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頭を下げる孫氏
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ソフトバンクモバイルは、携帯電話番号を変えずに携帯電話会社を変更できる、いわゆる携帯電話の番号ポータビリティ制(MNP)に関して、同社のシステムに起因する障害でMNPの受付が停止してしまった件で、記者会見を開催した。
同社の代表執行役社長兼CEOの孫正義氏は冒頭、「番号ポータビリティの受付業務に関してお客様が殺到したために、受付業務のシステムが一時障害を起こし、大変多くのお客様にお待たせすることになった。その結果、我々だけでなくドコモ、auにもご迷惑をおかけたしたことをお詫びしたいと思います」とコメントし、軽く頭を下げた。なお、システムは見直され、30日には正常通りスムーズに流れているという。
■ 障害の原因と対処法
ソフトバンクのシステムは、同社顧客向けの業務システムと電話を開通させるシステム、MNPシステムで構成されている。ソフトバンクのユーザーになる場合は、業務システムに発注がかかり、そこから開通システムにデータが渡され、電話が利用できるようになる。逆に、他社へ移行する場合は、ドコモやauからMNPシステムに情報が流れ、業務システム、開通システムと流れてMNPシステムへ渡り、他の事業者に情報が伝わる。
ソフトバンクでは、今回の原因について、家族割引のユーザーが転出する際に業務システムに遅延が生じ、業務システムの処理が追いつかなくなったことによるものと説明している。業務システムに遅延が起こったことで、そこを通らなければ他社への乗換えができないために、ドコモやau側ではMNPシステムから先に進めなかったことになる。
28日の夕方、まず一回目の障害が発生。17時45分に全ての登録業務を停止したソフトバンクは、処理効率を高めるためにシステム設定を見直しを実施、システムの処理能力を2倍程度に増強したという。
しかし、29日には前日の影響で、早朝より各種申込処理が大量に発生し、再び遅延が起こる。同社は12時10分にMNPに関する受付業務を停止し、MNP以外の業務は継続した。
29日には、MNPの処理を優先するために、従来の他事業者へ乗り換えるフロー「MNPシステム→業務システム→開通システム→MNPシステム」を見直し、30日から、業務システムを通さずにMNPシステムから直接開通システムとやり取りする方式に変更した。こうした見直しの結果、30日は滞りなくMNPが行なえるようになったという。孫氏は「我々の業務システムの混雑がほかに影響を与えない仕組みにした」と述べた。
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これまでのシステム
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30日以降のシステム
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■ 11月1日~5日は機種変更手続きなどを中止
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11月5日までの対応
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なお、30日より、ピーク時(11時~13時、17時~19時)についてはMNPの作業を優先する。ソフトバンクからドコモやauに乗り換えるユーザーは、待たされることなく移行作業が行なえるという。ソフトバンクのシステムの稼働時間は、転出作業(ポートアウト)が21時20分まで、転入作業(ポートイン)が19時まで受け付ける。ショップでは、システムの稼働時間を見越して、この時間より少し早く当日の受け付けを終了するものと見られる。
また、ソフトバンクが発表した新料金プランでは、最大数カ月の無料期間が用意されている。11月は月初に連休を控えており、混雑も予想される。このためソフトバンクでは、11月1日~5日にかけてMNPと新規契約のみを受け付ける。解約や故障は対応するが、機種変更や料金プランの変更、買い増し、家族割引といった申し込みはこの間停止する。MNPを使った新規受付は19時まで、通常の新規契約や解約処理は20時まで対応する。
同社では、5日間の機種変更などの登録業務停止に伴い、11月中に機種変更するとお詫びとして500円分のポイントを提供するという。
■ サービスまたも変更、他社宛通話が30秒20円に
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料金を改定
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また、説明会では11月10日に通話料金が改定されることも発表された。孫氏は「他社への通話が割高な印象があるということで、ドコモやauのSSプランと同等の30秒20円に値下げする」と話した。このほか同日から、新スーパーボーナスに、1年6カ月版と1年版も提供するとした。
■ 疑問が残る孫氏の発言
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孫氏は申し込みや問い合わせが殺到していると話した
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質疑応答では多数の質問が寄せられた。
「店頭での一括販売価格が50,000円や70,000円と高額なのはなぜか?」との質問には、「他社も実際には同じような仕入れ価格となっているが、これに奨励金を与え、業界の習わしで値引き販売している」とインセンティブを説明し、「我々もかつてボーダフォン時代にやっていた。今回の新スーパーボーナスは我々の実質的にかかる原価を2年契約とすることで24回分割払いとし、その代わり、24カ月の間は端末価格のほとんどを基本料から値引きする。実質負担は主要機種で全くの0円」とした。
新スーパーボーナスでは、インセンティブの支払いが無いかのような孫氏の発言だが、これに「インセンティブが無い0円の商品を量販店が売ることはありえない」と反論すると、同氏は「事実上の奨励金は我々も他社と同様に支払っている。販売店はこれまで通り1本あたり(1契約あたり)の利益が出ている」と前段のインセンティブの話とは食い違う発言をした。
同氏は続けて、「今までは、一体この端末はいくらなのか? とわからないまま販売されているのが日本特有の習わしとなっていた。これまでは半年ごとに端末を変更するユーザーが一番端末のコストを食いとっていて、2年、3年と長く端末を使うユーザーには高い料金となっていた。今回料金プランをフェアなものに改善したと考えている」と語った。
また、「急に発表するからこうした混乱が起こるのではないか? プラン発表後にころころと内容を変更することについてどう考えているか?」との質問について、孫氏は、「結果的にたくさん顧客が来てしまった。今後の体制は受け入れ能力を増強し、説明を浸透させていきたい。発表後にプランを変更したのは少しでもユーザーに良いサービスをと考えた」と説明。
なお、孫氏は今回のシステム障害について、まるでソフトバンクの申し込みが殺到し、人気が出たためにトラブルになったと受け取れるような発言を繰り返していた。auやドコモでは、ソフトバンクから各社に転入するユーザーの方が多いとしており、内容が大きく食い違うことになる。この点を同氏は、同社は26日からサービスを開始したばかりであり、24日、25日は転入は少なかったためと語る。しかし、具体的にソフトバンクへの転入者数を明らかにすることはなく、「26日以降は我々の方が多いと私は感じている」とするに留まった。なお、結果は1カ月後ぐらいにはっきりするとしていた。
このほか孫氏は、一部のショップで「システムダウンの原因がドコモやau側にある」と案内された件について、「我々の指示ではない」と改めて否定した。
■ URL
ソフトバンクモバイル
http://mb.softbank.jp/mb/
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・ ソフトバンクとのMNP業務再開、ドコモ・auは改善を要求
(津田 啓夢)
2006/10/30 22:20
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