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【mobidec2008】
総務省 谷脇氏、モバイルビジネス活性化プランの3つの柱を説明

総務省の谷脇氏

加入者数の推移
 mobidec2008の特別講演セッションでは、総務省の総合通信基盤局事業政策課長の谷脇 康彦氏が「モバイルビジネスの活性化に向けて」と題し、総務省による取り組みを講演した。

 まず谷脇氏は、契約者数の推移などのグラフを示し、「携帯電話市場は右肩上がりの成長から成熟期へ移っている。かつて成長期に取られていたビジネスモデルは変わろうとしている。そのキーワードが『オープン化』である。新たな市場を作ることも重要になる」と語る。

 またARPU(契約者数あたりの収入)については、「音声ARPUは各種割引プランの影響もあるが、下がっている。データARPUは増えているが、この伸びも小さいため、全体のARPUは下がっている」と説明する。

 一方でケータイ市場のシェアについては、「純増数などで激しい競争が行われている印象もあるが、周波数も限られているので、参入できるキャリア数も限られているし、長期的なシェア変動で見ると、たいした変化はしていない。独占禁止法のガイドラインからすると、極めて寡占性が強いとされるレベルで、より競争しないといけない」との見解を示した。


ARPUの推移 シェアの推移

モバイルビジネス活性化プラン策定の経緯
 この現状を踏まえた上で谷脇氏は、「総務省ではモバイル市場の活性化に取り組み、モバイルビジネス活性化プランを出した」と語る。

 モバイルビジネス活性化プランの目指す方向性について谷脇氏は、「一言で言えば、オープン型のモバイルビジネス環境を作ること」とし、固定ブロードバンドを例に挙げて説明する。固定回線のブロードバンドでインターネットをするときは、パソコンを選び、どの回線を使うか、どのISPにするか、といったように3段階の選択がある。これらを好きに組み合わせれば、コンテンツやアプリは自由なものが使える。しかしケータイの場合、基本的にはキャリアが主導して端末からコンテンツのプラットフォーム、コンテンツの認証、課金などを行う、垂直統合型のビジネスモデルが構築されている。この点について谷脇氏は、「モバイルの世界も、これからはいろいろなものを選択できる可能性を広げていく必要があるのではないか」と問題提起する。

 一方で谷脇氏は、「オープン型を目指すとはいっても、すべて水平分業にしなくてはいけない、というわけではない。政府が特定のビジネスモデルを押しつけるのは良くないこと。いままでの垂直統合型も必要だろう。しかしマーケットが成熟化し、ユーザーニーズも多様化しているので、それに応えられるようなオープンなビジネス環境も必要だ、ということ」と念を押す。


オープン型のモバイルビジネス環境 ネットワークの中立性と多様なビジネスモデルの創出

モバイルビジネス活性化プランの推進状況
 続いて谷脇氏は、モバイルビジネス活性化プランの内容と推進状況の紹介に移る。谷脇氏は、同プランが「販売モデルの見直し」「MVNOの導入促進」「プラットフォームのオープン性の確保」の3つからなることを紹介し、まず販売モデルについて説明した。


端末価格と通信料金の区別を狙った販売モデルの見直し

モバイルビジネスの販売モデル見直し

各キャリアが導入した新料金プラン
 まず谷脇氏は、「0円端末に問題意識を持ってきた。販売奨励金の額が大きくなっていた。頻繁に買い換える人と長く使う人の間で、奨励金によるメリットに差ができていた」と説明し、その上でモバイルビジネス活性化プランで起こしたアクションとして、「端末の価格と通信サービスの料金を明確に分けて欲しい、とキャリアにお願いした」と語り、その結果、各キャリアで通信料金と端末価格を分離したプランが作られたことを紹介する。

 さらにキャリアにお願いした内容について谷脇氏は、「よく『販売奨励金を辞めろと総務省が言った』といわれることがあるが、これは違う。あくまで『端末価格と通信料金を切り離して欲しい』とお願いした。また総務省が『2年の縛り契約をするように言った』ともいわれることがあるが、これも違う。いままでは期間縛りの契約がOKかどうか明確に線引きしていなかったが、そこを総務省がOKといっただけ」と説明した。

 この動きに対する市場の反応については、「ユーザーさんの意識で言うと、微妙なところもある。たしかに端末の買い換え頻度は従来よりも落ちた。ここについては冷静な議論が必要。こういった新しい料金プラン導入が端末販売に影響を与えたという側面もあるが、いろいろな要素も見て、冷静にレビューする必要があるだろう」と述べた。

 一方で谷脇氏は、現在も残っている問題としてSIMロックを挙げる。SIMロックについて谷脇氏は、「海外のキャリアショップでは、SIMカードだけでも売っている。SIMロックフリー端末は、端末と通信レイヤーを切り分けるために、検討していかなければいけない。しかし、いまSIMロックフリー端末を導入しても、方式の違いもあってキャリア間に不公平感もあり、また音声とSMSしか使えなくなってしまう。いまSIMロック解除しても良くはない。第4世代方式に向けてSIMロック解除は必要と考えているが、その導入タイミングはよく考えなくてはいけない」との考えを示した。


海外とは違う「日本型のMVNO」を目指す

国内のMVNO参入動向

MVNO事業化ガイドラインを巡る経緯
 谷脇氏はモバイルビジネス活性化プランの内容の2つめとしてMVNOの促進について説明する。MVNOの促進については、「2001年ごろからいろいろな施策を展開してきたが、あまりMVNOは増えなかった。しかし昨今、新規登場が増えてきた。ISPなどがデータカードのMVNOに参入し、ほかにも計画中のところが多いと聞いている」と国内の状況を説明する。

 一方で海外については、「欧米ではMVNOがうまくいっていないと言われているが、確かにその通り。アメリカではいくつものMVNOが撤退しているし、欧州でも英Virgin以外はうまくいっていない」としつつも、「しかし、だからといって日本でもMVNOがダメかというと、それは違う。日本では3Gネットワークが普及し、ユーザー数も多い。データ系のMVNOが出てくるのでは、と期待している。固定でも通信自由化の時、いろいろな再販があったが、うまくいかなかった。これは音声には付加価値が付けにくかった、という面がある。しかしデータにはニッチな用途など付加価値をつけやすい。日本型のMVNOを作っていくことが重要なのではないだろうか」との持論を述べた。

 具体的な総務省による取り組みとしては、「新規参入促進を考えたのが2002年。このとき、ガイドラインを作った。電気通信については、電気通信事業法というものがあるが、この法律がMVNOでどのように適用されていくかがわかりにくかった。ガイドラインはそれを明確にするもの。2007年にもさらにガイドラインを見直し、いろいろ付け加えた」と紹介する。


今年5月のガイドライン再改訂
 さらに新しい展開としては、「MVNOとMNOの関係では、まだまだ解決するべき問題が多い。そこで今年5月にもさらにガイドラインを再改訂した。内容としては、『なんでこんなことまで』といったことまでフォローしている。たとえばMNOに窓口を作るようにしてもらったり、MNOがMVNOに聞いて良いことなども例示した。MVNOをやりたい人、やっている人の意見を聞きつつガイドラインを整備している。今後もMVNOが増えることを期待したい」と語った。


2.5GHzの割り当て認定について
 またMVNOへの取り組みの一環として、2.5GHz帯のBWAに対しての割り当てについても言及する。谷脇氏は、「モバイル系では4社の申請があったが、比較審議の際、なるべくネットワークをオープンにし、MVNOを受け入れる姿勢が強いところの評価ポイントを高くした」と明かす。その結果としては、「UQコミュニケーションズとウィルコムに割り当てられた。両社ともにネットワークをオープン化することを明確に意思表明していた。両社ともに来年サービスを開始するが、このネットワークを使ってMVNOが第2ステージに入り、新しいマーケットが開ける可能性が高いと考えている」と語った。


フェムトセルの制度整備
 また新しい技術としてフェムトセルを紹介し、「フェムトセルを使いたいという要望が高まっている。家庭の固定ブロードバンド回線につなぐことで使える基地局。このための制度の整備も進めている。早く整備しないとマーケット進化を阻害してしまうので、進んで取り組んでいる」と語った。


さまざまな面で検討されるプラットフォームのオープン化

プラットフォームのイメージ
 最後に谷脇氏は、プラットフォームのオープン化、ということについて説明する。

 まず谷脇氏は、「現在のケータイのビジネスモデルでは、ユーザーがコンテンツを購入するとき、認証や課金をするプラットフォームがある。これらのプラットフォームはキャリアが提供しているが、これは果たして当たり前のことなのだろうか」と問題提起する。

 さらに公式サイトではない一般サイトの利用が一般化していることを挙げつつ、「現在は、公式サイトから一般サイトへのリンクアウトも自由にはできない。課金システムの自由度もどうだろうか。こういった部分について、民間主体のフォーラムを作り、透明な運営について考えていくべきではないだろうか」と語った。


モバイルビジネスの認証基盤 プラットフォームの多様化

ネットワークを超えたプラットフォーム連携
 とくに認証基盤については、「現在はキャリアごとにMVNOも含めて同じものを使っている。しかしキャリアを横断した課金や認証のプラットフォームがあっても良いのではないだろうか。今後は固定と移動をまたがったFMCのオペレータも出てくる可能性がある。キャリアを横断するプラットフォームは、FMCのために重要なことと考えている」と述べ、その上で、現在はキャリアごとに別々に管理されているIDについても、「これらを仮想的に連携させ、1つのIDでさまざまなサービスにアクセスできるようにならないだろうか。こうした連携も議論を始めなければいけないのではないか」との提案もした。


ポータビリティの向上
 またMNP関連の話題として、現在移行できないメールアドレスについては、「プッシュ配信機能がケータイのメールアドレス以外でも使えるように開放してはどうだろうか」と提案し、さらにコンテンツについても、「MNP移行時にコンテンツの持ち運びができるようにしないといけない。一部のCPは実現しているが、一部ができているから良い、ではなく、もっとやりやすい環境を整えていくことが好ましい。こうしたことが研究会でもいわれている」と語った。


端末プラットフォーム共通化の動き
 ケータイ自身のプラットフォームについては、谷脇氏は「オープン化の波が来ているのはご案内の通り」とし、LiMOとSymbian、Androidの3つのプラットフォームを挙げ、「すべてオープンソースで、自由にアプリを作れる」と紹介する。しかし谷脇氏は、「しかしながら日本のマーケットで主流を占めているのは、キャリアを中心とする垂直統合型の形。ここは、共通化できるところはキャリアを超えて共通化し、メーカーやCPのコスト負担を減らす必要があるのではないか」と提案した。


コンテンツ配信効果の測定など、市場環境の整備
 変わったところでは、コンテンツ配信効果の計測についても言及する。谷脇氏は、「ビジネスをしている人にとって、自分が提供しているコンテンツやバナー広告をどのくらい見られているかを知ることは重要なこと。例えるならば、『ネット視聴率』をどうやって公正に数値化するかが重要になってきているのではないか」と語った。

 さらに昨今の流行として、「ライフログビジネスも将来有望と考えている。情報サービスはプル型からプッシュ型になる。そういった意味で、ライフログは重要。しかしここは消費者団体からライフログへの懸念も出てきている。健全にライフログビジネスを発達させるために、最低限何が守られるべきかを議論している」と語った。

 こうしたプラットフォーム関連の取り組みについては、「現在、さまざまな議論をしていて、報告書の最終段階にまで来ている。年内に報告書が出せる予定」と紹介する。

 最後に谷脇氏は、「垂直統合型のビジネスを排除するのではなく、それはそれでOK。しかし水平分業型のビジネスモデルも可能にしたい。これが私たちの方針」と語り講演を締めくくった。


通信プラットフォーム研究会報告書案のポイント 通信プラットフォーム研究会について


URL
  mobidec2008
  http://www.mobidec.jp/
  総務省
  http://www.soumu.go.jp/

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(白根 雅彦)
2008/11/28 23:35

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