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【WIRELESS JAPAN 2008】
ソフトバンク松本氏「2010年前半に3.9Gスタートを目指す」

 「WIRELESS JAPAN 2008」併設のコンファレンスの基調講演で、ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本 徹三氏は、「モバイル通信情報サービスの将来像とソフトバンクの戦略」について講演した。


ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本 徹三氏
 冒頭、松本氏は、ソフトバンクの業績の資料を示し、ボーダフォン買収以降、業容が大きく変化したことを説明しながら、1兆7000億円もの資金を投資して、ホーダフォンを買収した理由として、2つの要因をあげた。

 「1つは、インターネットの成長とともに、成長を遂げたきたソフトバンクが、いよいよインターネットがモバイル環境で利用されることを捉えた点。これによってインターネット市場は2倍になると予測できる。もともと、インターネットのビジネスは、利用者の時間の取り合いである。モバイルの世界は、まだ利用されていない時間帯でもあり、可処分時間の宝庫である。そして、もう1つは、モバイル環境で持ち歩く端末を考えた場合、複数の端末を持ち歩くことが考えられず、1つに集約することを考えた場合、携帯電話の延長線上のデバイスが最適であろうという点。日本の携帯電話市場は、ケータイキャリアがネットワークのみならず、端末機の企画、販売、そして、サービスまでコントロールしている。そのため、自らが通信事業者となることが、モバイルインターネット事業を飛躍、拡大させるには必須と判断した」(松本氏)という。


ソフトバンクモバイルはグループの要に成長 ソフトバンクのアプローチ

 欧州では、携帯電話市場で最も影響力が大きいのが、端末メーカーであるノキアだといわれる。それに対して、通信会社は、SIMカードを販売し、インフラを提供しているに過ぎない立場となっている。こうした状況を説明しながら、「欧州の通信キャリアは、iPhoneを脅威だと思っている。アップルが、携帯電話端末や、サービスに乗りだし、ネットワークを提供している通信事業者が押され気味だという状況があるからだ。ノキアが10年かけてやってきたことを、わずか1つの製品で成し遂げてしまったともいえる。一方、グーグルもAndroidによって、ケータイプラットフォームの世界に乗り出そうとしている。自ら投資して、グーグルが安心して端末を普及させることができる環境を作り上げようとしている。ネットワークを持つ通信事業者と、サービスを提供するサービスプロバイダと、端末を提供する端末メーカーのそれぞれが、どこが支配権を持つのかを巡って戦っている」とした。

 その上で、「日本においては、ソフトバンクモバイルは、ユーザーに対して提供するバリューを最大化することに力を注いでいる」とし、iPhoneを例に挙げて、その考え方を説明した。

 「iPhoneは、ソフトバンクが利益を取れなくて、悔しくないのかと聞かれるが、悔しかったら、自分たちで作ればいい。だが、これをいち早く作ったのが、アップルであり、それをユーザーが求めている。ユーザーの価値を最大化するということを考えれば、この端末はアップルに任せ、ソフトバンクモバイルは、ネットワークと販売をサポートするという立場をとり、あらゆるファクターをスムーズに統合した。ユーザー価値を最大化するという考え方が、ソフトバンクのビジネスの前提にある」などと語った。

 松本氏は、楽市楽座の考え方を示し、「日本の通信事業者は、あらゆることをコントロールしているが、やりすぎてはいけない部分もある。ディズニーのような取り組みも、iPhoneと同様。ソフトバンクは、ネットワークと販売、広告宣伝などを手がけ、製品企画、デザイン、ユーザーインタフェイスについては、ディズニーの世界観のなかで作ってもらった」とした。


多様な端末を展開 iPhone 3Gを国内で発売 iPhoneの価格について

 さらに、「販売店の存在は、これまであまり評価されてこなかったが、実際に商品を手にしてもらい、購入していただくのが販売店。ネットワークオペレータとして、販売店支援に投資するのは重要なこと」、「ソフトバンクモバイルは、後発であるため、従来のように端末費用を通信事業者が負担して、長年に渡って通話料で回収するという仕組みは馴染まない。そこで一大決心をして、24カ月の割賦販売制度を導入し、さらに通話料を大幅に値引くという新しいモデルを採用した。販売店などからは当初抵抗があったが、孫社長が、『これが正しい道であり、理解してもらうことに努めてほしい』として、実行に踏み切った。いまでは他のオペレータもこの制度を導入している」、「国内の18%のシェアではどうにもならない。急速にシェアを伸ばすためには、値段を下げることが明快であり、3社で最も安く設定した。第3位の立場であれば、値段を下げても失うものはなく、顧客にもメリットがある。第3の政党ははじき出される構図となりやすいが、逆に第3位が強い意志を持てば、平準化の原則が働き、三つ巴になる。トップシェアのドコモは、100点満点の施策をとってもシェアは減っていくことになる」、「孫社長は各社から出てくる製品がすべて3色であり、『3色は法律で決まっているのか』と質問したことがあったが、さまざまな色が欲しいという要望があるのだから20色揃えたらどうか、という素朴な気持ちからPANTONEケータイが登場した。在庫管理などの問題も指摘されたが、それはこちらが努力すればいいもので、コンビニのおにぎりのように何十種類も扱っているものに比べると簡単。ケータイでできないわけがない。こういう意識改革から生まれたもの」などと、いくつかのソフトバンクモバイルのこれまで事例をあげて、同社の販売手法や考え方について説明した。

 同氏は、iPhoneの料金体系などについても説明した。「パケット定額料金を支払わないと、iPhoneを売ってくれないのか、という批判の声もあるが、iPhoneを利用する人は、インターネットアクセスが楽しみであり、それを利用していたら、知らないうちに10万円もの請求がきたというトラブルが起こりかねない。iPhoneの多彩なサービスを楽しんでいただくという点で、必ずパケット定額に入っていただきたいということから設定したもの」としたほか、「iPhoneの価格は、アップルが発表しているのにも関わらず、ソフトバンクが決めていいのかという質問があるが、日本での販売については、当社が決めるものであって、通常の携帯電話のビジネスと一緒。単に価格を設定したのではなく、24カ月の分割費用から、さらに大幅な特別割引をして、利用者の実質負担額が決まっているもの。ソフトバンクが無理をしてたくさん支払って仕入れているものではない」と説明。「App Storeは、全世界に広がるものであり、ソフトバンクにとっても魅力的なもの。すでにSDKは、25万人がダウンロードしており、全世界の25万人がiPhone向けのアプリケーションを開発しようとしている。App Storeのアプリケーションが売れると、アップルが30%を徴収していくのは悔しいが、アップルが作ったので当然のこと」などと語った。


携帯サービスのエコシステム App Storeの展開

 一方、今後は音声収入が減少し、データ収入が増加することを指摘。また、すべてのコンテンツが携帯、固定を問わずにさまざまなユーザーに提供される将来の姿を予測し、「家電、PC、ケータイがそれぞれに別世界で構成されているものが、将来は1つのコンテンツをあらゆる機械で楽しむことができる。ソフトバンクは、携帯電話の毎月の課金モデルに加えて、PCによるバナー広告による収入の2つのモデルを持つ。これの2つのモデルをモバイル環境で活用していく。ただ、携帯電話の小さな画面でバナー広告を見ても、ユーザーは使いにくくなるだけで、安易に携帯電話にバナー広告を持ち込むことは考えていない。さらに新たな収入源として、検索連動広告や、TPO連動広告の発展系としてのeコマース、Portable Entertainment、Web 2.0、SNSからSocial Graphへといった取り組みを行っていく」と述べた。

 そのほか、将来に向けたネットワークインフラの考え方については、2010年3月には2Gサービスを終息させ、ここで利用していた1.5GHz帯の周波数免許を改めて申請することで、2010年前半には、3.9Gによるサービス開始に向けた、基地局設置の全国展開する考えを示し、「当社の場合、3.9Gの概念はHSPA+を包含するものだと考えている。LTEは、バックワードコンパチビリティがなく、端末コストが高いという問題がある。コスト負担の面からユーザーの利用を考えると、LTEは2012年から2013年に本格化してくるだろう。2010年段階では、コストの面でHSPA+がいいと考えている。LTEの周波数利用効率と比べても、ほぼ一緒。将来は、LTEへアップグレードする形で、内々では考えている。また、3.9Gや4Gは、これまでのような気の遠くなるような設備投資はかからない」などと語った。


データ通信料収入が増加 シームレスになるインターネットサービス ネットワークの将来像

 最後に、ソフトバンクグループとしてのインターネット戦略について言及。「シームレスなインターネットサービスを世界規模で展開していくなかで、とくにアジア市場に力を入れている。アジアでは、アリババグループに32%を出資し、中国ナンバーワンの地位を確保している。グローバルという点では、ボーダフォンと、チャイナモバイルと共同でJILを設立し、世界に向けた仕掛けを行っている。JILにおける共同開発の第1号案件であるWidget Engineは、通信事業者ならではのサービス基盤を作るもので、同時に開発者の負担の軽減できる。ソフトバンクモバイルの日本での取り組みが、世界から注目を集めている」と締めくくった。


ソフトバンクの日本での目標 アジアを中心とした世界戦略

3社連合の「JIL」 共同開発案件の第1号はウィジェットのエンジン


URL
  ソフトバンクモバイル
  http://www.softbankmobile.co.jp/ja/
  WIRELESS JAPAN 2008
  http://www8.ric.co.jp/expo/wj/

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(大河原克行)
2008/07/23 20:28

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