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握手を交わす、イー・アクセス千本会長(中央右)と、みずほ銀行の杉山頭取(中央左)
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イー・アクセスは、2007年にも携帯電話事業へ新規参入する子会社・イー・モバイルの資金として、みずほ銀行などを引受先とする総額2,200億円の借り入れについて合意に達したと発表した。あわせて、三井物産などが割当先となる約280億円の第三者割当増資の実施も確定したと発表されている。
今回の発表された借入金について、同社では5日、都内で記者会見を開催。金融機関の代表者を交えて、概要説明を行なった。借り入れの引受幹事となる金融機関は、アイエヌジーバンク エヌ・ヴィ東京支店、あおぞら銀行、カリヨン銀行東京支店、JPモルガン・チェース銀行東京支店、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド・ピーエルシー東京支店、ゴールドマン・サックス証券会社の10機関。
借入金の総額は約2,200億円で、期間は最長7年間。イー・モバイルの資産を担保にするノン・リコースとなっている。金利は明らかにされていない。説明を行なった、イー・アクセス代表取締役副社長兼CFOのエリック・ガン氏は、「当初は1,000億円の調達を目指してきたが、投資したいという要望はその5倍以上寄せられた」と述べた。
また同社代表取締役会長兼CEOの千本 倖生氏は「まだ、フリーのキャッシュフローが全くない、事業を始めていないイー・モバイルに対してこれだけの借り入れができた。これは日本の金融市場において、最大級のファイナンスプロジェクト」と語り、イー・モバイルの事業に対して、多くの期待が寄せられていることを示した。
金融機関を代表して挨拶したみずほ銀行取締役頭取の杉山 清次氏は「(2,200億円という借り入れが実現したのは)イー・アクセスのこれまでの実績、そしてイー・モバイルの精緻なビジネスモデルのため」と説明した。
あわせて発表された第三者割当増資については、イー・アクセスが60億円、三井物産が50億円、米ゴールドマン・サックスが49億3,000万円、それぞれ出資するほか、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、コジマと量販店も出資者に名を連ねている。これにより、イー・モバイルの資本金は581億1,500万円、資本準備金を含めると1,159億3,000万円となる。さらに、6月には140億円の追加出資も行なわれる予定で、資本金は約1,300億円(資本準備金含む)となる。
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約2,200億円を引き受ける幹事金融機関
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第三者割当増資に関する資料を示すガンCEO
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■ 千本氏、ボーダフォン買収で「競争相手が減った」
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千本氏は、ボーダフォン買収などについてコメント
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安さだけではない、と語っていた種野氏
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会見後に行なわれた懇親会では、千本氏から、ソフトバンクによるボーダフォン買収を受けて、さまざまな見解が述べられた。
同氏は「ボーダフォンが買収されることで、競争すべき相手が1社減ったことになる。これは歓迎したい」と、今後のイー・モバイルにとっても好都合、との姿勢を示した。
ただし、ボーダフォンについて同氏は「ソフトバンクは時間を買った、ということになるのだろうが、今後主流になる3Gにおいて、ボーダフォンユーザーのほとんどが2Gユーザー。これを3Gへ移行させるのは難しいのではないか。またインフラ面でも、現在のボーダフォンのサービスエリアなどは、まだまだ投資が必要だろう」と分析した。
また同氏はソフトバンクについて「彼らはこれまでヤフーなど、ソフト面ではノウハウを持っているだろう。ただ、通信事業とは泥臭いもの」と述べた。
このほか千本氏は、ウィルコムについて「創立に関わったため、愛着はあるが、動くのが遅すぎたのではないか。世界標準ではないPHSでは、今後は先がない」と語った。
W-CDMA方式での参入が予定されているイー・モバイルだが、あわせてWiMAXの研究も進めている。代表取締役社長兼COOの種野 晴夫氏は「WiMAXについては、まだ研究を進めている段階であり、実現するとしても新規参入後の次のステップになる」とした。
また、サービスモデルについて同氏は、「イー・モバイルのサービスは、料金だけで競争することはないだろう。現在の携帯電話は、インセンティブモデル(手数料販売)となっているが、インセンティブに依存しないモデルが構築できれば良いが……。ただ我々は特に拘束されるものがない。そこは強みになる」と語った。
懇親会の合間に種野氏が「これまではエリック(ガンCFO)がやってきたが、そのプレッシャーが、今後は全て私の肩にかかってくる」と述べると、千本氏が「あと10カ月しかないぞ」と茶々を入れて、会場の笑いを誘う場面もあった。
携帯電話端末の開発にはそれなりの時間が必要となるが、はたしてどのような端末が登場するのか。イー・モバイル執行役員 商品開発本部長の我妻 義孝氏に話を聞いたところ、「現在、国内外のメーカーと話をして、既にいくつか開発は進めている。ただし、当初はデータ通信端末になるので、2006年中は地味な動きになるだろう。インセンティブに頼らない端末開発は行なっていきたい。またサービス開始時には、データ通信端末とともに音声端末も投入したい、という願望はある」と語り、具体的な内容は避けながらも、既に開発がスタートしていることを明らかにした。
■ URL
プレスリリース
http://www.eaccess.net/cgi-bin/press.cgi?id=405
(関口 聖)
2006/04/05 19:50
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