフト、アップル、グーグル、ヤフーといった世界的プレイヤーが、今年から携帯電話の世界にインターネットを持ち込もうとしているのを見ても、それは明らかだ。ソフトバンクが携帯電話事業に参入しているのも、3.6Mbpsという通信速度の実現により、携帯電話がインターネットマシンと呼ばれるに相応しい環境を整えることに繋がり、同時にCPUの性能向上によって、Webブラウズをするのに相応しいレンダリング速度も実現できるからだ。これからは、コンテンツ、ポータル、インフラという3つの領域が重要になるが、世界を見回しても、これらをシームレスに提供できる企業が少ない。むしろ、フルセットで持っているのはソフトバンクだけである。PCインターネットの世界から、携帯電話インターネットの世界がやってくる。それが、いま訪れようとしている世界の大潮流である」と語った。
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3Gの契約数
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HSDPAによるデータ利用の拡大に期待感を示した
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さらに続けて、「もう1つの世界の潮流は、中国を制したものが、世界を制するということ」とし、「これまでは米国を制したものが世界を制するといわれてきたが、昨日の終値をベースに時価総額を算出しても、世界上位5社のうち、3社が中国。ここからも中国が重要な市場であることがわかる」と前置きし、「ソフトバンクは、中国に種を巻いてきた。Alibabaへの投資もそのひとつであり、すでに中国ナンバーワンのインターネット会社になった。さらに、ヤフージャパンを持つソフトバンクは、アジアナンバーワンのインターネット企業。アジアナンバーワンのインターネット会社が、世界ナンバーワンのインターネット会社であるという時代が、10年後、20年後にやってくる。また、携帯電話を押さえた会社がインターネットを押さえた会社になるということも、今後5年~10年後にやってくるだろう。アナリストのなかには、『ソフトバンクは通信カンパニー」と定義したい人が多いが、それは現在の姿。インターネット=ソフトバンクというのが、ソフトバンクの姿。今から10年前に、PC=インターネットと定義し、目先の利益は一切関係ないとして、投資を進めてきた。その経験から、インターネットの次の進化系として、ソフトバンクが捉えているのが、携帯電話=インターネット。ソフトバンクは、あちこち寄り道しているのでなく、デジタル情報革命を目指している。携帯電話事業も、アジア最大のインターネットカンパニーを目指す上での戦略の1つ」などとした。
中国における携帯電話事業参入に関する姿勢については、「何兆円もかけて、許認可を取るような形で投資するということは考えていない。別の切り口での事業展開があり得る」という。
■ 米マイクロソフトの米ヤフー買収について
今回の会見では、マイクロソフトによるヤフー買収提案の動きに関する質問が数多く飛んだ。
孫社長は、「米ヤフーの株主構成がどうなるかわからない。ジェリー・ヤンもわからないはずだ。これから真剣に米国のヤフー取締役会が検討することになる。どこが望ましいというのはノーコメントである。ただ、米ヤフーは、ヤフージャパンの株式を3分の1、中国のAlibabaの4割を持っているという資産がある。それはソフトバンクから見ても同じだ」などとした。
買収合戦のなかにソフトバンクが参入するかどうかについては、「なんでもあり得ると思うが、今はそういうことは考えていない」と否定した。
また、グーグルについては、「中長期の戦いのなかで、グーグルがキープレイヤーの1社であるということは変わらないといえ、注視すべき相手になる。ただ、グーグルは、中国でも日本でもナンバーワンではない。韓国でもナンバーワンではない。アジアのなかでは我々の方が先行している。アジアを守ることが、我々の強みを発揮することに繋がるのではないか」とした。
さらに、YouTubeについては、「YouTubeに対抗するサービスを、違法コンテンツがあってもやるかどうかを議論したことがあったが日本のテレビ局が猛反対するであろうことや、これに伴う訴訟によって手間取ること、そして、思想として違法コンテンツを扱うのは良くないとして、見送った経緯はある。放送局のどこが先に放送を開始したか、どこが最初の自動車を開発したかということは今では関係がない。インターネットの世界も、今後50年続いていくなかで、勝ったり、負けたりといったことが起こるだろう」とした。
■ URL
ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/
(大河原克行)
2008/02/07 21:22
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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