ナムザック・ジャパンは、パケット通信網を利用した定額IP電話サービス「Arrowfone」を12月から開始すると発表した。専用端末間での音声通話サービスを、法人向けに定額で提供する計画。具体的な料金は調整中だが、端末1台あたり月額5,000円前後での提供を目指しているという。
■ ボーダフォンのパケット通信網を利用した“IP電話”
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Arrowfoneの接続イメージ
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Skypeとの比較
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Arrowfoneは、携帯電話端末間での音声通話にパケット通信網を利用する“IP電話”サービス。既存の携帯電話端末に独自のアプリケーションを付加することで可能になるという。定額化がすすむ携帯電話向けパケット通信を活用して、通話料金を低廉に抑える狙いだ。
12月からのサービスでは、ボーダフォンから通信回線の提供を受けるという。ユーザー端末と基地局をつなぐ無線部分についてはボーダフォン側の設備を利用するが、Arrowfoneユーザー間をマッチングさせる交換サーバーや、認証サーバーなどはArrowfone側で独自に構築している。
通信時にはインターネット網を経由することが可能なため、回線交換用サーバーを増設すれば、050番号が付与されたIP電話や、パソコンにインストールして使うソフトウェア型IP電話との通話も可能だという。固定電話網への接続も2006年初頭には開始される見込み。ただし定額サービスの対象にはならない。
またIP電話サービスであるため、通信帯域の圧迫が懸念されるが、回線提供元であるボーダフォン側からは「(サービスに)問題はない」という了解を得たという。最終的にはボーダフォンからホールセールを受けるMVNOになることを目指し、交渉中だとナムザック担当者は説明している。
ユーザーが携行する端末については、ノキア製3G端末「702NK」にSymbian OS上で動作するArrowfoneアプリケーションを追加したカスタマイズ版を独自に供給する計画。そのため、ユーザーが所持するボーダフォン製端末をArrowfoneとして利用する用途は、基本的に考えられていない。
ナムザックによれば、「Arrowfoneは『携帯電話上でのリッチコンテンツ提供』を目的に開発されたサービス」。Arrowfone端末間での定額通話サービスから開始するが、2006年初頭にはテキストチャット機能を搭載するほか、時期は未定としながらも、オンラインゲームや映像チャットへの応用も検討中だという。
■ 通話デモを披露
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デモ端末。702NKをベースに、独自のソフトウェアを追加している
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19日に都内で開かれた記者発表会では、開発中の試作機を使った通話デモンストレーションも行なわれている。デモ端末の外見は702NKそのものだが、右ソフトウェアキー押下でArrowfoneメニューが起動するよう手が加えられている。また通常の携帯電話としても利用できるという。
Arrowfoneメニューの操作感はキビキビとしており、軽快。アドレス帳や発着信履歴の参照が行なえる。デモでは、アドレス帳から発信先を選択することで通話が可能だった。なお担当者によると、相手先の特定には080あるいは090で始まる一般的な携帯電話番号を用いており、Arrowfoneの運用サーバーに登録されているかどうかを問い合わせた上で通信しているという。
実際に通話した感覚では、多少ながらも音声の遅延は感じられた。また現時点では、Arrowfone利用時の待受時間が7時間前後と非常に短いため、改善の余地があるとしている。
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着信履歴を表示
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デモ端末の待受画面。右ソフトウェアキーの表示が「Arrowfone」となっているのがわかる
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ナムザック・ジャパン代表取締役社長 福元無外氏
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なお記者発表に先立って挨拶したナムザック・ジャパン代表取締役社長 福元無外氏は、Arrowfoneの開発経緯について「すでにリリースしているパソコン向けの音声通話ソフト『WebArrow』を携帯電話向けに応用できないか、というのがきっかけ」と説明。
また実行ファイルのサイズが170KB前後である点に言及し、「携帯電話への搭載が噂されるSkypeと比較しても、圧倒的にコンパクトだ」と自社技術の優位性をアピールしていた。
■ URL
ナムザック・ジャパン
http://www.namzak.co.jp/
(森田秀一)
2005/10/19 21:54
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