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「番号ポータビリティ研究会」、導入コストやニーズを再確認

 利用中の携帯電話事業者を変更しても、同じ電話番号が継続して利用できるようになる「番号ポータビリティ(MNP:Mobile Number Portability)」に関する「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会(第4回)」が22日、総務省で開催された。

 前回の研究会では、MNP導入が前提という流れに傾いていた。しかし今回は、MNPを導入した各国におけるコストや日本で導入した場合の試算、MNP導入による社会全体の便益などが提示されたほか、「なぜMNPを導入するのか、誰が必要としているのか」という論点が改めて示されるなど、導入の是非を議論するための各種データを確認する場となった。

 開始直後、まずKDDIの沖中氏より、MNP導入にかかるコストの試算が紹介された。それによれば、ユーザーの10%がMNPを利用した場合で915億円、50%が利用した場合で1,487億円。約500億円の差が見られるが、システムの開発費は448億円と共通ながらも、ユーザーの10%が利用した場合、設備費が467億円、50%が利用した場合で1,040億円という内訳になる。なお、MNPの実現方式としては、固定電話からの発信の場合は移行先の事業者の番号へ転送する方式、携帯電話からの発信の場合は一度「相手先のユーザーはB社に移った」という信号を発信側の携帯電話に返して、あらためて電話をかけなおす「リダイレクション方式」という前提となっている。

 試算が明らかにされると、東京大学大学院教授の相田氏やアジアネットワーク研究所の会津氏より「内訳が明らかでない、どの程度のサービス内容における金額か不明瞭」「どの程度コストダウンできるのか」といった指摘が相次いだ。それに対してKDDI沖中氏は「今回の試算は、たとえば留守番電話サービスなど現在のサービスをそのまま移行後も続けられるようにするなど、基本的に現時点で考えられる全てのサービスを盛り込んだもの」と説明。またボーダフォンの五十嵐氏は「不必要なサービスを削っていけば、まだコストダウンできるかもしれないが、それでも1桁変わる(100億円~150億円)という規模にはならないのではないか」と述べた。

 このほか、「事業者によって、継続サービスをどの程度までサポートするのか異なっても良い」「新端末のみにMNP対応機能を備えるとコストダウンできるのでは?」といった提案が為された。


 総務省からの資料として、MNP導入国におけるコストも明らかにされた。最も安価だったのは、オランダが約14.9億円(Ovum試算)で、次いでイギリスが約15.6億円、フランスが約27億円だったが、昨年MNPが導入されたばかりの米国では、導入コストが約990億円(CTIA試算)となっている。一見すると、日本の試算は欧州各国よりかなり割高な印象だが、「たとえばフランスの場合は、申し込みから数週間~2カ月ほど経ってから適用される。今回の日本の試算は、申込から数時間で利用できるスタイル」(ドコモ辻村氏)とのことで、サービス内容に違いがある。最も安価な場合は、いったいどの程度の金額になるのか、その場合のデメリットはどうなるのか、といった点は次回に持ち越されることになった。

 続いて早稲田大学教授の三友氏から、MNP導入による便益試算の説明が行なわれた。同氏は、MNP導入による便益を「利用者の直接便益」「非利用者の間接便益」「MNP導入によって発生する各社の競争促進による間接便益」と3種類に分類。

 MNP利用者は、より良いサービス・より安い料金を手軽に味わえるようになり、改めて周囲の人々に電話番号の変更を通知する必要がないという利益がある。また、非利用者も同じ事業者のサービスを継続利用することで得られる割引特典などの恩恵が想定され、機種変更時も各事業者の競争の一環として端末価格の低廉化が見込めることから、安価に端末が購入できるという利益がある。また、競争促進によってユーザーを囲い込むために通話・通信料の低廉化などが見込めるという。

 これらの便益を数値化すると、利用者の直接便益が37億円~855億円(法人の利用率が0~50%の場合)、非利用者の間接便益が1,995億円~2,850億円(継続利益は試算不可、機種変更の低価格化による)となったほか、競争促進による間接便益は、2,696億円となった。これらはいずれもエンドユーザーにとっての便益だが、事業者側にとっては、料金収入は変わらず、シェア奪回のチャンスが増えるため便益があるとしている。

 MNP導入はメリットだけを産み出すという便益試算だが「端末の安価な販売や、料金の低廉化などは事業者の営業費用の増加を招く可能性がある」と指摘する声も挙がった。

 このほか、導入コストの負担額については、1年間で全コスト(システム運用費を除く)を利用者だけが支払う場合で最大18,000円弱になるという。逆に最も負担額が安くなるのは、数年かけて全ユーザーが支払った場合で、1年間の負担額が約230円になる。これに対して出席者からは「全員に便益があるといっても非利用者には不公平感が出るかもしれない」とする一方、「負担額が適正でなければMNPは利用されない」との指摘があり、今後の検討課題となった。

 最後に総務省からユーザーの意向を調査したデータが示された。これは新たに調査されたものではなく、昨年の携帯電話事業者や総務省が実施したアンケートをまとめたもので、「MNP導入を希望するユーザーは確実にいる」ということが再確認されていた。なお今後のスケジュールについて、4月まで月1回の頻度で研究会が開催され、4月下旬の第7回研究会で報告書がまとめられる予定が明らかにされた。



URL
  総務省
  http://www.soumu.go.jp/
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/
  KDDI
  http://www.kddi.com/
  ボーダフォン
  http://www.vodafone.jp/
  ツーカーグループ
  http://www.tu-ka.co.jp/

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(関口 聖)
2004/01/22 18:14

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