KDDIは28日、2004年度中間期決算を発表。営業収益は前年同期比6.1%増の1兆4,713億円、営業利益は2.7%増の1,624億円、経常利益は5.4%増の1,562億円、当期純利益は9.3%減の778億円となった。
売上の約7割、利益の9割を占めるau事業の好調ぶりが全社の好決算につながった。一方、最終利益が減益となったのは、減損会計の早期適用として202億円を上期に特別損失計上したことが影響している。
■ au事業は2桁増の大幅な伸び
|
KDDI
小野寺正社長
|
事業別に見ると、au事業の営業収益では、前年同期比16.3%増の1兆53億円、営業利益は11.4%増の1,436億円と大幅な増収増益を記録した。
小野寺正社長は、「1XおよびWINの商品競争力が向上したことで、上期の純増シェアが53.1%とトップになり、9月末時点での契約者数は1,819万、累計シェアは21.7%に達した」と語った。1XとWINの9月末の累計契約者数は全体の87.2%にまで上昇しているという。
一方、固定電話事業を中心としたBBC(ブロードバンド・コンシューマ)&ソリューション事業は、音声収入の減少、ADSLなどのブロードバンドサービスの拡販経費の増加などにより減収減益。営業収益は9%減の2,499億円、営業利益は85%減の16億円となった。
ただし、小野寺氏は、「この分野は依然厳しい状況にあるものの、第1四半期に比べて、第2四半期は若干改善している。また、固定電話と携帯電話事業の両方を1社でやるのが当社の強みだと思っている。固定電話事業の再構築の時期でもあり、オールIP化への展開やメタルプラス事業によって、音声通話事業の改善を図りたい」と、今後の事業構造の改革に意欲を見せている。
しかし、同事業は、今年度は依然として収益悪化が見込まれており、通期計画を7月発表時点のものから下方修正し、営業収益5,150億円を4,970億円に、営業損益を30億円からマイナス120億円の赤字決算とした。
また、BBC&ソリューション事業に含まれるFTTHに関しては、当初の予定よりも進捗が遅れており、上期は6万契約に留まった。同氏は「まずは、マンションなどの集合住宅をターゲットとしたが、集合住宅までは予定どおり回線を引くことができても、そこから先の家庭に入るまでに時間がかかっている。通期の計画についても、当初の20万から10万契約へと計画を半減させた。下期は、むしろメタルプラス事業に力を注いでいく方が得策だと判断している」と話した。
一戸建てに向けては、GE-PONを用いたサービスを準備中であり、「電話、インターネット、テレビという3つの切り口からサービスを提供し、優位性を発揮したい」とも語り、「サービス開始時期が近づいたところで詳細を発表したい」とした。
ツーカー事業は、営業収益が15%減の1,197億円、営業利益が37%増の1,098億円という減収増益。契約数が減少しているものの、シニア層などを中心としたシンプル戦略が増益という形につながっているという。
ポケット事業は、下期(10月1日)からカーライル・京セラグループで構成されるコンソーシアムへ事業譲渡することから、今回が最後の連結決算となる。営業収益は9%減の869億円、営業利益は50%減の55億円となった。
■ au事業は強気の上方修正
同社では今年度の通期見通しとして掲げた営業収益2兆8,990億円、営業収益3,090億円、経常利益3,000億円に変更はないが、当期利益に関しては、2,130億円から1,980億円に下方修正した。ポケット事業の売却益として280億円が下期の特別利益として計上されるものの、減損会計の早期適用などが影響するという。
また、au事業に関しては、通期の純増数を当初の220万契約から250万契約へと上方修正。さらにARPUが7,140円から7,190円と増加すると予測しており、420億円の増収、140億円の増益へと上方修正した。
小野寺氏は下期の課題として、「持続的成長の実現と、新たな事業の柱の確立に向けて取り組みを強化し、ブランド力強化とお客様満足度の向上、コンプライアンスの徹底を図るとともに、au事業においてはEZ着うたフルの開始やau design projectモデルのtalbyの投入をはじめとする製品強化、モバイルソリューション分野における専任営業体制によるさらなるシェア拡大と商品開発力強化をすすめたい」とした。
年末までにはWINの加入者数で300万契約を目指しており、「着うたフルを利用するとなると2曲ダウンロードすれば、4,000円を越えてしまう計算になることから、ダブル定額の利用者がさらに増加するのは間違いない」と話した。
■ 800MHz帯再編、プリペイド端末問題についても言及
一方、800MHz帯の再編については、「周波数の使い方が諸外国とは異なっており、その使い勝手の悪いところを再編するのが本当の狙い。それに対して、我々は一部投資をしなくてはならない部分もあるが、それでもこの再編をやろうとしている。いま、一部の機種でしかGLOBAL PASSPORT機能は利用できないが、周波数が再編されれば全ての機種でGLOBAL PASSPORTが利用できるようになる。新規の割り当てとは別の話であり、何か勘違いしているのではないか」とソフトバンクの動きを評した。
また、プリペイド方式の携帯電話については、「海外から来た人などは、プリペイド方式が使い勝手がよく、欧州では約90%がプリペイド方式という国もある。制度を禁止するというのであれば、それに従うが、仕組みが悪いのではなく、きちっとした身元確認をする仕組みを構築することの方が問題だと思っている。ただし、中止されたとしても、事業の比率が低いので、当社の収益にはまったく影響がない」とした。
さらに、NTTの施設設置負担金(電話加入権)の廃止の方向性については、「会社の立場では28億円もの加入権を所有しており、大きな問題」とする一方、「事業者の立場としては、すでに20年も前から問題になっていたものを、なぜいまになってやっているのかが不思議。当社がメタルプラスで参入したら、加入権を必要とするNTTの新規加入者獲得における競争力がなくなるのは当然のことで、20年間放っておいたことが問題」と語った。
なお、新潟県中越地震については、「山古志村の基地局に関しては、現地に立ち入りができず確認ができないが、基地局そのものが流されてしまったようだ。それ以外の基地局はすべて復旧している。新潟県はauのシェアが最も低い地域である一方、県内をカバーする形でしっかりと基地局を配備していたことから、他の携帯電話会社に比べてつながりやすいというメリットがあったようだ。最も早く通信制限を解除できた。しかし、基地局すべてに予備バッテリー装置を配備していたものの、この容量が適切であったかという点で見直しを行なう必要があるとの反省もある。一部の基地局では、途中でバッテリーが切れてしまったというケースもあった」としている。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
(大河原克行)
2004/10/28 20:19
|