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KDDIの湯本氏
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5月12日と13日にわたって横浜で開催されている無線技術の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009」のセミナープログラム「ブロードバンド モバイル-次世代通信システムの最新技術動向」で、KDDIのコンシューマ技術統括本部 モバイルネットワーク開発本部 本部長 理事の湯本 敏彦氏は、「KDDIのLTE導入に向けた取り組み」と題した講演を行った。
湯本氏はまず、auの現状や各種サービスなどを紹介しつつ、トラフィックの増加について説明した。湯本氏は「データのトラフィックはユーザー数とサービスの数、コンテンツの容量から予測できる。ユーザー数の強い増加傾向にはないが、今後はマシン間通信も出てくるだろう。コンテンツの大容量化も進むだろう」と、トラフィックが増加傾向にあるとの考え方を示す。
その具体的なデータとしては、KDDIの固定通信とauのEZwebでのトラフィックトレンドのデータを示し、「固定ではP2Pは減少傾向で、代わりにウェブやストリーミングが増えている。移動体でも同様に伸びている」と説明した。
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サービスの展開とトラフィックの増加
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固定とケータイのトラフィックトレンド
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一部ヘビーユーザーによる占有率
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一方で、「お客様ごとにトラフィックにばらつきがある。固定の方が特定ユーザーへの集中度は高いが、移動体でも集中度が低いわけではない。auのケースでは、2%のユーザーが全体のトラフィックの3割を使っている。こうした一部ユーザーへのトラフィック集中傾向は増えている」とヘビーユーザーの利用傾向も紹介する。湯本氏は「多くのお客様が使いづらい状態になるのを防ぐべく、昨年度からヘビーユーザー規制を行っている。しかし通信量を抑えるのには限界がある。根本的には、システムの大容量化が必要」とし、次世代技術の必要性を説いた。
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今後のトラフィック予想
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モバイルブロードバンド化によるアプリケーションのPC化
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■ LTEは2012年導入、「ケータイとしては大きく遅れるわけではない」
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auの無線技術の進化
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続いて湯本氏はauの通信技術変遷を図で示し、将来の動向としては、まず「来年後半に向けて、まずEV-DO Rev.Aのマルチキャリア化を行う。これはRev.Bからソフトウェアアップグレードだけで可能なものを抜き出したもので、容量増と高速化を目的とする」と説明。LTEについてはその後と位置づけ、2012年との導入目標時期を示した。また、「ビジネス系としては、UQコミュニケーションズという会社を作ったので、そちらと棲み分けをしたい」とも語った。
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LTE採用について
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湯本氏はLTEを採用した理由について、「技術的には、LTEとUMBで大きな差異はない。既存方式との違いはあるが、UMBでもLTEでも既存方式に大きな改修が加わるので、やはり大きな差異ではない。海外のオペレータ動向を見ると、みんなLTEを採用し、UMB採用はいなかった。ここでUMBを採用しては、ガラパゴス以上にガラパゴスになってしまう。実際のところ、LTEを選ぶしかなかった。国際競争でコストが安くなるのも魅力」と語った。
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LTE導入の考え方
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導入の段階としては、「LTEはトラフィックが高い中心部から導入する。一気に導入できるわけではないので、エリアエッジではハンドオーバーも必要になる。LTEを導入すれば、音声のCDMA 1Xに加えRev.AとLTEのトライモードが必要になる。将来的にLTEエリアが広がれば、Rev.Aは要らなくなるだろう。最終的にはLTEでVoIPをやり、LTEシングルにもなるだろう」との見解を示した。
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周波数帯域の展開
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LTEを導入する周波数帯域としては、「基盤は周波数再編後の800MHz帯。これが2012年7月なので、サービス開始は2012年下期とかになる。1.5GHz帯も検討していて、こちらは免許がもらえること前提になるが、やはり2012年の800MHz帯と同時期になるだろう」とし、周波数帯の問題から導入が遅れることを示唆した。一方で、「チップベンダーからヒアリングしたところ、データカード用のチップは早めに出てくるが、ケータイで使えるチップは、早くとも2012年あたりになるという。ケータイとしては、他社よりも大きく遅れることはないと考えている」との考えも示した。
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システムの進化
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技術面では、「ユーザーからすると、単純にデータ通信の高速化とレイテンシーの改善となる。しかし技術面で見ると、CDMAからOFDMAに変わり、MIMOも入ってくる。従来のCDMAでは周波数干渉を気にしなかったが、OFDMAでは干渉を前提とした調整が必要となる。PDCからCDMAへの移行時にも頭の切り替えが必要だったが、CDMAからのOFDMAへの切り替えでは、また逆の切り替えをしなければいけない」とも語った。
さらに技術的な課題としては、「既存ネットワークとのインターワーク」「広帯域なバックボーン」「速やかにエリアを拡大すること」「運用コストの削減」の4つをあげる。たとえば既存ネットワークのインターワークについては、「LTE端末がEV-DOエリアでも使えるように、LTE端末はEV-DOエリアで通信しても、IPネットワークはLTEのものを使うようにする」などの方針を紹介した。また運用コストの削減については、アンテナ共用などの基地局コスト削減を重視しているとも説明した。
LTEのさらに次の4G=IMT-Advancedについては、無線要素技術の検証をYRPで行っていることを紹介した。
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ユビキタス社会とアンビエント社会
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最後に湯本氏は、KDDIが春から掲げるキーワード「アンビエント社会」についても紹介する。「どこでも使える、というユビキタス社会は、ケータイの発展により実現できたと思う。アンビエントはそれをさらに進め、安心・安全・快適な社会を目指す。従来のケータイはパーソナルゲートウェイとしてさまざまな機能を取り込んできたが、アンビエントではインフラや社会システムがユーザーのニーズを予測し、情報やサービスをプッシュする、パーソナルエージェントというところを目指す」と語り、「KDDIは次世代の方式を導入し、高速大容量なアンビエント社会を作っていけるように努力したい」として講演を締めくくった。
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パーソナルゲートウェイとパーソナルエージェント
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パーソナルエージェントの具体例
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■ URL
ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009
http://www.wt-park.com/
KDDI
http://www.kddi.com/
(白根 雅彦)
2009/05/13 11:43
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