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【WIRELESS JAPAN 2008】
UQコミュニケーションズの田中社長、モバイルWiMAX戦略を語る

事業目標と今後のスケジュール

UQコミュニケーションズの田中氏

UQコミュニケーションズの田中氏
 開催2日目となる23日の基調講演で、「モバイルWiMAXが生み出す新しいワイヤレス社会」をテーマに講演したのが、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の田中孝司氏だ。

 次世代通信技術であるモバイルWiMAXを用いた商用サービス開始を約1年後に控えた同社の事業戦略および、ネットワーク構築の進展状況などを説明。世界のモバイルWiMAXサービスの動向や同社が目指す新しいモバイルデータ通信の社会について紹介した。

 冒頭、田中氏は、「今日、基調講演を行った会社のなかで、当社が一番小さな会社。7月1日に通信事業者としての登録が完了し、一番新しい通信事業者である。だが、当社は、日本で唯一のモバイルWiMAXの通信事業者。来年には、モバイルWiMAXによって、大きく事業を拡大させる」などと語り、まずは、自社の概要について説明した。

 UQコミュニケーションズは、2007年8月29日に設立、今年3月1日から事業を開始。現在の従業員数は125人。資本金は170億円で、KDDIが32.26%を出資し、インテル・キャピタル、JR東日本、京セラがそれぞれ17.65%を出資。また、大和証券グループが9.80%、三菱東京UFJ銀行が5.00%を出資している。

 「次世代通信技術モバイルWiMAXを用いて、ネイションワイドでワイヤレスブロードバンドサービスを提供する日本で唯一の通信事業者」とし、事業ビジョンには、「いつでも、どこでも、誰でも、あらゆるデバイスで、ブロードバンドに接続できる環境の整備、展開」を掲げ、「豊かな国民生活と日本経済の発展に貢献」というスローガンを打ち出している。

 「Broadband Always with youを事業目標とするなかで、Anytime, Anyone, Anywhere, Any Deviceの4つの観点から取り組む。最初の3つは、これまでの通信事業者が実現してきたもの。しかし、最後のAny Deviceは、UQコミュニケーションズが初めて取り組むことになるテーマ」とした。

 事業展開の具体的なスケジュールについては、2009年2月に試験サービスを開始。2009年夏に商用サービスを開始することを改めて説明。ネットワーク展開計画については、試験サービス段階では、首都圏(東京23区および横浜、川崎)、2009年夏の商用サービス開始時には、中部関西圏(名古屋/大阪/京都/神戸)へと拡大。2009年度末には、全国政令指定都市などへと拡大し、2010年度末には全国主要都市へ拡大することで、人口カバー率を76%にまで引き上げるほか、2011年度には93%を超える人口カバー率とする計画だ。


4つの観点で事業に取り組む ネットワーク展開計画
4つの観点で事業に取り組む ネットワーク展開計画

 2009年夏段階では、首都圏地域のなかでも、八王子、埼玉、成田方面に、カバーエリアを拡大する計画だが、これは、株主の一社でもあるJR東日本が運行する成田エクスプレスの路線に沿ったものだという。また、成田エクスプレス車内でも利用できるようにするという。

 「事業を成功させるには、エリア拡大が重要なファクターだと認識している。これだけ早く展開できるのは、KDDIの基地局に併設するため。また、屋内向けには超小型基地局を開発しており、ビル内などでの通信品質の向上を図る。超小型基地局は、家庭向けの無線LANスポットと同じ大きさで提供できるようになる」とした。


屋内向けに小型基地局を開発する 2009年夏段階では、首都圏地域のなかでも、八王子、埼玉、成田方面に、カバーエリアを拡大する計画
屋内向けに小型基地局を開発する 2009年夏段階では、首都圏地域のなかでも、八王子、埼玉、成田方面に、カバーエリアを拡大する計画

 田中氏は、モバイルWiMAXには、4つの技術的特徴があるとする。

 1つめは、「高帯域・大容量」である。「サービス開始当初には、最大で40Mbpsを実現し、次のステップでは最大80Mbpsに拡張できる。3Gに比べて、一桁違う環境であり、真のブロードバンド環境を実現する。PCの固定環境でしかできなかった、画像、動画、ゲームなどのダウンロードやアップロードが、ワイヤレスで実現できるようになる」とした。

 2つめは、「高速モビリティ」。「モバイルWiMAXの標準仕様では、120km/hで走行している列車のなかでの通信が可能だとしているが、我々の実験では、200km/hの高速移動時でも最大10数Mbpsの通信が可能。ハンドオフがうまくいかないのではという課題があったが、ドップラー効果を利用することで解決できる。新幹線での利用に向けて技術開発に取り組んでいる。新幹線で使えないようでは、株主であるJR東日本に申し訳ない」と、高速移動時の利用については心強い発言が聞かれた。

 3つめには、「いままでの通信事業者が発言していた内容とは異なるもの」と前置きして、「常時接続環境」を掲げた。「モバイルWiMAXは、無線LANの延長線上のものであり、常時接続が前提となる。現在のモバイル環境での利用においては、ダイヤルアップによるネットワーク接続時の煩わしさ、ストレスがあるが、これを解消できる。クイックコネクションで、起動時にすぐにつながる環境となる」と語った。

 最後のポイントが、「世界標準仕様」という点。WiMAX Forumに400社以上が参加して策定した規格であることを強調。それにより、国内で利用しているものを、海外でもそのまま利用できる特徴を訴えた。同氏は「これは、日本のメーカーが開発したものを、そのまま海外に輸出できるということにもつながる」と語る。


WiMAXの特徴の1つ「高帯域・大容量」 実験では200km/hで移動していても高速通信できるという
WiMAXの特徴の1つ「高帯域・大容量」 実験では200km/hで移動していても高速通信できるという

これまでの通信事業者と異なり、「常時接続」も特徴とアピール 世界標準仕様も特徴とされた
これまでの通信事業者と異なり、「常時接続」も特徴とアピール 世界標準仕様も特徴とされた

デバイス展開についても

製品投入計画

製品投入計画

モジュールも計画されている

モジュールも計画されている
 さらに、田中氏は、「無線LANは50.9%の家庭に普及しているといわれるが、家庭内やホットスポットなど使える場所が限定され、不便。これがWiMAXであれば、日本中どこででも利用できるようになる。一方、3Gスマートフォンは、帯域不足の問題もあり、これ以上速くはならない。また、画面やCPUパワーも不足しており、インターネットデバイスとしては不十分。これらの問題を解決すべく、インテルと一緒になって、WiMAXを活用できるローパワー、ハイスピードのプラットフォームを提供することになる」とした。

 インテルとの協力により、モバイルPCへのWiMAXチップの内蔵化、MIDやUMPCといった新デバイスの開発促進を進める考えで、「すでに、SDカード程度のサイズに収めたハーフミニカードタイプのWiMAXチップセットが開発されており、デバイスの小型化、省電力化とともに、WiMAXの即時利用が可能になる。2003年からノートPCにWiFi機能が搭載されたように、2009年以降、WiMAX搭載PCも着実な形で普及することになる」と予測した。

 田中氏は、2009年2月からの試験サービス開始時には、通信料金を無料にするとともに、カードも無料で配布する形を検討していることを明かしたほか、2009年夏の商用サービス開始時には、複数のメーカーから、WiMAXチップセットを搭載したノートPC、UMPCやMID、データカードが商品化される予定であることにも言及した。

 「ただ、端末をUQコミュニケーションズのブランドで出すのは、試験サービス時に限定される。WiMAXのPCカードやUSBカードとして、新たな市場を検証する狙いのものであり、限定的。MVNOに対して、公平にネットワークを貸し出すことが、認可の条件になっており、基本は、メーカーやMVNOにデバイスを出してもらうことになる。まずは、ケータイで画面が小さいなどの不満を持っている人、データカードでは通信料金が高い、速度が遅いと思っている人、固定系では屋外で使えないなどの不満を持っている人に対して、携帯電話でもない、PCでもない新たなデバイスとして、新市場を開拓するものを提供したい。WiMAXのサービスに魅力を感じるという人は、7割に達している。また、エリアの拡充に伴って、カーソリューションの世界や、JR東日本が検討している列車内での各種通信サービスの提供、看板や自販機などへの広告配信サービスへの応用といった用途が見込まれ、新たなビジネスを創造することも期待できる」と、WiMAXの広がりについて示してみせた。

 同氏は、コンテンツプロバイダーがWiMAX端末を投入したり、SIerが会社のイントラネットをWiMAX化し、動けるオフィスの提案をしたり、ゲーム機メーカーがWiMAX機能を搭載するといった可能性も示唆した。

 UQコミュニケーションズでは、3月21日にMVNOに対する説明会を開催したところ、171社の申し込みがあり、これまでに57社が具体的な協議の申し込みを行ったという。7月31日には第2回の説明会を開催する予定だという。


海外におけるWiMAXの動向

 一方、田中氏は、世界各地におけるWiMAXの動向についても触れた。同氏によると、現在、110カ国でWiMAX普及の動きがあるという。

 北米では、ClearWireとSprint Nextelが合弁で、WIMAX事業を行う会社を設立。インテルやグーグル、コムキャスト、タイムワーナーなどが出資して、今年9月からボルチモアを皮切りに、2.5GHz帯でサービスを開始する。

 アジアでは、世界で最初にサービスを開始した韓国KTのWIBROの事例を紹介。2006年6月から、ソウル市内でサービスを開始したことに触れた。また、台湾では、政府プロジェクトとしてWiMAXの普及に取り組んでおり、北部エリアで3事業者、南部エリアで3事業者の合計6事業者にライセンスを付与しているという。

 さらに、欧州では、英国では9月にWiMAXオークションが行われるなど、いよいよ本格始動の兆しが見られているという。

 「最も早かった韓国では、Wave 1のバージョンであったため、3Gと同じぐらいの速度しか出なかったが、米国で導入するWave 2 Phase 1では大幅に高速化され、日本で導入する予定のWave 2 Phase 2では、LTEに数年先駆けて、オープンで高速な環境を実現するものになる。韓国や米国でのサービスも、今後、アップグレードすることになる」と、主要な国における取り組みを説明した。


北米での動向
北米での動向 韓国でスタートしたモバイルWiMAXベースのWIBROは、早期のバージョンとあって通信速度は3Gと同等という

 最後に田中氏は、5つの戦略ポイントとして、「WiMAXネットワークの早期構築」、「グローバルスタンダード」、「様々なパートナーとのコラボレーション」、「新領域のデバイス登場」、「リーズナブルな料金」をあげ、なかでも料金設定については、「3Gにおけるパケット使い放題が月額5000円程度。WiMAXの料金は、3Gよりも、ハイスピードで、安いといわれる世界を作る。3Gよりも安く、ADSLと同じ料金レベルにしたい」と語った。



URL
  UQコミュニケーションズ
  http://www.uqcommunications.jp/
  WIRELESS JAPAN 2008
  http://www8.ric.co.jp/expo/wj/

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(大河原克行)
2008/07/24 12:09

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