新潮社は、PCおよび携帯電話向けに配信する月刊コミック誌「デジコミ新潮com2(コム・コム)」を3月23日に創刊する。料金は350円からで、話数単位での販売も行なう。
■ PC・携帯電話向けに配信する月刊有料コミック誌「コム・コム」
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「デジコミ新潮com2」創刊号表紙
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コム・コムは、2001年5月に創刊した「週刊コミックバンチ」に続き、同社2番目となるコミック誌。PCおよび携帯電話向けの配信事業者を通じて、毎月第1金曜日(原則)に最新号を配信していく。主な読者層は、コミックや小説を読んで“物語世界”に浸ることが好きな社会人層を中心に想定しているという。
同誌では、新潮社が持つ豊富な小説を原作・原案としたコミック作品を中心にラインナップ。創刊号では、黒武洋原作の「パンドラの火花(近藤崇、村上もとか監修)」や酒見賢一原作の「陋巷に在り-顔回伝奇-(羽生生純)」をはじめ、吉野万理子原作の「雨のち晴れ、ところにより虹(上田俊衣、村上もとか監修)」、伊坂幸太郎原作の「オーデュボンの祈り(木村哲也)」の4作品を用意した。
また、海外作家特別連載作品として韓国人作家を起用した「タロガヌリ(Woonaggy & Donguri)」、新人特別読み切り「月のナイフ(釣巻和)」、特別読み切り「峠(高寺彰彦)」の3作品も収録される。なお、創刊号のページ数は約200ページ。
配信事業者は、PC向けがイーブック イニシアティブ ジャパンの「eBookJapan」で、携帯電話向けがイーブックの「eBookJapanコミック」、NTTソルマーレの「コミックシーモア」「コミックi」、ビットウェイの「Handyコミック」。各社ともに特集ページを用意するほか、eBookJapan(PC版)では作家や編集者の近況コーナーなどを設けたコミュニティページを5月に開設する予定だという。
料金は、連載と読み切り作品を販売する雑誌スタイルの「まとめ売り」が350円からで、携帯電話ではHandyコミックでのみ購入できる。また、年4回程度の配信を予定する増刊号では価格設定が異なるという。
連載作品を1話単位で購入できる「連載ばら売り」は1話80円で、携帯電話では1話を2ファイルに分けて各40円で販売する。また、読み切り作品を単体購入できる「読み切りばら売り」は携帯電話向けにのみ販売され、料金は1ファイル40円。なお、配信時のデータ加工は各事業者が行なうため、複数の事業者が配信を行なう携帯電話ではサービスごとに閲覧時の演出が異なる場合がある。
新潮社では、3月23日からの創刊当初のダウンロード数をPC・携帯電話の合計で月間3万件と想定し、2年後には10万件へと拡大したい考え。PC版に関しては海外からの購入も可能だが、韓国語版とシンガポールを中心とした中国語版を早期に提供し、北米を中心とした英語版も2007年度内に提供を開始するとしている。このほか、連載作品の単行本化も連載が終了する前後に行なっていくという。
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パンドラの火花
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陋巷に在り-顔回伝奇-
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雨のち晴れ、ところにより虹
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■ 新人作家を積極的に登用。増刊号では著名作家の作品掲載も予定
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編集長の鳥飼氏
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創刊に先立って新潮社では、3月20日に発表会を開催。PCおよび携帯電話に特化したコミック誌創刊の意図などの説明が行なわれた。
コム・コム編集長の鳥飼拓志氏は、デジタルコミックとして同誌を創刊する点に関して「ある調査ではインターネットを1日3時間以上利用する割合が46%、1時間以上に至っては全体の92.5%に上っている」と説明。また、「インターネット以外にも携帯電話でも電子書籍が読むことが可能で、コミックの読まれ方も時代とともに変化している」と付け加える。
その上で同氏は、「PC版では国外からの利用も可能で、当社が保有する豊富な小説ラインナップを原作とした良質な作品を楽しんでいただけると思う」と発言。「紙媒体と異なり、特定の作品が読みたいという層にも対応できる。最新号以外もバックナンバーとしてアーカイブ化するため、読者が読み始めたその時が創刊とも言える」と、デジタルコミックならではの特徴を説明した。
また、「新人作家の作品発表の場が少なくなる中で、コム・コムでは積極的に新人作家が描ける場を提供していきたい」とコメント。鳥飼氏は「原作を使ってコミックを連載していくことで、物語のトレーニングになるのではないか」と、新人作家の活躍の場や育成環境としての役割をコム・コムで提供していきたい考えを示した。また、増刊号では「皆さんがオッと言って貰える、著名な作家陣・作品を掲載できれば」とした。
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「パンドラの火花」原作の黒武氏、作画の近藤氏、監修の村上氏
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発表会には、「パンドラの火花」の原作者である黒武洋氏と、作画を担当する近藤崇氏、監修の村上もとか氏も出席。近藤氏、それに「雨のち晴れ、ところにより虹」の作画を担当する上田俊衣氏は、ともに村上氏の「MCOプロダクション」に所属しており、村上氏の監修を受けながら、コム・コムで連載を行なっていく。
村上氏はコム・コムに期待を示すとともに、「日本の漫画を支えているのは、編集者や作家の存在以上に、レベルの高い読者がいること」とコメント。「こうした期待に応えられるように、熱気を持って取り組んでいきたい」と抱負を述べた。また、近藤氏は「作画を進めている第4話までは、原作に助けられている部分がある」と述べる一方で、「今後は漫画ならでは、デジタルならではの要素を表現できれば」と意気込みを語った。
コム・コムでは、月刊誌ベースで350円からの有料配信形式を採用している。デジタル配信を行なっているコミック誌では、双葉社の「COMIC SEED!」やフレックスコミックスの「FlexComix ブラッド」のように購読無料の雑誌が少なくない。
鳥飼氏は「有料配信を決定したのは、手前味噌になるかもしれないが課金に足る作品が準備できたため」と説明。また、収益モデルに関しては「コム・コムの創刊号にはスポンサーや広告は一切載っておらず、読者からいただいた購読料で収益を確保していきたい」と語った。
なお、3月23日の創刊段階ではイーブックなど3事業者を通じて、配信が行なわれる。ただし、「デジタル市場は年々加速度的に伸びていることから、半年や1年、2年と長期的な市場動向を見ながら提携する事業者を拡大する場合もある」とした
■ URL
新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/
eBookJapan
http://www.ebookjapan.jp/shop/
NTTソルマーレ ニュースリリース
http://www.nttsolmare.com/press/2007/0320.html
ビットウェイ ニュースリリース(PDF)
http://www.bitway.co.jp/newsrelease/pdf/NR_070320.pdf
(村松健至)
2007/03/20 20:40
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