マイクロソフトは21日、月例としている記者向けのセミナーを都内で開催した。今回はWindows Mobileに焦点が当てられており、今後の市場動向、ユーザー動向などが明らかにされた。
■ IDC木村氏、国内携帯電話市場の動向を予測
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IDC Japan コミュニケーションズ シニア・マーケット・アナリストの木村 融人氏
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四半期ごとと年次の国内携帯電話出荷台数。2008年以降は出荷台数拡大にブレーキがかかると予測
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Windows Mobileなどのスマートフォンを含む携帯電話市場の動向については、IDC Japan コミュニケーションズ シニア・マーケット・アナリストの木村 融人氏が登壇し、同社の調査資料に基づいて市場の動向が解説された。
木村氏はまず、国内携帯電話の出荷台数実績を最新の2007年第3四半期のデータまでで示した。同氏は、出荷台数が四半期ごとに1,000~1,400万台の間で推移している点を挙げ、直近の出荷台数も悪くはないとするものの、「四半期ごとの上下がかなり激しい。他品種少量生産の流れで、キャリア自体も受けるものがなにか、読みにくくなっている。ユーザーが差別化を求めている反面、コントロールも難しくなっている」と分析した。
年次の出荷台数については、2007年までは5,000万台程度で好調に推移する一方、2008年以降は年間4,000台前後に止まるという予測を示した。同氏はこの理由について、「販売奨励金の一連の問題や、2年契約といった流れで、将来的には渋めになる」と説明し、各キャリアが導入し始めた新たな販売方法や長期契約の施策が出荷台数に影響するとの見方を示した。一方で同氏は、「ただし、新しい方式が続くかというと、展開が変わることもあり得る。そういう意味ではこの予測も今後ずっとこのままではないだろう」と付け加え、新たな局面を迎えれば市場予測も変わるとした。
木村氏からは、国内の携帯電話ユーザーを価値要求で分類した分析も紹介された。その中では、機能・品質を求める度合いと、価格を追求する度合いの2つ軸から、ユーザーが3種類に分類されて解説された。
これまでの国内市場では、販売奨励金があり店頭価格の安い端末が多かったことから、機能・品質を追求し、なおかつ価格(の安さ)も追求する層が一般的だったとする。一方で、ソフトバンクの「0円」を前面に押し出した施策などにより、とにかく価格の安さを追求する層も注目を集めているという。
同氏は、残りの一つである、価格よりも機能・品質をまず追求する層が、これまでも多くはないとするものの、「私の調査では以前よりも増えてきている」と指摘し、これら3つの層がバランスよく拡大していくのが望ましいと語った。
2008年については、3つの注目ポイントが挙げられた。一つ目は販売奨励金の見直しなどによる販売方式の変更、二つ目は低料金サービスの激化、三つ目は端末販売競争の激化による市場淘汰の可能性だ。同氏はこれらを挙げて「ややネガティブな要素も多いが、悪いニュースばかりではない。スマートフォンの認知度は上がってきている」と述べ、勢いが増しているスマートフォンの可能性に言及した。
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法人のニーズを調査した結果も紹介
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スマートフォン拡大のポイントについて木村氏は、「キラーアプリひとつでは解決しない。いくつかを組み合わせないといけない。需要はあるので、どう導くのかがポイントになる」として、法人を対象に調査したスマートフォンに対するニーズを紹介した。同氏は法人のニーズがさまざまなシステムとの互換性や汎用性にあるとして、マイクロソフトにも優位性があるする一方、すぐに欲しいといったシステム開発の効率化が要求されるとし、これらの需要を「キャッチしてシステムに組み込めるベンダーは限られるだろう」と述べた。
また、法人需要拡大への「橋渡しになる」として、個人ユーザーへの普及についても触れ、「これがあればいい、というものではない。技術とプロダクトと価格、プロモーションなどを組み合わせるのが重要。コアユーザーは要求が高く、ブラウザ機能などもアップグレードし続けなければいけない。薄型化や価格も重要。どうやって使うのか、その価値は? といったことをしっかりとプロモーションする必要がある」と語り、さまざまな要素を含めた形で訴求していくことが重要であるとした。
■ マイクロソフト古川氏、Windows Mobileユーザーの動向を明らかに
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マイクロソフト マーケットリサーチグループの古川 淳一氏
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マイクロソフト マーケットリサーチグループの古川 淳一氏からは、同社の調査によるWindows Mobileユーザーの動向や、一般の携帯電話ユーザーと比較した調査結果が明らかにされた。
ユーザープロフィールやパソコンへの精通度、年齢分布では、まず男女比率において、これまで男性が大半を占めるWindows Mobileユーザーで女性の比率が高まっているというデータが示された。年齢についても20~30代のユーザーが増加傾向にあり、女性や若い世代で拡大しているとした。
保有台数やARPUの比較では、Windows Mobileユーザーは45%が携帯電話端末を複数台持っており、現状ではデータ通信と音声通話を端末で分けて利用されていることなどから、1台に集約する意向も31%にとどまっている。ARPUの比較では、携帯電話のみを持つユーザーのARPUに比べて、Windows Mobileユーザーが持つ携帯電話のARPUが高くなっているとする調査結果もグラフで示された。
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Windows Mobileユーザーのプロフィール
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保有台数やARPUを一般携帯電話ユーザーと比較
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このほか、Windows Mobile端末の購入時の動機では、携帯電話と比較してパソコンとの連携機能が重視されている点や、利用意向としてパソコン向けWebサイトの閲覧に高い魅力を感じているとするデータが紹介された。一方で、Windows Mobileユーザーは音声通話の利用意向も高く、携帯電話としての利用に魅力を感じているユーザーも多いという。
認知度では、携帯電話ユーザーの61%がWindows Mobile搭載端末を認知しており、また40%がOSとしてのWindows Mobileを認知していた。Windows Mobileに興味がある、としたのは全体で30%となるが、認知者では76%になり、「ポジティブな数字と捉えている」(古川氏)との見方が示された。
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Windows Mobileユーザーの利用意向
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認知者の興味の高さに言及された
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■ HTC田中氏、国内市場の拡大に意気込み
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パネルディスカッションの様子。左からマイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部長の梅田 成二氏、HTC田中 義昭氏、IDC 木村 融人氏
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古川氏からの解説が終わると、IDCの木村氏のほか、HTC Nippon ビジネス・ストラテジー&マーケティング本部 ディレクターの田中 義昭氏を加えてパネルディスカッションが行なわれた。
その中で、国内市場の手応えを聞かれたHTCの田中氏は「長らくPDA市場は低迷してきたが、拡大してきたという手応えはある」と答え、外国企業として日本市場に参入した点では「日本市場は要求が高いが、これは良いこと。我々はスマートフォン専業メーカーで、グローバルのスケールメリットが活かせるのがスマートフォン。比較的すんなり参入できたかなと思っている」と感想を述べた。
今後のトレンドを聞かれた木村氏は、端末メーカーの競争激化を予測。「ユーザーニーズもあるので、ハイエンドの市場を開拓していくようなチャレンジをして欲しい」と語るとともに、「カギになるコアユーザーを拡大していくかが重要。ブラウザ機能やユーザーインターフェイスの検証・改善、端末の速度など継続的に改善していく必要がある」とした。
海外市場と国内市場の差について、木村氏は「国内では、携帯より上、パソコンより下という間の需要がある。海外では携帯の機能が国内ほど向上していないので、スマートフォンがそこに大きくはまった。また、海外ではスマートフォンを持っているのがステータス、という位置付けもある」と海外市場の事情を紹介。「国内でも市場が無いわけではない。例えばベリースマートフォン、リアルスマートフォンとかいうように、何か特徴を光らせた別カテゴリーを作ってもいいのではないか」と語り、新たな市場開拓に期待を寄せた。
技術的な挑戦という意味では、田中氏から新たなユーザーインターフェイスの開発が紹介されたほか、スライド式やフルキーボード搭載、あるいはタッチパネルのみといった、さまざまなニーズに合わせて端末ラインナップを拡大していくという方針が示された。また、キャリアブランドに加え、SIMロックフリー端末として自社ブランドでも展開している点については、「自社ブランドの端末は実験的な意味合いがあり、キャリアとのパートナーシップが重要。自社ブランドは、キャリアブランドの端末にない需要をカバーするもの」との方針が明らかにされた。今後についても、「もっと触ってもらい、いろいろな使い方を提案し、使い方を含めたプロモーションを展開していきたい」とし、国内においても引き続きスマートフォン市場の拡大に注力していく姿勢が明らかにされた。
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会場にはHTC製の端末も展示。これは手帳型のSIMロックフリー端末「HTC Advantage X7501」
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ソフトバンクのX02HT
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■ URL
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/japan/
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・ Windows Mobile 5.0と徹底比較
(太田 亮三)
2007/11/21 15:53
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