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松下電器、NECが携帯電話事業で2つの合弁会社を設立

握手するNEC代表取締役執行役員社長矢野薫氏(左)と、松下電器産業代表取締役社長の大坪文雄氏

合弁会社開発の目的

合弁会社開発の目的
 松下電器産業とNECが、携帯電話事業における合弁会社の設立で、合意に達したことを明らかにした。

 合弁会社は、携帯電話端末の開発を行なう会社と、第3世代以降の携帯電話の通信プラットフォームの開発を行なう会社の2つをそれぞれ設立する。

 今回の協業では、ソフトウェア開発分野における協業となり、商品企画や商品開発、資材調達、販売、製造は両社がそれそれが行なう。また、NEC、パナソニックのそれぞれのブランドも存続し、引き続き、お互いに差異化した製品を市場投入することになる。

 携帯電話端末の開発を行なう新会社は、NECと、松下電器産業およびパナソニック モバイルコミュニケーションズの3社によって設立されるもので、携帯電話の共通プラットフォームの開発および共同商品開発の開発を、NECと松下電器から受託する。ミドルウェアやアプリケーションソフト、ハードウェアの共通化を進めることにより、重複開発投資の回避、開発投資効率の向上、開発力強化、コスト力強化などのメリットがあるという。

 社名は未定で、今年10月上旬に設立の予定。資本金は1億円で、NECとパナソニックモバイルがそれぞれ50%ずつ出資する。設立時には、社長はNECから、副社長はパナソニックモバイルから出向の予定。

 一方、第3世代以降の携帯電話の通信プラットフォームの開発を行なう会社は、NEC、NECエレクトロニクス(NECEL)、松下電器産業、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、米テキサス・インスツルメンツ(TI)の5社が共同で設立する「アドコアテック株式会社」。

 同通信プラットフォームの開発・設計を行なうとともに、技術ライセンスをグローバルに行なう。

 神奈川県横須賀市横須賀リサーチパーク内に本社を置き、今年8月にも設立する。5社の出資金額は120億円。そのうち60億円を資本金に、60億円を資本準備金とする。出資比率は、NEC・NECELと松下電器・パナソニックモバイルがそれぞれ約44%、TIが約12%となる。

 社員数は、約180人でスタート。設立時には、社長はパナソニックモバイルから、副社長はNECから出向する予定。


「協業」と「競争」の関係を維持

互いの力をあわせて発展を目指す

互いの力をあわせて発展を目指す

プラットフォームは共通化しながら、N/Pの端末は差別化されるという

プラットフォームは共通化しながら、N/Pの端末は差別化されるという
 今回の携帯電話事業における合弁に関して、松下電器産業の代表取締役社長である大坪文雄氏は、「携帯電話は、多くの人たちが24時間に渡り、情報の窓として活用しており、この先、10年、20年を経過しても決して無くならないものといえる。当社としてもコア事業として、または戦略事業として取り組んできたビジネス。パナソニック、NECのそれぞれの最終ブランド商品として、次世代において、さらに魅力のあるものとするには今回の合弁会社設立は必要な判断。厳しい市場環境において強みを生かし、将来に渡って勝っていくための基盤となる」と位置づけ、「まずは国内市場でしっかりと足場を築いて、その後、世界へと取り組みを広げていく」とした。

 一方、NECの代表取締役執行役員社長の矢野薫氏は、「携帯電話は、PCと並んで、ユビキタス時代の当社の顔になる製品」と前置きし、「携帯電話は技術が深くなり、1社の技術では限界がある。松下電器と協業しなければ戦えない時代に入っている。また、世界を視野に入れると、まだ3Gは少数派。世界戦略では2.5Gと3Gのデュアル端末が必要になる。2.5GのGSM端末において、技術的蓄積を持つ米TIに参加してもらうことで、世界に打って出られる環境が整う。通信とコンピュータに強いNECと、家電のノウハウを持つ松下電器、2.5Gで実績を持つTIとの組み合わせは、世界的にも強い組み合わせとなる。これにより、強い技術、強い商品を生み出すことができるだろう。協調と競合の関係を作り、NECとパナソニックがお互いにトップを奪い合う関係を作りたい」と語った。

 また、会見に駆けつけた日本テキサス・インスツルメンツの山崎俊行社長は、「この協業において、重要な役割を担うことを認識し、競争力のある製品の創出に寄与したい。日本市場の高度な要求を反映させた製品によって、世界市場に拡販していくことに邁進したい」と述べた。


2つの新会社の役割とは

共通プラットフォームの開発を行なう新会社の概要

共通プラットフォームの開発を行なう新会社の概要
 改めて、2つの新会社の役割を見てみよう。

 NECと松下電器、パナソニック モバイルコミュニケーションズの3社が、10月にも設立する新会社は、まずは共通プラットフォームの開発が中心となる。

 両社は、2001年8月に、携帯電話に関する協業を発表。2004年11月には、NTTドコモを含めて、Linuxベースのミドルウェアプラットフォームの共同開発で協業し、これをFOMA端末に搭載するなど、携帯電話分野で関係を深めてきた。

 新会社は、こうした提携関係をさらに一歩進めたものだと言え、NECと松下電器の両社から、新会社に対して共同活用できる共通アプリケーションCPUや統合チップの設計など、共通プラットフォームの開発を進めるとともに、このプラットフォームを活用した共同の商品開発を行なう。

 具体的な協業領域は、アプリケーション部分における共通化となり、当初は、ミドルウェアにおける共通利用からスタート。その後、松下電器の半導体社が推進しているUniphier(ユニフィエ)と、NECエレクトロニクスの半導体技術を融合した統合チップを開発し、2008年には同チップを搭載した携帯電話端末を市場投入することになる。

 共同開発した製品は、NECと松下電器が、それぞれに個性化や差別化を行ない、それぞれのブランドで市場投入する。

 「かなりの部分が共通化すると思っているが、NECファン、パナソニックファンがそれぞれに存在し、使い勝手やデザインといった面で異なる製品が登場することになる」(矢野社長)という。

 設立時は、資本金1億円、社員140人という規模だが、「これらの人員は、設計、企画の部分を管理する中枢的な役割を担うことになり、開発はそれぞれの会社に委託することになる」(NEC執行役員の大谷進氏)とのことで、開発には、パナソニック モバイルコミュニケーションズおよびNECモバイルターミナルビジネスユニットの開発チームが携わることになる。

 パナソニック モバイルコミュニケーションズの代表取締役社長の櫛木好明氏は、「2010年代初頭にかけて3.5G、3.9Gへと進化するなかで、強固な技術基盤の確立とともに、各社の商品の差別化にリソースを集中することができるようになる。このメリットは極めて大きい」としている。


国内外の携帯電話メーカーにもライセンス

TIも参画する「アドコアテック」の概要

TIも参画する「アドコアテック」の概要
 一方、米テキサス・インスツルメンツなどを加え、5社によって設立するアドコアテックは、2.5G、3G、3.5Gのデュアル通信プラットフォームの開発およびライセンス販売を行なうことを目的としている。

 「通信分野におけるアドバンスド・コアテクノロジーを提供する企業を目指すという想いを社名に込めた」と、NEC・大谷執行役員は命名の由来を語る。

 出資しているNEC、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、米TIという3社の無線通信技術の会社が、アドコアテックに2.5G、3G、3.5Gデュアル通信の先端コア技術をライセンス提供。これを受けて、通信プラットフォームを開発する。開発したチップ回路設計情報は、チップメーカーであるNECエレクトロニクス、松下電器半導体社、米TIの3社にライセンス販売。これをそれぞれのチップメーカーが製品化し、国内外の携帯電話端末メーカーに外販する仕組みだ。

 また、アドコアテックは、開発したプラットフォームを活用して、装置化のための通信ソフトウェアライセンスの販売、保守サービスおよびシステム評価のビジネスも行なう。

 「2008年には、W-CDMA通信プラットフォームの外販市場において、全世界で20%以上のシェアを獲得したい。また、将来的には3.9G世代の通信プラットフォームへの橋渡しを実現したい」(NEC・大谷執行役員)と意気込んでいる。

 今回の協業によって、携帯電話事業を懸念事業と位置づけていた両社が、コスト負担がのしかかる開発面において、大幅な効率化を達成できるのは明らかであり、そのメリットは大きい。

 だが、「かなりの部分が共通化される」(矢野社長)という共通プラットフォームの上で、両社のブランドをつけたそれぞれの製品をどう差別化していくのか、両社にとっての今後の大きな課題だろう。また、この協業を海外戦略にどう結びつけるかもこれからの課題だといえる。



URL
  NEC プレスリリース(開発会社設立について)
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0607/2702.html
  NEC プレスリリース(アドコアテック設立について)
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0607/2703.html
  松下 プレスリリース(開発会社設立について)
  http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060727-3/jn060727-3.html
  松下 プレスリリース(アドコアテック設立について)
  http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060727-4/jn060727-4.html


(大河原克行)
2006/07/27 19:54

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