14日、電子情報技術産業協会(JEITA)主催による講演会「電子機器の需要予測」が開催された。その中で、JEITAの移動電話世界需要予測ワーキングループによる「携帯電話世界需要予測~2007年までの需要展望~」が発表された。携帯電話の利用者数は今後も順調な増加が予測され、2007年には世界46カ国で累計23億1,763万加入が見込まれるという。
■ アジア市場が成長を牽引
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電子情報技術産業協会(JEITA) 移動電話世界需要予測ワーキングループ主査の土居正弘氏(シャープ)
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世界46カ国の累計加入数。アジア市場の発展が見込まれる
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予測結果を公表したのは、携帯電話端末製造メーカー10社の関係者が参画するワーキンググループ。2004年までの実測データや昨今の経済動向などをもとに、グループのメンバーや調査会社の意見を集約し、予測値としてまとめた。14日の講演では、同グループの主査を努める土居正弘氏(シャープ)が代表して登壇し、予測統計の解説を行なった。
なお今回の予測では、アジア10カ国、北米2カ国、中南米6カ国、西欧15カ国、中東欧6カ国、中近東・アフリカ6カ国、オセアニア1カ国の合計46カ国の携帯・自動車電話需要を予測対象としている(PHSを除く)。需要台数については、新規加入需要と買替需要を足した数値となる。
土井氏はまず、世界の累積加入数を提示。2004年段階で15億7,240万だった加入数が、2007年までに年平均13.8%の成長を続け、23億1,763万加入にまで達すると予測する。2007年の人口普及率については48.7%と、限りなく50%に近づくと分析した。また需要台数は年平均5.3%と高率で伸長し、2007年には年間7億1,794万台におよぶと話す。
これら順調な数値の伸びには、アジア市場の存在があると土居氏は説明。特に、経済的発展が伝えられ、2001年にはすでに世界一の累積加入数を誇る中国の後押しが大きいという。中国は普及率が26.1%(2004年)と低いが、今後、大都市圏の高所得者層に限らず、地方在住者にまで市場が拡大すると考えられ、2007年に人口比41.0%まで普及する可能性を予測した。
一方、日本は2004年段階で普及率68.4%という“携帯電話先進国”。新規加入こそ右肩下がりだが、高齢者・低年齢層など、これまで携帯電話を利用していないユーザーへの普及や、番号ポータビリティ制度開始に伴う市場変化が見込まれる。そのため累積加入数は2004年の8,700万加入から、2007年には9,710万加入、普及率76.5%にまで伸びると分析した。端末需要についてもおサイフケータイや映像・音楽機能といった携帯電話機能の強化によって買替需要が確保され、年あたり4,400万~4,700万台前後の数値で推移すると指摘した。
日本と同様に携帯電話が普及している韓国やシンガポールでも、買替を中心とした需要は順調に推移する見込み。世界第2位の累積加入数を誇るアメリカや、プリペイド式携帯電話を複数台保有するユーザーの影響によって100%近い普及率を誇るヨーロッパ各国でも、3Gサービスへの移行を軸に、一定の需要が予想されると土居氏は説明する。
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2007年までの普及率を予想
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端末需要も堅調という
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■ インド・ロシア・ブラジルなど「BRICs」が台風の目に
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「BRICs」と呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国の市場拡大が顕著に
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そして、今後の注目市場となるのが「BRICs」(経済発展著しいブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の頭文字を指し示した造語)だ。携帯電話市場においても急激な成長が始まっている。土居氏の発表によると2007年には、累積加入数上位5カ国のうち、3位をロシア、4位がインド、5位をブラジルが占めるという。
特にインドは、2007年の予測値でも累積加入数が1億2,500万、普及率は11.0%。対して人口は11億3,500万人とされる。土居氏は「もっとも大きなポテンシャルを秘めた市場」と解説し、成長率では中国をも上回る可能性があるという予測を示した。市場的にもGSMとCDMA2000 1xの2方式が競争状態にあり、料金の低廉化や通信エリアの整備もいっそう進むとみられる。
ブラジルは、社会的な経済不安が一段落する傾向にあり、2004年には年間の新規加入が約2,000万(前年比143%)を記録。それでも累積での普及率は36.8%にとどまるため、「反動も少なく、堅調に伸長するだろう」(土居氏)と分析されている。予測では2007年に1億750万加入、普及率57.4%を見込む。
ロシアでは、2005年上期の新規加入数統計が爆発的伸びを示した。ヨーロッパ同様、プリペイド式携帯電話の影響で普及率も上昇。2005年の予測値ですでに89.8%と高く、新規加入の減少が懸念されるものの、2007年には買替需要の増加が見込まれるという。
土井氏はこれらのほか、中近東・アフリカでも概ね高い成長率を予想。BRICs各国については、予測対象としていない2007年以降も市場の潜在価値が高いだろうと指摘。一方の携帯電話先進国では3Gサービスへの買替需要が堅調に続くという分析を改めて例示し、最後に「まさに『世界中に需要はあり』だ」とまとめ、講演を締めくくっている。
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インドは特に注目の市場
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講演最後に示されたまとめ。全世界的に需要増が見込まれるという
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■ URL
電子情報技術産業協会(JEITA)
http://www.jeita.or.jp/
(森田秀一)
2005/12/14 20:57
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