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NTTドコモの尾上氏
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5月12日と13日にわたって横浜で開催されている無線技術の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009」のセミナープログラム「ブロードバンド モバイル-次世代通信システムの最新技術動向」で、NTTドコモの執行役員 研究開発推進部 部長の尾上 誠蔵氏は、「LTEとその後の発展シナリオ」と題した講演を行った。
まず尾上氏は、「LTEや高速通信サービスを実現したい、というときに、それは本当に必要か、という議論がもたれる」と前置きし、続いて急激に増えているユーザーあたりのパケット使用量の変遷グラフを紹介し、「とにかくトラフィックが増えるというのは事実。このままだとシステムの限界でサチって(飽和する。システム容量を超えたため速度がでなくなるという意)しまう」とし、容量の大きいシステムが必要であることを力説する。
さらにVerizonやT-Mobileといった海外オペレータのプレゼンテーション資料も引用し、海外オペレータも同様の視点を持っていることも紹介し、「かつて、海外ではMobile Broadband Accessは存在意義に疑問が持たれていたが、いまや世界で盛り上がっている」と語った。
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3G導入前後のパケット使用量変遷
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2005年以降のパケット使用量変遷
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■ LTEは海外オペレータと同時期の2010年中の商用化を目指す
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LTEの性能
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次世代のシステムとして、まず尾上氏はLTEの現状について紹介する。ドコモでは2006年から開発に着手し、2007年から実験を開始していることを紹介。そして3GPPで合意されたLTEに対する要求スペックを示し、「遅延は3Gで設計されていなかったのを反省し、LTEでは高い要求条件としたが、ほぼ達成できている。周波数の利用効率に関しては、最初のW-CDMAに比べると10倍以上に改善した」と実験などの作業が順調に進んでいることをアピールした。
続いて尾上氏はLTEの導入スケジュールについて、「3G立ち上げのときも大変だった。2001年10月に世界に先駆けてサービスを開始したが、その後2年ぐらいは導入するオペレータがいなかった。結果的に、ドコモだけ突出してしまった。次からは周りを見ながらやっていきたい」とし、さらに「ドコモは世界の先頭集団として2010年からLTEを導入する。先頭集団であることが重要。あまりに早すぎると良いことがない。十分な相互接続性を確保するためにも、世界動向には注視していく」と語った。
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世界での3G(W-CDMA)の導入時期
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ドコモによるLTEのタイムプラン
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海外オペレーターの動向
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さらに「2010年というが、どちらかというと2010年の後ろ半分。あとで言い訳したくないからいまのうちに言っておくが、あくまで2010年中の開始を目指している、とだけお考えいただきたい」とも語った。
続いて海外オペレータによるプレスリリースなどを示し、海外でも2010年商用サービス開始が目指されていることを紹介し、「だいたいみなさん2010年を目指しているので、そこを狙って進めているドコモのいまの動きは間違っていないと思う」とした。
ここで尾上氏は余談として、「LTEは技術的には元々3Gの範疇に含まれるが、欧米のオペレータは4Gと呼んでしまっている。LTEはあとの技術にもつながっていくので、境目はなくなると思うが、いまのところLTEは3.9Gと呼ぶ方が技術的に正確」とし、呼称の混乱が早くも起きていることを紹介した。さらにLTEについてネガティブに書かれた記事を紹介し、「これは投資家を安心させるために書いているのだろう。そもそも4Gというと費用がかさみそうで投資家に嫌がられるので、4Gといわなければ良いと思う」との見解も語った。
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エリア展開のシナリオ
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LTEの展開については、「LTEは3Gのエリア内から重ねるように進めていく。LTEは既存の3Gもサポートするので、LTEのエリア外でも、3Gのエリアならば最低限の機能は使える。PDCとのデュアルモードがやりにくかった3Gの立ち上げ時と異なり、必ずしもすぐに全国展開する必要性は低い。また、最初からLTEでVoIPとかをやるわけではなく、音声通話は回線交換の3Gでやる。もちろん将来的にはLTEのパケット通信で音声通話もやるかもしれないが、最初からやるわけではない」と語った。
周波数については、3Gで使用している2GHz帯の5MHz幅で始めるという。通信速度については、「スペック上はいまのところ5段階のカテゴリがあり、最大で20MHz幅の帯域を使って300Mbpsとあるが、当初はカテゴリ3あたりから開始する。5MHz幅の帯域だと、37.5Mbpsとなる」との見通しを語った。
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使用する帯域とスペック
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周波数帯の展開シナリオ
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LTE-Advancedの位置づけ
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次の進化である4Gについては、「3GPPではLTE-Advancedという名前で検討が始まった。まだ検討は始まったばかりだが、テクニカルレポートでLTE-AdvancedがLTEの進化形であると位置づけられた。これにより、LTEが4Gへのスムーズな進化パスを持つことになる」とし、さらにこのようにLTEと4Gがスムーズにつながっていくことは、最初からドコモがコンセプトとして持っていたことだともアピールした。
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3Gと4G(LTE-Advanced)の位置づけ
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LTEやLTE-Advancedへの進化シナリオ
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HSPA+に対する考え
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最後に尾上氏は、現行方式の強化であるHSPA+についても言及し、「現行のHSPAからソフトアップデートで改善できるならばそれで良い。しかし、設備変更を伴うのならば、LTEの方が良いのではないかと考えている。また、移動機の改善でピーク速度が上がることはわかっているが、ピーク速度が出る機会はそれほど多くなく、ユーザー体験上の改善はあまりないのではないか。無線技術は細かくアップデートしていくと、システムが複雑になって良いことがない」とし、システムの複雑化を避けるため、LTEを優先させる考えを示した。
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進化ステップに対する考え
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まとめ
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■ URL
ワイヤレス・テクノロジー・パーク2009
http://www.wt-park.com/
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
(白根 雅彦)
2009/05/13 11:33
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