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KDDI小野寺社長、販売奨励金廃止やSIMロック解除には疑問

小野寺正社長

小野寺正社長
 KDDIは3月14日、定例の社長会見を開き、同社の小野寺正社長が携帯電話市場における国際競争力に関しての見解を述べるとともに、それに関連する形で、総務省が主導となり、業界全体で議論している販売奨励金廃止やSIMロック解除、そしてMVNOに対する考えに言及した。

 小野寺氏は冒頭、携帯電話市場の現状について説明し、「携帯電話市場は、他の製品に比べても短期間で普及した背景には、販売奨励金を背景にした低価格で端末が提供できるという仕組みがあったため。また、加入者数の伸びは鈍化しているが、端末の高機能化とサービスの多様化によって、年間5,000万台という高水準で、端末機が販売されている。この多くは機種変更だが、新しい端末を気軽に購入できることが要因」と位置づけた。

 また、移動体通信事業者3社の営業収益は1.3%増と横ばいであるのに対して、コンテンツの売上高は1.4倍となっていることを示し、「当社の着うたフルもこの1年間で1.6倍以上に、電子書籍では4.6倍以上に達している。市場調査でも、通話、通信料の市場規模が6兆9,000億円であるのに対して、端末やコンテンツなどそれを取り巻く市場規模は倍の11兆6,000億円になる。また、そこからの経済波及効果を含めると26兆8,000億円となり、日本のGDPの5%を占める。こうした新たなサービスが急速に普及し、低価格で最新の端末が普及するのは販売奨励金のメリット。今までのやり方には疑問があるのは確かだが、携帯電話の需要を拡大しているのは明らかだ」とした。

 販売奨励金は、長期間利用しているユーザーには不公平感があるとの指摘があるが、これに対しては、通信料金に応じたポイント還元制度の導入、機種変更時に利用期間に応じた販売奨励の設定を実施。「現状でも一定の公平性を担保している」とした。

 同氏は、「通信事業者が、通信料金や契約期間を定めることが可能との見解が示されたと認識している。その上で、通信料金や携帯電話端末の利用期間のパッケージ化など、お客さまに納得していただけるピジネスモデルを検討してきたい」と語った。


移動体関連産業のひろがり 販売奨励金モデルについて
移動体関連産業のひろがり 販売奨励金モデルについて

国際競争力の議論に疑問

何を指して「国際競争力の強化」とするか

何を指して「国際競争力の強化」とするか
 今回の定例会見で主題とした「国際競争力の強化」について、小野寺氏は、「どの観点で、国際競争力の強化を目指すのか。それを明らかにしておかないと、取るべき施策が逆になることもある」と前置きし、それを踏まえた上で、販売奨励金制度廃止やSIMロック解除に関しても議論していくべきとの考えを示した。

 携帯電話市場における国際競争力として、同氏は、(1)モジュール、部材分野での競争力維持、(2)日本の携帯端末メーカーのシェア拡大、(3)日本のブランドによる携帯端末の展開、(4)日本のサービス・ビジネスモデルの世界展開、(5)日本発の技術を国際標準にする――の5つがあるとし、「現時点では、表示装置やセンサーでは、日本の部材メーカーは4割のシェア、バッテリーでは7割のシェアを持っている。モジュール、部材では国際競争力を持っている。一方、日本の携帯電話メーカーのシェアはすべてをあわせても1割程度。国際競争力が弱い」とした。

 その上で、「日本の携帯端末メーカーのシェア拡大を国際競争力の強化だとして、モバイルビジネス研究会では販売奨励金の廃止とSIMロックの解除が端末メーカーの競争力を強化するというような議論がなされている。しかし、部材、モジュール分野での競争力維持を国際競争力の強化の前提とするのであれば、販売奨励金によって、先端技術を搭載した端末が普及し、これによってビジネスを拡大するということこそが、メーカーの競争力の資していると考えている。国際競争力は、中長期的な視野に立って考えることが大切であり、今後のPCのように標準化される技術が活用されることになるであろう、携帯電話端末そのもので国産競争力を強化するよりも、部材、モジュールでの強みを堅持した方が、日本の経済のためにはいいだろう。こうしたことを真剣に考えた上で取るべき施策を議論しなくてはならない」などと語った。


メーカーのシェア拡大と部材・モジュール分野での競争力 サムスンの事例
メーカーのシェア拡大と部材・モジュール分野での競争力 サムスンの事例

技術の標準化ではドコモを牽制

MVNOの事例

MVNOの事例
 また、標準化に対する意見についても触れ、「欧州の通信事業者は、相互接続性の確保や低価格端末といった点で姿勢が一致しており、それを端末メーカーに要求として出している。しかし、日本においては、通信事業者がそれぞれに勝手なことを言っている。一部の通信事業者は、第4世代の標準技術に自らの技術を押しつけようとしている。まるでメーカーのようなやり方だ。その姿勢を変えるところからやらなくてはならない。かつて、PDCで一本化した際に、ドコモは技術開発で先行し、標準化した段階ですぐにサービスを開始できた。パケットもそうだった。たからこそ、当社はPDCから逃れた。第4世代はできれば一本化できればそれに越したことはない。しかし、同じようなことにならないように、技術をオープンにして、公平に競争する環境が必要だ」などと、ドコモを強く牽制した。

 一方、MVNOに関しては、「本来、MVNOの意義は、当社のような回線を持つMNOでは創出できないような付加価値のあるサービスを提供し、業界全体として、顧客のニーズにきめ細かく対応することにある。そうした点では、協力関係は不可欠」とするが、「MVNOとMNOが相互理解を深めた上で、ビジネスベースで条件を決定しないと、相互に新たな付加価値を提供できなくなる。新たなシステムを導入して、回線の有効利用やコスト削減を図ろうとしても、MVNOが端末を変えないと言い張り、それが足かせになるようだと、顧客に価値を提供できなくなる。当社では、すでに、いすゞ自動車の高度運行情報システムのみまもりくんオンラインサービスを、いすゞ自動車をMVNOとして契約しているが、これはいすゞ自動車にとっては、本業のトラック製造、販売の付加価値として新たなビジネスチャンスを広げるものであり、当社にとっても、ネットワーク環境を圧迫することなく提供できるもの。こうした関係が築ければ、MVNOの参入には大きな価値がある」とした。



URL
  KDDI
  http://www.kddi.com/
  モバイルビジネス研究会(総務省)
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile/


(大河原克行)
2007/03/14 19:10

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