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ソフトバンク株主総会、携帯事業の説明に多くの時間を割く

株主総会の会場
 ソフトバンクは6月23日、東京・丸の内の東京国際フォーラムで第26回定時株主総会を開催した。

 これまで株主総会後に開催していた今後の中期的方針を説明する「経営近況報告会」を株主総会のなかに取り込み、事業戦略について発表した。孫正義社長は、「今回はボーダフォンの買収など、事業を取り巻く環境が大きく変化しており、あえて株主総会のなかでご説明さしあげたかった」と説明。具体的には、携帯電話事業に関する方針に触れ、約50分にわたり、この説明のために時間を割いた。


グループ企業とのシナジーを出していけば充分戦える

 孫氏は、まず最初に携帯電話事業を買収した理由について改めて説明を行なった。

 「ボーダフォンの買収、更なる飛躍のステージ」と題したスライドを示しながら、「放送の市場規模は3.1兆円、コンピュータ産業は2.6兆円、それに対して、携帯電話は8.7兆円の市場規模がある。放送とコンピュータの市場を足したものよりも市場規模が大きい。しかも、放送やコンピュータの産業では何百社、何千社が競合しているのに対して、携帯電話の市場はたった3社であり、そこでこれだけの市場規模がある。営業利益も市場全体で1.3兆円を3社で分け合い、EBITDAでも2.5兆円を3社で分け合っている。利益を出しやすく、挑戦のしがいがある市場だ」と参入の意味を説明した。

 また、「ブロードバンドへの参入では、先行投資によって真っ赤っかでスタートし、苦しい経験をしてきた。より早く、より確実に、多くの人に、我々が提供したいサービスを提供するためには買収が最適だと考えた。ゼロからスタートするのではなく、1,500万回線以上のユーザーベースからスタートできることは大きい。ドコモは、大きなブランドと力を持ち、auも大きな力を持っている。だが、音声がつながるだけの時代はもう終わる。電子メールやインターネットの様々な情報、あるいはテレビが見られるといった使い方が増え、こうした時代ではソフトバンクの方が遙かに潜在力がある。ヤフーやイー・トレードといったグループ企業とのシナジーを出していけば充分戦える、あるいは充分凌駕できると考えている」と話した。

 買収のメリットとして、孫社長は、(1)顧客基盤、(2)ネットワーク、(3)端末の調達、(4)人材・ノウハウ、(5)端末ネットワーク、(6)事業キャッショフローの6点を挙げた。

 顧客基盤としては、1,522万契約という既存のボーダフォンの顧客がいること、ネットワークでは99.93%の人口カバーをしており、「ブロードバンドでは全国をカバーするために大変な苦労をしたが、これが携帯電話では一気に確保できるというメリットは大きい」とした。

 また、端末の調達では、「ソフトバンクが独自にやるといった場合には、国内の携帯電話メーカーは目も合わせてくれなかった。そのため、韓国や台湾のメーカーにお願いするしかなく、日本のユーザーに対して、『果たして満足してもらえるものを提供できるのか』という疑問もあった。だが、ボーダフォンの買収によって、すべての日本の携帯電話メーカーが毎日のように当社を訪れており、新たな機種の提案をしてくれている」という。


 そのほか、「ADSL事業に参入した際にはインフラの経験者がおらず、霧の中のジャングルを歩くような状況だった。だが、携帯電話事業で10年以上の経験、ノウハウを持つボーダフォンの人材を確保でき、ソフトバンクグループの経験、ノウハウと、いち早く化学反応が起こせる。また、1,856店舗のボーダフォンショップとその人材を確保するためにどれぐらいの時間がかかるのかということを考えると、一気に販売ノウハウと販売ネットワークを確保できた点も大きい」とした。

 さらに、「ボーダフォンには、3,009億円の事業キャッシュフローがあり、資金が回っていることは大きな安心感がある。ソフトバンクが独自にやろうとしたら、『またソフトバンクは赤字に陥るのか』といわれ、どの金融機関からも資金調達が難しく、むしろ逃げていっただろう。だが、ボーダフォンの買収では一瞬にして世界の金融機関から3兆円を超える資金が集まった。これだけの事業キャッシュフローがあるからこそ資金調達ができた」と語った。

 孫氏の試算によると、携帯電話事業を最初から開始すると、先行投資として3,000~6,000億円の資金が必要だとしており、しかも、すべてを手持ちのリスクマネーで開始し、事業規模を拡大するには時間がかかるといった課題があったと指摘。ボーダフォンの買収では1兆7,000億円の費用がかかったが、ソフトバンクのリスクマネーは2,000億円に留まり、さらに1,500万人をスタートポイントとして事業が拡大できるメリットを繰り返し強調した。


携帯電話事業でもヤフーを前面に押し出す

 一方、携帯電話事業の課題として、(1)ネットワークの増強、(2)第3世代携帯電話端末の充実、(3)コンテンツの強化、(4)営業体制・ブランドの強化の4点を挙げ、「言い換えれば、問題はこれしかないといえ、4つのことを充分にやっていけば大丈夫だ」と強気の姿勢を見せた。

 ネットワークの増強では、現在23,000局の第3世代携帯電話の基地局を、年度末には倍増となる46,000局に拡大する計画を示した。「これは元々ボーダフォンが3年計画で予定していたもの。最終的に必要なものならば、この半年でやってしまおうと考えた。これによって、ドコモが年度末に目指している45,000局を超えることになる。問題はキャッシュフローだが、基地局の納入業者に対して、支払いの繰り延べをお願いしている。本来ならば今後3年間続くはずの、『つながらない』というユーザーの不満を早期に解消し、問題となる資金に関しては先延べで対応することで解決できる」という。

 また、端末機の充実に関しては、「ボーダフォンの端末はダサイとか、機種が少ないとか言われるが、日本人に好かれる機能を持ち、最新の技術にもこだわった端末を投入したい。若者が興奮するようなデザイン、年輩の方が安心して使える設計など、顧客の立場に立った品揃えをする」とした。

 コンテンツの強化としては、かつてのパソコン通信とインターネットの競合をなぞらえ、「パソコン通信のPC-VANやニフティは、メーカーによって閉ざされた世界で情報が提供されてきたものであり、それは、いまのiモードやEZwebと同じ。ヤフーを設立した当時は、パソコン通信が全盛で、ヤフー設立会見には7~8人の記者しかこなかった。それかいまはどうだろうか。それと同じで、携帯電話でも、囲い込まれた少ない情報では利用者は満足しない。全世界のあらゆる情報を利用できることに惹かれるはずだ。携帯電話事業でもヤフーを前面に押し出し、『開けばヤフー』、『押せばヤフー』という形にしたい。携帯端末にヤフーボタンを作りたいと考えており、ボタンを押せば、即、世界のインターネットにつながるようになる。携帯電話は1人1人が所有しており、携帯電話ユーザーの方が、インターネットコンテンツをたくさん使うという時代がくるのではないか」と語った。

 さらに、将来的にフルブラウザをすべての端末に搭載する方針を明確にし、「携帯電話でインターネットを使用するためには、使いやすいブラウザの開発が大変重要。いま技術陣がパートナーとともに共同開発をしている段階だ」と述べた。

 4番目の営業体制・ブランドの強化では、「得意の営業力を発揮したい。相手がドコモであれ、KDDIであれ、営業力には絶対的な自信がある。歯を食いしばって売りまくる。ボーダフォンショップだけでなく、ソフトバンクには、25年間に渡って築いてきた家電量販店とのパイプがある。ヤマダ電機やヨドバシカメラ、ベスト電器といった企業との連携で販売していく。また、日本テレコムの法人向け販売チャネルもある。10月にボーダフォンからソフトバンクに名称を変更するが、初めて製品やサービスにソフトバンクのブランドを付けたものであり、ソフトバンクグループが総力戦で挑むことをコミットしている」と話した。


MNPに対しては「絶対に結果を出してみせる」

 ナンバーポータビリティ(MNP)に対しては、サービス向上および顧客満足度の向上などにより、既存顧客の維持に努める一方、4つの課題を解決することで優位に立てると判断。「10月に向けて万全の体制で臨みたい。戦いには勝たなくてはならない。絶対に結果を出してみせる」と意気込みを示した。

 一方、出席したソフトバンクBBの取締役副社長兼COOを務める宮内謙取締役は、「10月のMNPに大きな勝負を挑みたい。携帯電話とインターネット事業、固定電話事業とのシナジーを生むことで確実にシェアをあげていきたい」と抱負を語ったほか、ヤフージャパンの社長を務める井上雅博取締役も、「ヤフーはボーダフォンにも出資しているが、ソフトバンクグループの各企業と協力して、オープンなインターネットの世界を携帯電話の世界にもつくりたい」とした。また、日本テレコムの社長を兼務する倉重英樹取締役は、「日本テレコムは今年度通期の黒字を見込む。ボーダフォンの携帯電話と、日本テレコムが持つソリューションとを組み合わせるなど、ソフトバンクグループのシナジーを生かすことで、これを達成したい」と語った。

 孫社長は、携帯電話事業によるコスト削減に関しても触れ、「ボーダフォンと日本テレコム、ソフトバンクBBの3社で、年間5,800億円の固定費が発生している。これを融合することで、ネットワークインフラへの投資で年間数100億円の削減が可能となり、人的リソースの適材適所への再配置による有効活用で数100億円の削減、グループ内商品の相互販売で数100億円のコスト削減が可能。派遣社員、アルバイト、契約社員を一気に削って、正社員集団としていきたい」とした。

 さらにプレゼンテーションの最後には、「ソフトバンクグループが日本で持つ2,600万人の顧客や、中国で持つ多くの顧客に加え、ボーダフォンが全世界で展開している5億人のユーザー、ヤフーが全世界で持つ4億人のユーザーなどを合わせると、ソフトバンクは、10億人にアプローチできる企業となった。風呂敷もここまで広げると壮観だ。これだけの風呂敷の上で、21世紀のライフスタイルカンパニーを目指して行く」と、高らかに宣言してみせた。

 このほか、先頃、孫社長と同年代の米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が、2年後に第一線を退くとの報道があったことで、孫社長の経営者としての長期的な考え方に対する質問も出た。

 孫社長は、「私は、19歳の時に、20代で名をあげて、30代で資産を形成し、40代で大勝負に出て、50代で完成させたいと考えた。そして、60代のどこかで次の経営陣にバトンタッチしたいと思っている。もしかしたら、71~72歳になっても、心は60代といって経営をしているかもしれないが(笑)、まだ20年近くあるので引き続きがんばっていきたい」と回答。会場からは思わず拍手が湧いた。

 今後20年間の体調管理についても質問が飛び、孫社長は、「ソフトバンクの仕事をしていることが私の心の健康につながっている。唯一の趣味であるゴルフを月に2~3回やり、散歩代わりの健康法になっている」とも話した。

 なお、定款一部変更などの第1号議案から第3号議案までの決議事項はすべて可決。午前10時にスタートした総会は、12時40分過ぎに閉会した。



URL
  ソフトバンク
  http://www.softbank.co.jp/

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(大河原克行)
2006/06/23 15:11

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