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ドコモ中村氏(左)と、マクドナルド原田氏(右)
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NTTドコモと日本マクドナルドホールディングスは、国内のマクドナルド店舗で「iD」と「トルカ」を2007年10月より順次導入すると発表した。あわせて両社では、新会社を7月に設立する。
26日、都内で記者会見が開催され、日本マクドナルドホールディングス代表取締役会長兼社長兼CEOの原田泳幸氏、NTTドコモ代表取締役会長の中村維夫氏が出席し、業務提携の意義などを説明した。
■ 業務提携の内容
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業務提携の内容は主に3点
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まずマクドナルドでは、Webサイトや携帯サイト、クレジットカード(マックジョイクラブ)で展開してきた会員組織に加えて、10月頃を目処に新会員組織を設立する。旧会員組織のユーザーに対しては、新組織への入会を勧めていく。
同時期より、全国のマクドナルド店舗で「iD」と「トルカ」が順次導入される。まずは都市部の店舗を中心に導入され、iDでの決済やトルカでの電子クーポン配布を行なって、その効果を確認した後、マクドナルドでは「一気に(導入スピードを)加速したい」(原田氏)という。
あわせて両社では、それぞれのノウハウを結集させることや、新会員組織向けプロモーションなどを手掛ける新会社を設立する。社名や代表者は未定だが、資本金は3億円になる予定。株式の70%はマクドナルド、残り30%はドコモが保有する。新会社の設立理由について、原田氏は「社内でも議論したが、両社が保有する顧客基盤と事業ノウハウをしっかりとコミットしあって連動させていくべきと考えた。新会社を設立することで速やかな運営が可能になるだろう。変な言い回しかもしれないが、“結婚しなければ子供はできない”というのが我々の提案だった」と述べた。
■ 経営のスピードアップ目論むマクドナルド
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原田氏は経営のスピードアップが至上命題とした
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原田氏は「現在、日本マクドナルドは年間14億人に食を提供している。マスの極みと言えるスケールでビジネスを展開しているが、その分、経営の舵取りのスピードが課題だ。いかにリアルタイムに現状を把握できるか。それが経営的視点での命題であり、Eマーケティングのインフラが課題に向けた施策の1つになる」と語る。
同氏は、マクドナルトのビジネスモデルについて、「売上は客数×客単価。だが、単価はある程度上限がある。そこで客数増加が命題と言え、新規顧客の来店頻度をいかに上昇させるか、という点が継続的成長に欠かせない。そのために必要なものは、一言で言えば“利便性”になる。可能な限りできたての商品を提供したり、100円メニューを充実させたりするなど、客数を大幅に回復させて8年ぶりに売上が上がってきたが、さらに増やしたい」と説明した。
マクドナルトでは、新聞の折り込みチラシや街頭などでクーポンを配布している。原田氏によれば、年間に配布するクーポンの数は3,000万に及び、その配布にかかるコストは多大なものだという。同氏は「クーポンの有無によって、売上は大きく異なる。実際にクーポンを発行するまで、実は数カ月単位で準備を重ねている。また新聞など古い仕組みで限られたエリアでの配布になっている」と現状のクーポン制度は、売上に大きな影響を与える一方、スピーディな展開には向いていないと述べた。
同氏は、「紙のクーポンを突然なくすことはできないが、電子クーポンによって、たとえば雨天時に地下街の店舗が地理的に近いユーザーにクーポンを配布することもできる。ランチタイムは来店数が非常に多いが、(電子クーポンによって)他の時間帯の収益を改善できれば一日あたりの収益改善にも繋げられる。顧客普及率と来店率が即時に把握できれば、強力で効率的なプロモーションができる。スピードが売上を拡大する、その原動力になる」と述べ、今回の提携ではトルカによる電子クーポン導入の効果が大きいとの認識を示した。
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今回の提携を通じ、マーケティング活動のスピードアップを目指す
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携帯活用のマーケティング
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それぞれの顧客基盤とノウハウを活かす
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原田氏は「アイデアはどんどん出てくる。現在、新メニュー開発後は、対面で感想を求めるという形だが、今回の提携でさらに効率的に調査することもできるだろう。電子決済であれば個々人のIDごとに購買傾向がトラッキングでき、質の高いリサーチに繋がると思う。当社のターゲット層は全国1億3,000万人で、今回の提携は大きな可能性を持っている」とした。
また、今回の提携の背景にも触れ「モデルとしては、ドコモさんにロイヤリティを払うことになり、当初(NTTドコモ執行役員の)夏野氏と話したときには『うちは薄利多売だから赤字になる』と答えていた。その後、じっくり考えた結果、電子クーポン、電子決済のような流れはもはや止められない。拒否すれば生き残れないと考えた。ロイヤリティを払ってもなお、経営のスピードアップやリアルタイム性、ターゲットを絞ったマーケティングや効率などといった点で必ずプラスになると信じているし、そうなるようにしていく」と説明した。
■ おサイフケータイの現状、そしてドコモのメリットは?
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小額決済を狙うiDにとって、期待が持てるとした中村氏
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中村氏は、「国内の携帯電話は1億台を超え、我々は携帯電話の生活インフラ化を目指している。当社のおサイフケータイは1月末時点で1,900万台、年度内には2,000万台に達するだろう。おサイフケータイが利用できる店舗数は約20万2,000台だ。このうち、iDについては、リーダーライターは約11万台、会員数は173万人、参画カード会社は51社に達している」とおサイフケータイや、「iD」の現状が紹介された。
同氏は、「コンビニエンスストアやスーパー、タクシーなどは、iDが狙う小額決済分野。いわゆる日常生活に密着する部分で、今回の(マクドナルドとの)提携は非常に意義深いと考えている」とコメントした。
提携に対して期待する点として、中村氏は「特にトルカ。既に市場に出ているが、まだ未知数なところがある。どの程度トルカの力が発揮できるのか。新会社を設立するというのは、そのあたりを含め、徹底的に追求したいということ」とした。
他キャリア・他の外食産業については「まずは、こういうやり方がユーザーに受け入れられるかどうか、ということ」と述べ、ドコモとマクドナルドに限らず、オープンな形で進めていくとした。
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ドコモのおサイフケータイは1,900万台に達した
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iDユーザーは173万人に
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■ URL
ニュースリリース(日本マクドナルド)
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2007/release-070226.html
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/20070226.html
(関口 聖)
2007/02/26 19:54
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