独立行政法人国立美術館 国立西洋美術館とエリアポータルは、ニンテンドーDSやワンセグ対応携帯電話を使った国立西洋美術館鑑賞ガイドのサービストライアルについて、11月3日から19日の期間限定で実施すると発表した。
■ ニンテンドーDSやワンセグ対応携帯電話を利用した美術館ガイド
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ニンテンドーDS向け「映像ガイド」のイメージ画像
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今回のサービストライアルは、国立西洋美術館とエリアポータルが2006年4月に開始した「ウェル.com(ウェルカム) 美術館」プロジェクトの第2弾として実施されるもの。ニンテンドーDSの無線通信機能を組み合わせた「映像ガイド」、ワンセグ対応の携帯電話を利用した「館内伝送実験」が行なわれる。
ニンテンドーDS向けの映像ガイドは、「マネとルノワールの部屋」と「モネの部屋」に関連する20本、合計約33分の映像コンテンツを視聴できる。映像はワンセグ向けも含め、NHKの教養番組「日曜美術館」などを制作するNHKエデュケーショナルが保有する35番組と未編集の映像を基に制作された。また、制作にあたっては国立西洋美術館の研究員も協力し、作品自体に加えて、作者や時代背景などの説明も収録されている。
両方の部屋の間には無線LANアクセスポイントが設置されており、ニンテンドーDSが指定エリア内に入ると無線LANアクセスポイントからのデータを受け取って、各部屋にあった画面に自動で切り替える。来館者は、タッチペンを利用して専用ソフトに収録された映像コンテンツの中から任意の映像を再生できる。ただし、部屋の切り替えは電波の混雑状況に左右されるため、上手くいかない場合もあるという。その際は、映像再生時と同様にタッチペン操作で対応できる。
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貸し出されるニンテンドーDSには映像データなどを収録した専用ソフトが装着済み
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起動画面には青柳館長が登場
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無線LANアクセスポイントからのデータを受けて、部屋画面に切り替わる
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タッチペン操作で展示作品ごと映像を視聴できる
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本トライアルでは20本の映像を用意する
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館内に設置された無線LANアクセスポイント(写真下)
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貸し出されるワンセグ対応携帯電話(写真はW43H)
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ワンセグ対応の携帯電話を利用した館内伝送実験では、本館1階入り口付近で配信される「館長のウェルカムメッセージ(1分24秒)」と、本館2階で配信される全6番組構成の「西洋美術館案内」を用意する。総務省関東総合通信局から放送実験免許を取得して実施されるもので、いずれもフロア内でのみ視聴できるように電波出力が制限されている。
また、映像配信とともにデータ放送機能を利用した上野公園内の美術館やイベント情報も提供する。館内で貸し出される携帯電話は日立製作所製のau向け端末「W41H」と「W43H」のいずれか。なお、国立西洋美術館ではトライアルで使用するワンセグの周波数帯などは公表していないが、ユーザーが所有する対応端末からでも設定によっては視聴できる可能性はあるとしている。
トライアル期間は、11月3日から19日までの各日10時~12時と14時~17時(月曜休館)。常設展観覧料を支払った上で、モニタトライアル申し込みを行なえば端末の無料貸し出しが受けられる。常設展観覧料は、個人の場合で一般が420円、大学生が130円、高校生が70円で、中学生以下・65歳以上、障害を持つ人および付添者は無料。また、11月3日と11日は無料観覧日となる。
このほか、トライアルに参加した上でアンケートに回答した観覧者を対象に、将来的に予定する「オンデマンド印刷」をイメージして印刷されたポストカードがプレゼントされる。
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1階では青柳館長からのウェルカム・メッセージ映像が視聴可能
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2階に移動した際は、チャネル切り換えなく配信番組が変わる
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通常のワンセグと同様にフル画面視聴も可能だった
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1階に設置されたアンテナ
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配信機材
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出口にはオンデマンド印刷のイメージ展示も
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関心のある展示作品を選択して
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解説シートや額絵、ポスター印刷操作が可能
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■ オンデマンド印刷やPC連携などウェル.com美術館の広がりも提示
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トライアルが行なわれる国立西洋美術館
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青柳館長
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国立西洋美術館とエリアポータルではトライアル開始に先立って、10月30日に記者説明会を開催した。
国立西洋美術館 館長の青柳正規氏は、「これまでは作品の鑑賞と、説明書きを読むという情報に接する時間は、交互に行なうため重複していなかった」と説明。「ウェル.com美術館では、作品を鑑賞しながら知りたい情報にアクセスできる環境を構築したい」とプロジェクトの意義を語った。その上で、「日本には超一流のものは少ないが、一流と呼ばれるものは数多くある」と持論を披露。「日本人はこうした一流のものをアセンブルするのが得意であり、ウェル.com美術館の構想もそうした考えの下に進めていきたい」とした。
エリアポータル代表取締役の加藤恂一氏は、ニンテンドーDSとワンセグ対応携帯電話を利用したトライアルの概要を説明。その中で、今回のサービスをロケーション型サービスと位置付け、「西洋美術館、そして上野にある各美術館にとどまらず、京都や大阪、奈良など各地にある国立美術館にもサービスを広げていきたい」と語った。
また、「将来的には圏域や広域放送で未使用のワンセグ用周波数帯域を活用し、ロケーション型サービスに広がりを持たせたい」と抱負を述べた。その際には、地域情報などを閲覧可能な情報ステーションの展開も視野に入れているという。
最後に登壇した国立西洋美術館 主任研究員の田中政之氏は、美術館におけるIT化の現状を説明した。田中氏は、「美術館でITを使用した事例といえば、館内サーバーにある収蔵品情報システムの構築程度で、閉じられた世界で固まっている」と指摘。また、来館者向けには音声ガイド用携帯端末の貸し出しに止まっているとした。
田中氏は、「ウェル.com美術館では携帯端末を映像ガイドとして進化させ、情報システムとの連携も強化したい」とコメント。さらに「オンデマンド印刷の導入によって、10年に1人くらいしか買わない作品のポストカードも販売が可能になり、美術館と来館者との結びつきが強化できる」と語った。
また、「今後は自宅にあるPCとの連携も進めていきたい」という。「これによって、情報システムに蓄積された情報を携帯電話やパソコンからの閲覧が可能になる」などと述べるとともに、「情報システムが、すべてを一元管理できるシステムに変化を遂げるのではないか」と期待を寄せた。
なお、田中氏はウェル.com美術館に関して「どういったコンテンツを提供するべきか、まだまだ学ぶ段階にある」との考えも示した。本サービス実施時期については、「トライアルをもう1回程度実施したのち、限定された形でも実施できれば」と見通しを語った。
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ウェル.com美術館の全体構想
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今回のトライアルイメージ
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■ URL
国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp/index-j.html
ニュースリリース(PDF)
http://www.nmwa.go.jp/jp/files/061030.pdf
(村松健至)
2006/10/30 21:46
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